メリーさん知ってる?
「メリーさん知ってる?」
「知ってる。アイツは…」
「お前のことだから、また速さがどうこう言い出すんだろ?」
「まあ、ちょっと聞いてよ」
「何?」
「メリーさんって捨てられた人形だよね?」
「そうだね」
「最初はメリーさんが捨てられたゴミ捨て場から持ち主へ電話かかってくるんだよ」
「そうそう」
「まあ、非通知だから出ないよね」
「そこは出とこうよ、話進まないから」
「じゃあ渋々出ました、と」
「渋々は言わなくて良いよ」
「出てみると『私メリーさん、今ゴミ捨て場に居るの』っていう声が…」
「うん」
「そしたら私は『今電車だからかけ直す』って小声で答える、と」
「移動中かよ、そこは居とこうよ。自宅に居とこうよ」
「でも切ってもすぐかかってくるんだわこれが」
「まあ、本来なら電話のたびに距離が近くなってくるね」
「『私メリーさん、今4号車のドアの前に居るの』」
「電車に追いついちゃったよ。というか電話してる時は電車止まってるの?」
「『だから今電車だって言ってるだろ!次の駅で降りてかけ直すからさ!』」
「走行中だ!メリーさんは並走してる!電話しながら!」
「窓見たら、たまに目が合ったり」
「それはそれで怖いな」
「こっちは手を振ってみたり」
「怖がれよ」
「新しく買った人形の手で」
「鬼か!そりゃメリーさんも恨むわ!」
「まあ、向こうの顔の方が鬼っぽくなってるんですけどね!」
「上手いこと言ったつもりか?」
「しかも仙台から乗ったばっかりだから大宮まで止まんないのに」
「新幹線か!東北新幹線か!しかも特急!?」
「ということで、メリーさんは速い」
「どうしても着地点はそこになるのか…」