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-月曜日、鳥の王の誕生(1)-

相模原の山中に分校などない




月曜日、遂に鳥の王の言った一週間が過ぎた。

世界の輪は完成したのか?

ユウナをどうする気なのか?

タケシは登校してくるのか?


不安な面持ちでマコトはテストを受けに教室に入ろうとすると既に階段方面に人垣が出来ていた。

鞄を置くと全速力で走って階段へ向かう。


そこでは登校してきたユウナを、階段の上から傷テープだらけのタケシが突き落とそうとしているのだった! 既に幾重にも人垣が出来、やっとのことでマコトは頭を出し、惨状を確認すると絶叫した。


莫迦(ばか)! 考え直せタケシ、何が鳥の王だ、そりゃ誰かの扮装なんだ騙されんな! こんなところで人生に傷つけたいのか!?」


「シムルグの謂うことは絶対なのだ、このままユウナは階段から落ちて死ぬ」


「死なねえよ! 莫迦、こんな高さじゃ相当打ち所悪くならない限り大怪我するだけだ、その鳥の王に騙されてるのがまだわからないのか!? 早くユウナを離せ!」


 だが体格の良いタケシに悔しいことだが、僕は彼女の腕をがっつりと掴んだユウナを

解放してやることができない。

 揉めているせいで徐々に人が集まってきた。誰か、見ていないでタケシを止めろ、一人でもいい武井マコトだけではタケシからユウナを解放してやることができないのだ。


 そのとき(とき)の声を上げながら男性教諭が走ってきた。誰かが呼んだのだ、これで助かる。

 だがそれは逆効果だった。その姿に焦ったのかタケシはユウナの手を強引に引いた。

 今や自らが鳥の王となった、タケシとユウナは永劫を飛翔し、かの山へと向かわんとして遥か支那(しな)へと飛び立っていった。武井マコトは息を飲んだ。


 気が付くと二人は踊場に居り、ユウナの足からは痛々しくも白骨と鮮やかな血液がどくどくとにじみ出て染みを作り続けて行った。

 タケシはというと夏服なので徐々に打撲の跡が浮き出てきてはいたが、これといった怪我は外見からは窺い知ることは出来なかった。


 教諭は生徒達を自分のクラスに戻るようがなり立てると、携帯電話で急いで119番に通報し、次いで(タケシ)を完全に無力化すると、警察へも連絡を入れていた。教師は完全に野次馬を人払いしマコトを、最後まで階段の上に残っていた武井眞琴(マコト)をクラスへ戻るよう怒鳴りつけた。

 優奈(ユウナ)の足は遠目にも解放骨折してた、もうあの足ではまともに歩けまい。

 砂を噛むような気まずさの中、眞琴は優奈の事を考えていた。あの大馬鹿野郎の卜部(うらべ)の事は一遍も頭を過らなかった。


――ぞろぞろ戻っていく人垣の中に吉村顕彦(アキヒコ)がいたように思えたのだが、そんなはずはないと眞琴は思ったしどうにもその考えを払拭することは出来なかった。


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