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23. 協力者二人(と沢山)




「…………」


 魔王会議から戻った後日。


 私は、その顔に困惑と呆れを隠すことなく表していた。

 それをさせている原因は、城の頭上を舞う数百の有翼族達だ。


「…………あの、フォリア?」


「何かしら」



 有翼族の長にして魔王の一人、フォリア。


 彼女は感情を見せない人形のように整った顔で「何事か文句あるかしら?」と言いたげに首を傾げた。相変わらず愛想の無いもう一人の友人に、私は朝一番から疲れた気分になってしまう。


「あの有翼族……どうしたのと質問しても良いかしら?」


「援軍よ」


「貴女、昨日の会議の話聞いていたわよね? 手助けは必要ないと、そう言った気がするのだけれど? いや、確かに言ったわよね?」


「聞いたけれど、頷いた覚えは無いわ」


「……貴女のそういうところ、流石よね」


「褒められている気がしないわね」


「褒めているつもりはないからね」



 フォリアという女は、上手く感情が読めない。

 そういう人とのやり取りが得意なリンシアでさえ「あいつ、やばい」と言わせるような女性だ。


 ついでに人の話も聞かないので、扱いづらい。


 でも、根は仲間思いの良い女性だ。

 こうして私に援軍を寄越してくれるのも、彼女なりに私を心配してくれた結果なのだろう。


「大丈夫よ。彼らは精鋭だから」


「そういう心配をしているのではなくてね?」


 フォリアは、少しムッとして溜め息を吐き出した。

 そうしたいのは私の方なのだけれど、ツッコミを入れた方がいいのかしら?


「話はちゃんと聞いていたわ。戦争の、セリカと転生者達の邪魔はしない。彼らは偵察として使ってくれればそれで良いわ」


「偵察? この数を?」


「……なに。少なかったかしら?」


「なんでそうなるの。逆よ、逆。偵察部隊が数百も居たら、役割が余るでしょうが」


「そこはセリカが上手く使ってくれると信じているわ」


「言うだけ簡単よね…………でも、本音を言えば助かったわ。私の配下は数が少ないから、人手が足りなかったの」



 城の守護と、その近くに位置する魔族の街の守護に加え、連絡係や物資の運搬係、敵側の偵察係など、私が持ち得る配下だけでは手が足りなかった。


 だから有翼族の援軍が有り難い。

 彼らが居れば運搬と偵察は十分だ。


 それでも余りはあるので、街の守護をより強固なものとできるだろう。



「セリカはもう少し他人を頼れば良いのよ」


「でも……」


「自分でやりたいという気持ちはわかるわ。私もそういう時はあったもの。でも、使えるものは使っておきなさい。直接戦争に関わらせないとしても、他に使い方があるでしょう」


「…………そう、ね。私ったら、少し固くなっていたみたい」



 指摘されたことで、肩にのしかかっていた圧が消えたような気がする。

 やはり、フォリアは私を心配してくれていた。



「たまに思うけれど、フォリアはお姉さんみたいよね」


「それは勘弁したいわ。エリザベートが母親とか、ストレスで翼のケアが大変そう」


「わかるわ。でも、言ってみただけよ」


 気が楽になったおかげで、冗談も言えるようになった。

 フォリアは微かに微笑み、私も笑い返す。


「それじゃ、貴女の兵、有り難く借りるわよ」


「ええ。上手く使ってちょうだい。私も頑張るわ」





 ──ん?





「フォリア? それはどういう意味かしら?」


 私も頑張る。

 ……それは何かの比喩だろうか?


「私も頑張ると言っているの。援軍にはもちろん私も入っているわ」


「待って。空はどうしたのよ。貴女が居なければ管理が回らないでしょう」


「任せてきたわ。数日くらい空けても、ちょっとした天変地異が起きるだけよ。魔族領にだけ影響させないように伝えてきたから、安心して」


「……まぁ、うん。それなら良いか」


 考えるのも面倒になってきたので、私は深く考えることをせずに、彼女を受け入れることにした。


 フォリアが突拍子もなく何かをするのは、今更なことだ。

 私も同じようなものだけれど、魔王というものは一度決めたことは何が何でも意見を変えようとしない。


 相手にするのは本当に厄介だけど、使いようによっては頼もしい味方となる。


「絶対に、戦いの邪魔だけはしないでよね」


「もちろんよ。セリカと違って、転生者とはあまり戦いたくないの」


「なら、安心ね……フォリア。改めて援軍感謝するわ」


 私達は手を取り合う。

 予想外の協力の申し出だったけれど、彼女の言った通り使えるものは遠慮なく使わせてもらおう。




「──ってことで、アタシも来たよ!」




「「呼んでない」」


「二人して酷くない!?」


 空から降ってきたのは、予想していたもう一人の友人魔王だった。


「そろそろ来そうだなとは思っていたけれど、まさか本当に来るとはね……」


「アタシの面白感知器がビビッ! と反応したの。これはもう行くしかないじゃん!」


 何だそのヘンテコな機械は……と思ったら、リンシアは自分の頭を指差していた。


 そこにピョコピョコと動いているのは、まさかのアホ毛。


 ……なるほど。

 つまりただの勘ということわけか。


「セリカ。ねぇセリカ……あれ」


 適当に内心納得していると、フォリアが私の腕を突いてきた。

 何だと思って彼女の指差す先を見つめると──そこには金色の頭が見えた。


「…………さぁ。協力者も得たところだし、作戦会議をしましょう。こっちよ」


「ちょっとセリカ!? お母さんも頼ってくれても構わないのよ!」


 やはり、エリザベートだった。

 私は立ち止まり、振り返り一言。



「待機」


「あぁんまりよぉおおおおおおおおおお!!!!」




 その後、「娘が反抗期なのぉおお!」と人騒がせな魔王が喚き散らしているらしく、当日の話をしている私の元に「助けてください」と従者が頭を下げに来たけれど、何も聞かなかったことにした私は書類に視線を戻し、三人だけの作戦会議を続けたのだった。




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