表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋色の蝶々 第1章  作者: 峰金良介
2/60

1話 Part2 水瀬美波との出会い②

「だって私もC組だもん」

これを聞いたときは本当に耳を疑った。こんなに可愛い子、普通忘れるはずがないはずなのに、しかも同じクラスなのに僕は彼女のことを忘れてしまっていたのだ。

「まあでも覚えてなくてもしょうがないよね……クラスメイトなのに一回も話したことないもんね……」

「そ、そうだな……」

こう言いながら僕は自分のコミ障かげんに心底呆れた。

それにしても彼女は僕なんかのことを知っていたのだろうか……それだけは分からなかった。

「なんで水瀬さんは僕なんかのことを知ってたの……?」

水瀬さんは、この言葉に君何言ってるの?とでも言いたげな顔をする。

「いや、だから同じクラスじゃん?」

「まあ、そうなんだけどさ……」

さも当然かのような言い方をするな、コミ障なめんな……

なんてことを心の中で言いながらも、ただただ僕たちの前にはまたあの静寂があるだけだった。

別に何かあったわけでもないのに、気まずい感じがした。

「あ、あの……」

どちらが先だっただろうか……

僕らはほぼ同時にこの静寂を打ち破った。

「あれ?言うタイミングかぶっちゃったね?」

「そうだな……」

そういうと水瀬さんはクスクスと笑い始めた。

「何かシリアスな場面みたいになっちゃってたね」

「別に水瀬さんと何かあったわけじゃないのにな」

「まるで告白してるときみたいだったね~」

「何それ?僕には経験ないから分かんないんだけど」

「マジ~?」

「コミ障なめんなよ?」

「はいはいすみませんでした~」

「はいはいじゃないよほんとに~」

こう言いながら僕が自然に笑えていることに気が付いた。

もちろん水瀬さんもそれに気づかないはずもなく……

「なんだ、春風希くんも笑うんじゃん」

なんて結構失礼なことを言ってきたりなんかもした。

「当たり前だろ?僕だって笑うよ」

「そりゃそうだよね~」

「ただそうやって笑いあう友達がいないだけだ」

「あ……うん」

正直この一言は余計だったのかもしれない、水瀬さんがめちゃくちゃ困っている。

「なんかごめん……」

「いや、気にするな」

「ごめん……」

その一言を最後に言葉が途切れ、またあの静寂が訪れる。

たった数秒のはずなのに何分にも感じられた。

水瀬さんは少しの間俯いた。

「その……ということは今もまだ友達いないの……?」

何も言わずに僕は小さく一回だけ頷いた。

水瀬さんはまた少し俯いたが、何かを閃いたふうにこちらを見る。

「じゃあさ、私が友達になってあげるよ!」

「はい……?」

今日初対面の陰キャに対してそれが言えるのは結構すごいと思ったが、友達ってこんな感じでなるものだっけという問いが頭の中で反芻して、しばらく黙り込んでしまった。おまけに

「ダメ……かな……?」

そういう水瀬さんのねだるような上目遣いも見ることができなかった。

ん……?あれ?意外としっかりと見てないか?



 それから一時間もの時間が経って、やっと僕と水瀬さんは友達(?)となったわけだが……

「春風希くん~♡」

そういう水瀬さんは今僕の隣、それも手を伸ばさなくても触れられそうな位置にいる。

どうしてこうなった……

その理由を知るには少しばかり時間をさかのぼる必要がある。


あれは今から小一時間前の話だった……


[1話 Part3に続く]


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ