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恋色の蝶々 第1章  作者: 峰金良介
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1話Part6 加藤奈々との出会い②

黒板を確認すると、明らかに手書きの座席表が貼られていた。自分の席を改めて確認し、間違っていないことを確認すると、僕は周りの席の人が誰なのかを確認した。

「だ、誰なんだ……?」

あまりにもクラスに無関心すぎて、名前と顔がまったく一致しない。というかそんな奴いたんだって段階だった。

 ひとまず隣の人と協力して問題を解く時までに名前くらい覚えておこう、そう思って隣の席の人の名前を確認する。

加藤奈々(かとうなな)……?」

やっぱり分からない……名前と顔が一致しない。

実を言うと明日いきなりペアワーク(隣の人と協力して問題を解く時間のこと)があるので、思い出しとかないといけないのだが、僕の悪い癖で、明日でいいや、なんて問題を先延ばしにしてさっさと帰る準備を済ませて帰ろうとしていた。

「あの、春風希君だよね……?」

普段なら呼ばれることのない僕の名前を呼ぶ人がいる。ふりかえると、そこには僕と同じ身長くらいの女子がいた。

「人違いならごめんなさい……」

控えめという言葉がよく似合うその子は、恥ずかしそうに頬を染め、でもこちらをしっかりと見つめていた。

僕は積極的な子のほうが個人的にタイプなのだが、この子の今の表情は引き付けられる何かを持っていて、不覚にも一目惚れしてしまいそうになった。

「ごめんなさい、人違いだったみたいですね……」

固まったまま何も言わない僕を見て、その子は申し訳なさそうな顔をして立ち去ろうとする。

「あ、いや、あってるよ……」

僕が引き留めようとその子に声をかけると、その子は安心したようだった。

「よかった……あってたんだね」

安心しているその子をよそに、僕はいったいこの子が誰なのかの推測に追われていた。

僕同様この子もシューズやら置いておいてもいい荷物を席に置いていた。ちなみに、その子は僕の隣の席に荷物を置いていた。

「まさか、加藤さん……?」

「そうだけど……?」

なんてこった、まあそんな気はしていたが……

僕は心底自分の無関心さを恨んだ。いくらなんでも無関心すぎやしないか?そう思った。

「あれ?まだ私のことよく知らなかった感じかな?」

加藤さんはそう言ってちょっとからかうように笑った。

「ごめん、ほんと分からなかった……」

多分今僕の顔は真っ赤だと思う。入学してから結構経ったのに、未だにクラスメイトの顔さえよく覚えていない自分が恥ずかしくなった。

「まあいいよ、明日から隣の席なんだし、その間に覚えてくれたら嬉しいな」

そう言って加藤さんは優しく微笑んだ。

「うん分かった、明日からしばらくの間よろしくね、加藤さん」

これまで席替えなんてしても嬉しくないと思っていたが、今回は嬉しかった。どう見ても優しそうな加藤さんが隣でよかった、素直にそう思えた。

 改めて加藤さんの顔を見る、するとなぜだか少し不満そうな顔で、小声で何か言ったようだったが、いまいち聞き取れなかった。それに、すぐにいつも通りに戻ったので、その時は違和感を感じた程度だった。

 それが分かるのは少し後の話なので、当然春風希はまだ加藤さんのこの表情の理由を知らない。


[1話Part7に続く]

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