完全キャッシュレス計画
2018年、日本は先進国においてキャッシュレス化が遅れているという。
現金を持たないため、支払いがスムーズで、安全。
それに国が金の流れを把握できるため、脱税ができないという。
ただ、そんな社会が進んでいるというのだろうか。
逆に言えば、時間の余裕がなく、治安が悪く、
政府が国民を信用していないだけのような気がする。
ただ、キャッシュレス化は時代の流れのようだ。
「日本もキャッシュレス社会にしよう」
と、ほぼ同時に声を上げた政治家がいた。
有力議員3人。
彼らはそれぞれキャッシュレス化の政策を実行し始めた。
「日本をキャッシュレス化するには、補助金が必要だ」
Aはそう宣言すると、ニヤリとした。
「田舎の、小さなお店にも、平等に導入しなけばならない」
Aの狙いは、利権だった。
すでにICレコーダーのメーカーから、莫大な政治献金を受け取っていた。
Aは自分の政治基盤を固めるため、キャッシュレス化を提唱したのだった。
「日本の企業にチャンスを」
Bは日本の電子機器メーカーの体たらくを嘆いていた。
スマホはアップル、サムソンまた中国メーカーに占有され、
日本のメーカーは立ちうち出来なくなっていた。
また、パソコンはASUA(台湾)などの低価格戦略に押されていた。
「GAFAを締め出す」
Bは日本からGAFAを締め出すという。
もちろん、GAFAとはグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのことだ。
「国民全員にスマホを無償で提供する」
Bはキャッシュレス化にはこれしかないと、提言した。
ただし、タダなのは低速通信のスマホ。
決済さえできればいいからだ。
当然、動画は見れないし、ゲームもできない。
高速通信が必要な人は今まで通り、自分でスマホを購入する必要がある。
これにより、子供を持つ世帯は、いくらか家計が楽になるとBは言う。
それに、子供がスマホ依存になるのを防ぐのが狙いだ。
そして、日本だけの低速通信に対応できないGAFAは参入しない、
とBはふみ、日本企業にビジネスチャンスを与えるのだった。
だが、低速スマホは隠れ蓑、マイナンバーや保険証、
さらに、このスマホを使って選挙の投票ができるようにするのが、
最終目標だった。
しかし、これだけではない。
Cは、このシステムを海外に売り出すことも視野に入れていた。
「やつらの言うのは・・・」
Cは吹き溢すように笑う。
「俺が真のキャッシュレス化社会を実現させてやろう。
それには補助金もスマホも必要はない。
ただし、実現にはもう少し先になるがな」
Cが言うには、2035年ごろだと言う。
Cは青年実業家から政治家に転身した。
いわゆるIT社長だ。
分野はスーパーAI、超人工知能だった。
人件費が高い、管理職の業務をスーパーAIに担わせた。
スーパーAIは意外とスムーズに企業に導入された。
非組合員の管理職をクビにするのは容易なのだ。
Cは初めからそこを狙っていたのだった。
「あと、十年あれば、AIは完全体になる」
Cは言った。
Cが言うには、人間の知能をはるかに超えるという事だった。
「そうすれば、人間は何もしなくていい。
AIがオーガニックのエ、いや食事を与えてくれる。
そして、健康を保つように、サ、いや運動を・・・」
まるで今人間がペットにしていることを、
AIが人間に施してくれる。
「金というそのものがなくなるのだ。
究極な平等社会がやって来る」
Cは、争いのない平等社会を実現させるため、
スーパーAIの完全体化を続けていた。




