1話 Part3 放課後デート(?)①
-前Partの終わりの1時間前-
僕はまだ公園のベンチに座っていた。
「ねぇ、今日これから暇?」
「まあ、暇だけどさ」
そう言うと何故だか水瀬さんは嬉しそうな顔をする。
「じゃあさ、私と一緒にコンビニ行こうよ!」
「え?」
「コンビニ、行こうよ!」
「何のために行くんだよ?」
「このままここにいても暇でしょ?なんかお菓子とか買ってどこかで食べようよ〜」
「と言ってもさあ……」
コンビニに行くのは勝手だが、なぜ僕を連れて、その上遊びに行こうとするのか分からなかった。
それに僕は、一緒に歩いているのを目撃されて噂されるのも嫌だったのだ。
そう言いながら水瀬さんのほうを見た僕の反応から察したのか、水瀬さんは『なぜそんなことを気にするの?』とでも言いたげな顔をする。
「なんでそんな顔をするんだよ……」
「別に気にしなくてもいいのになあと思ってね」
「な、何をだよ……」
「もう、とぼけないでよ~!春風希くんが一番分かってるくせに~」
「だから何をだよ……」
「私は気にしないよ……?それを見て彼氏彼女だと思う人はそうだと思っとけばいいんじゃない?」
「け、けどなあ……」
「噂されたとしてもデメリットは意外と少ないと思うよ?」
「は……?」
この発言は正直納得がいかなかった。僕が思うに、噂された時のデメリットは大きすぎる。
まず僕はバカにされる、水瀬さんも例外ではないんじゃないだろうか?
もし水瀬さんが直接的な被害を受けなかったとしても、僕という媒介者を経て、間接的被害は受けるはずだ。
果たしてそれを水瀬さんは望むだろうか?僕は望まないと思う。だから、
「逆にメリットってあるのかよ……?」
水瀬さんから目をそらしながらこう言ってしまう。
「え……」
さすがに水瀬さんもこの質問に対する回答は用意できていなかったのか、しばらくの間黙り込んでいた。
しかし、それは決して回答を考えるための間ではなかった。
再び水瀬さんの顔を見ると、『そんなことも分からないの?』とでも言いたげな顔だった。
しばらく水瀬さんは茫然としていたが、落ち着きを取り戻すと、ひねり出すようにこう言った。
「分からないなら教えてあげる……」
「な、何を……?」
「私と一緒にいるメリットのことに決まっているでしょ……?」
そう言うと水瀬さんは、僕の肩をガシッとつかんだ。
「おい……何をする気なんだ……?」
水瀬さんは何も言わない。その代わりなのか座っている僕の背中をベンチの背もたれに押し付ける。
「何か言ってよ水瀬さん……」
それでも水瀬さんは何も言わずに俯いている。
「何か言ってくれないと僕分かんないんだけど……」
「言って分からないならその体に刻み込むしかないようね……」
「は……?」
そうして、突然の放課後デート(?)が始まるのであった……
[1話 Part4に続く]