視線
パァーーーーーン パ、パァーーーーーン
ファーーーーン
ガタ ガタッ ガ ガタッ ガタッ ガタッ
ドドン ドドンッ ドッ ドドドン ドドドン
キキキキーーーーーーーーキーーィーーー
(ここ、ここは ど、こ・・・・?)
気づくと 俺は真っ暗な視界の中にいた。
ドドドドドン ガタン ガガタンッ ガガッガガッ
「・・・う、うるさい・・・」
耳のそばで、腹に響くような重たい大音響が、地響きのように鳴り続ける。
「・・・なんだ、なんなんだ。・・・・何があった、どこだ、ここは・・・・」
視界は遮られ 何も見えない。
「さっきまで、どこにいたんだっけ・・・何をしていたんだっけ・・・・・」
頭、えっと、どこだっけ。
(さっきまで、待ってて、コーラを飲んで、立っていて・・・)
「そうだ、黒い影を見て・・・・笑ってて・・・・」
・・・・頭が痛い、割れるような痛み。
全身に広がリ始めた痛みに堪えつつ、自分に言い聞かせる。
思い出せ。思い出せ。思い出せ。
目を瞑っているよりも、深い、深い漆黒の闇の中
記憶を探る。
ワーワーワー
ドカッ ガシャガシャ ドンッドンッドンッ
アアアァァァァ ギャーギャーギャー
左耳だろう方向から、大量の音、音、音が降り注ぐ。
「なんの音だ? 声? 音? 何があった?!」
何が何だか 分からなくなった。思い出すどころじゃない。
ドシャッ ドシャ
ザクッ ザクザクッ ザザザッ
ビカッビカッ! ビカッビカッビカッ!!
「ま、眩しい! なんだ!? どうした!?」
真夏の昼間のような光輝く閃光は、目の前の全てを照ら出した。
思い出す必要もなく、今を、この場所を、ここがどこなのかを。
暗闇が晴れた? いや、実際には晴れてはいない。
(・・・・あぁ、そういうことか・・・・)
漆黒の視界は、どろっとした真っ赤に染まった。
砂利の上にいた。砂利の上だと。
目の前に、空から『見慣れた腕』が現れた。
(あ、あはは。アハハハハハハハ・・・・・)
俺の目から、涙がこぼれ落ちた。
目玉をギョロっと、空に、空と思う方に向ける。
動くかぎり、目に映る灰色の壁の上方向へ、ギョロっと。ギョロっと。
眩しい光を放つ、大きな、大きな真っ赤に染まった鉄の列車。
さらに横には、恐怖に青ざめた人だかりの顔、顔、顔。
反対に視線を戻す。
さっき見た、グニャリ グニャリ 見慣れた肢体、あぁ、『俺』だ。
その先に、覚えのある 何日も、何日も、立つたびに 不安を掻き立てていたアレ
じわじわと 身に染み込んでくる 視線を感じた。
「・・・ ヤット、ヤットよ? 邪魔が、邪魔が名クナッタ ・・・・ コッチにおいで ・・・」
三日月を横にしたような笑みを浮かべた黒い影が、ジッと俺を見下ろしていた。
(あぁ、ここ数日、電車が来るたびに感じてた視線は、お前か・・・)
『フ、フフ、フフぁファぁぁぁぁ!!!!、次は ア鉈ぁぁノ番ぁぁんん!!!アハァァァ!!!』
俺のバンね・・・。理解できない憎悪の灯火が
静かに そして ふっと 揺らめいた。