-再びの日曜日、メフィストフェレスとモナド-
ここは……夢の中でいいのかな? 浮遊感がある。
おはようマコト。
メフィストフェレス、もう行かなきゃいけないんじゃないのかい?
君たちの最終局面を見届けてからだね。
最終局面……
何故夢の中で逢っていると思う?
さあ?
昨日のチキンレースで君は精根尽き果てたのさ、お疲れ様。
この空間には何が見える?
真っ暗な中に光が一つ。
あの光はモナドだ。
光の種子か……
そうそのモナド。
で、あれは何のモナドなのかな?
ズバリ、鳥の王だ。
なんだと!?
――だがライプニッツのいった通りモナドには窓がない。
つきつめれば、モナドというものは部分や構成要素を持たないのだから、「外から何かが中に入る」ことはありえず、因果関係や作用は「外的な対応する変化」であって、「内的な何かのやり取り」としては理解できない。
彼を識ることはできないのだ。
ぼくにもモナドはあるのかい?
勿論、武井マコトのモナドは存在する。
君の胸のところにきらきら光っているから。
薔薇ノ木ニ 薔薇ノ花サク。 ナニゴトノ不思議ナケレド。
薔薇ノ花 ナニゴトノ不思議ナケレド。 照リ極マレバ木ヨリコボルル。 光コボルル。
美しい詩だね。
君の国の詩人の作品だよ。
元来各々のモナドというのは光り輝いているものだ、それが鳥の王であっても。
君がDQNと莫迦にしてる手合いであっても。
生命はみな光り輝く。
どのモナドも、他の全てのモナドと互いに必ず異なっており、またモナドは変化する。このとき、或る状態から別の状態への変化の傾向性を欲求という
マコト君、再び訊こう。君は変われたかい?
照リ極マレバ木ヨリコボルル。 光コボルル。
そう変われた気がするよ、寛容ということを憶えた。
しかしいったいぼくは何者なのだろう?
それを見つけていくのが自己実現ということさ、人間の特権だね。
少し話し過ぎたかな? やあ夢の虎よまだここに居たのか。
あの時の虎だ! 立派なアムールトラだ。
今はこの虎に体を預けて眠ることとしよう。
おやすみ、今度こそ眠りの帳が目を覆うように。
武井メモ:一 薔薇ノ木ニ 薔薇ノ花サク。 ナニゴトノ不思議ナケレド。/二 薔薇ノ花 ナニゴトノ不思議ナケレド。 照リ極マレバ木ヨリコボルル。 光コボルル。 - 北原白秋『白金乃独楽』より




