31. あり得ない
「フルネームどうも。会議ぶりね。ウッドマン」
女は、凄惨な場に似合わない笑みを浮かべていた。
あり得ない。
あり得ないあり得ないあり得ない!
「どうして生きている。確かに心臓を貫かれたはずだ。あの状態で生きているわけがない。ただの人間のくせに…………という顔をしているわね」
「っ、な、なんのことやら……」
「視線が泳いでいる。動悸が激しい。知性だけはあると思っていたのだけれど……あなたって嘘が下手なのね」
カァ……! と顔が赤くなるのを感じた。
全て言い当てられ、しかも生意気に指摘までされたのだ。
「戦争が始まってからなんか見られているなぁ……と思っていたけれど、やっぱり盗撮していたのね。風呂場での件といい、魔王よりも犯罪者の方がお似合いよね」
「ちょっとセリカ。本人が自覚していないことを言ってあげないの。否定はしないけれど、彼が可哀想になってしまうわ」
「そんなことを何一つ思っていないくせに、よく言うわね」
セリカは歩き出し、エリザベートに並ぶ。
最悪の二人が揃ってしまった。
これ以上ないほどに、私の本能が警鐘を鳴らしている。
「どうして、ここがわかった。私の作戦は完璧だったはずだ!」
もう『仲間』を演じている必要は無い。
私は屈辱に打ち震えながらも、叫ぶ。
──くすくす。
彼女達は薄く笑う。
こちらを馬鹿にするように、口元を小さく歪めていた。
「フォリアが教えてくれたのよ」
「……………………は?」
「聞こえなかった? フォリアがこの場所を教えてくれたのよ」
意味がわからなかった。
なぜなら、フォリアは私が──。
「フォリアを操ったと思った? 残念。彼女は貴方の傀儡になったふりをしていただけ。最初は不意を突かれてちょっと支配されちゃったけれど、少し抵抗してみたら案外簡単だったと言っていたわ」
「そんなはずはない! 私の傀儡術は完璧だ。これまでだって失敗したことは、はぇ?」
気付けば私は、地面に横たわっていた。
そして遅れて感じたのは──痛みだった。
ゴロンと、視界の端に何かが転がった。
そちらに視線を向けると────
「あぁああああああああああ! わた、わ、私の足が、あ、ぁぁ、あああああ!!」
「あらごめんなさい? 耳障りだったから、つい斬ってしまったわ」
見えなかった。
剣を握るのも、振るのも、何もかもが見えなかった。
なんだ、なんだなんでだどうしてだ!
これは人間なのか。
おかしい。
何かがおかしい。
こんなはずではない。
だって私の計画は完璧だったはずだ!
「確かに貴方の作戦は良く出来ていたわ。でも結果を急ぎ過ぎて出しゃばったのが敗因となったわね」
──知らないの?
と、奴は笑った。
「操者は、最後まで舞台に出るものではないのよ」
「っ、ふざけるな! 小娘如きが私に指図するな! 私は正しい。これは何かの間違いだ。作戦は完璧だった。なのにお前らが」
「おっと手が滑った」
──キンッ、という鋭い音。
瞬間、世界が回り始めた。
私は────、────。




