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クロエ先生との個人授業が始まる。この間、私がしれっと大精霊を召喚してしまいそうになった事が原因だった。
「さて、まずはあなたは大精霊を意識する事から始めましょうか」
クロエ先生の方も、特級魔術師相手の授業なので、手探りなようだった。
「自分の内側の中に目を向けて」
私は目を閉じて、自分の身体に集中する。大きな魔力の流れが、心臓へと流れ込んでいる。ドクドクと、私の心臓と一緒にそれは胎動していた。私は自分の胸を押さえた。
「わかったかしら」
頷く。
「じゃあ、次はその大精霊の力を少し借りてみましょうか」
「いきなりそんな事やるんですか!?」
「難しい事じゃないわ。魔力の出力先を変える感じよ」
私は目を閉じる。魔法を使う時は、私は身体の中にある魔力を操っていた。しかし、今回は心臓にいる精霊の魔力を探る。
「うぅ」
少し難しい。
「お願いしてみたらどうかしら」
「え?」
「大精霊も生きているから、無断で借りられるのは嫌なのよきっと」
言われてみればそうか。
「火の大精霊さん、どうか私に力をかしてください」
お願いすると、今まで頑なに閉じていた魔力の道が突然ぱかっと開く。私はすぐにその魔力を指先に集めて、火を灯した。
「できた!」
「これが精霊魔法の火なのね」
その炎は、私がいつも使う炎とは違っていた。うまく言えないのだが、高貴なオーラがあるのだ。
「よくできました」
クロエ先生が褒めてくれた。
「少し、休憩をはさみましょうか」
「はい」
頷いて一緒にお茶を飲む事にした。
紅茶を飲みながら、先生に尋ねる。
「クロエ先生は、昔から魔術が得意だったんですか?」
「そうね、元から得意だったわ。村では神童って呼ばれていたし、自分でもそうだと思っていた」
凄い、自身マンマンだ。
「あなた達と同じように私も学園に入って勉強したわ。ここでも私はトップだった。学年で、学校内で一番だった。だから私はココにいるの」
彼女はにっこり微笑んだ。
「すごいですね」
「まぁ、その高い鼻も大学に来てようやく折られちゃったんだけどね」
彼女はぺろっと舌を出した。その姿がチャーミングで、同性でもドキッとしてしまう。
「ここの大学の教授連中は凄いわよ。人間離れした人たちが沢山いるんだから」
彼女は一つため息をつく。
「もちろん、この状況に遅れを取るつもりは無いわ。でも、自分より優れた人間は沢山いるってこの場所は教えてくれた。その事に、私は感謝してるのよ」
女性の進出が遅いこの国で、彼女は自分の力でのし上がったのだ。そして今も、立ち続けている。
「クロエ先生はすごいですね……」
「あなたも凄いわよ。特級魔術師になっちゃったんだから」
「いや、私のはたまたまですから……」
「いいえ、運が良いのも才能の内なのよ」
そうなんだろうか。そうだと思っておこう。
召喚魔術の訓練に戻る。
「残念だけど、今現在のあなたの魔力量と、実力では大精霊を呼び出して制御するのは無理ね」
「そうですよね」
クロエ先生が、机から紙を取り出す。
「ですから特別課外授業を申しつけます。あなたは、火の神殿に行って魔力量の増加と制御方法を学んで来なさい」
「え、でも学校は!?」
「こんな時の為に、夏休みってものがあるでしょう?」
「私の夏休みが始まる前に消滅してしまった!!」
しかし、もしもの時の為に大精霊の操作が出来る事は大事だ。私は課外授業に渋々参加する事にした。
つづく




