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-再びの木曜日、マコトとアキヒコの「破壊の破壊」上映会、骰子の破片(4)-

「ユウナ!? どうした」


 だが返答した声の主はユウナではなかった。

 聞き取りにくいボイスチェンジャーから()れる声、鳥の王その人である。


「『破壊の破壊(タハフトウルタハフト)』鑑賞お疲れ様、武井君、そして初めまして、わたしが鳥の王」


 思わず電話口でマコトは身を固くした。


「君はわたしから神たるメフィストフェレスを奪い去った。罪深いものだな。おまけに時間遡行(そこう)までしてタケシの停学を取り消した」


「そこまで解ってるんなら自分が何をしたかも知ってるだろう? メフィストは己の意思でお前を見捨てたんだ、それより何故ユウナの電話からお前が電話をかけている!?」


「田中君は現在別のところにいるよ、勿論無事だ」


「何が言いたい!?」


「世界の始まりまで、あと4日」


「!? だからどういうことだ? なぜ世界を始める?」


「月曜日、田中ユウナの殺害によって輪は(つな)がる、君もその瞬間に立ち会えるのだよ、武井君」


「クッソ! ユウナをどうあっても殺す気か!」


「吾が忠実なる僕、卜部(うらべ)タケシによってな」


 ぷつりと、唐突に通話は切れた。


「鳥の王! くっそ!!!」

 

 マコトは絶叫したが自室に空しく声は響くばかりだった。


「メフィスト! ユウナは無事なのか!?」


「結果論からいえば無事だ、ピンピンしてるよ」


「おまえは鳥の王の正体について知ってると言っていたな?」


「勿論知ってるさ、ただそいつを知ってどうするねマコト君、鳥の王の家に無為(むい)に押しかけるのかい?」


「押しかけるとも」


 マコトは自信満々に言った。


「鳥の王の姿を模してないとき彼はまた鳥の王ではない、そう言ったではないか、暗に」


「むむむ……鳥の王の扮装(ふんそう)が鳥の王を王()らしめると、な」


「その通りだマコト君、彼が鳥の王でないときに押しかけてもただの高校生なのだ。さ、勉強机に座って君のやることはテスト勉強か絵を描くことだろう……落ち着け本分を思い出せ」


 そう言うとメフィストフェレスは巨躯(きょく)で以てマコトを無理やり椅子に座らせてしまった。

 そしてまたもや巨きな手でマコトの目を塞ぐとこう言うのだ。


「何が見える?」


「闇が」


「闇の中に銀色に鈍く輝く光がある、目を凝らせ」


「鳥の王だ!」


 するとマコトの視界はぐるぐる廻りはじめ、鳥の王を仔細(しさい)に視ることが叶うのであった。

 しばらくマコトはそうやって鳥の王を観察し続けていたが、やがて目を開くとコピー用紙を一枚取り物凄い勢いで一人の人物を描き始めた。

 それは学校の制服――夏服を着た人物で中背で痩せていた、そして特徴的な銀色に輝く歪な鳥のマスクを被っている。鳥の王その人だ。


「さすがはマコト君、今見たものを描いたか」


「何があろうとこいつだけは赦さない!」


 そして出来た鳥の王の立像を押しピンで、机の脇のコルクボードに貼った。


 しばらくメフィストは満足そうにしていたが急に焦ってマコトに話かてきた。


「鳥の王が次の作戦を練っている」


「どういう事だ?」


「タケシを()き付けたんだ」


「ユウナにDVしたあの事件が起こったということか?」


「いや、この世界の時間軸ではタケシは停学にはなっていない……わたしが変更したからな」


「じゃあなにが起こるというんだ?」


「タケシがもっとタチの悪い事件を起こそうとしている、君を巻き込んで」


 マコトはうんざりとした表情になった。


「ということはタケシから連絡がある?」


「これのことかな?」


 タケシからの通話が間髪(かんぱつ)をいれずに入ってきた。


「出るかね?」


「ああ」


 卜部タケシ と表示された通話にマコトは出た。


「もしもし? タケシか?」


 マコトがタケシか? と訊いたのは変幻自在の鳥の王がタケシの電話から、掛けているおそれがあったからだ。


「オレの電話にだれが他に出るっつうんだ武井よぉ……」


「何の用だ?」


「土曜にテメェに決闘を申し込む!」


「は? 決闘は法律で禁止されている事項だが?」


「タイマンじゃねえよ、それじゃあすぐ勝っちまう解るかお前もバイク持ってるんだろ? チキンレースだよ」


「はあ、チキンレースで決闘……卜部君漫画の読み過ぎじゃないか?」


 マコトは呆れて声も出なかった。

 そうしてメフィストフェレスの方を見たが彼は大真面目な顔で頷くだけだったので、仕方なく受けることにした。


「で、場所はどこで?」


「卜部山葵(わさび)園の裏手に低い崖と進入禁止の道がある、そこでやる言っとくが土曜日だ。逃げたら承知しねえからな!」


「わかった受けよう、どうせ鳥の王の命令でユウナの命が懸ってるとかそんなんだろう?」


「察しがいいじゃねえか、勿論この話は大人には秘密だからな、チクったら承知しねえぞ!」


 そう言い終わると通話は切れた。


「もう無茶苦茶だな」


「鳥の王が焚き付けてもタケシはこの程度ということか……」


 メフィストも呆れ顔で通話の切れたスマホを見遣った。

 再び山葵園に行くのか、今度は親抜きで。

 さてはて明日は金曜日……いったいどんな事件が起こるのか?

武井メモ

決闘罪:決闘は法律で罰せられる。決闘罪は全6条からなり、決闘を申し込んだ人、申し込まれた人、決闘立会人、証人、付添人、決闘場所提供者など決闘に関わった者に適用される。もっとも、構成要件及び法定刑は主体ごとに定める。


決闘を挑んだ者・応じた者(1条) - 6ヶ月以上2年以下の有期懲役

決闘を行った者(2条) - 2年以上5年以下の有期懲役

決闘立会人・決闘の立会いを約束した者(4条1項) - 1ヶ月以上1年以下の有期懲役

事情を知って決闘場所を貸与・提供した者(4条2項) - 1ヶ月以上1年以下の有期懲役

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