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夕食後にオリバーがラウンジ前で私を手招きする姿を見つける。
「どうしたの?」
「例の情報集めて来たよ」
“特級認定魔法使い”のことだ。
「本当に!?」
まだ三日しか経っていないのに、仕事が早い。
「ローガンは?」
いつも二人一緒にいるイメージなのだが、今日は片割れの姿が見えない。
「ローガンなら、お風呂に行ってるよ。ちょっと、君と二人で話しがしたいんだ」
何か事情があるようだ。
「わかった、それじゃ二人で話しましょう」
ラウンジの端にあるソファに二人並んで腰を下ろす。手元には琥珀色の紅茶。
「僕の集めて来た情報なんだけど……」
オリバーが口を開き、小さな声で囁く。
「ローガンの言うように特級魔法使いは、大精霊と契約の際に寿命を捧げる事が必要だ。ただし、この儀式は必ず成功するとは限らない……」
「どういう事……?」
「適性の無い者が受ければ、死が待っているんだ……」
私は息を飲んだ。
「この情報は本当に、かなりの極秘情報だ。商人仲間のツテを辿って聞いたんだ……。彼の話しでは、建国以来ずっとこの国は認定魔法使いを選ぶ為に沢山の魔法使いの屍を築いて来たんだ……」
オリバーが私の手を強く握る。
「だからスカーレット、行っちゃダメだ。お願い、行かないでくれ」
彼は思い詰めた表情をしていた。
「オリバー……」
私は頷く。
「わかった。私、特級魔法使いになるのをやめるわ」
この情報を聞いて目指そうとは思えない。
「オリバーありがとう、大事な情報を集めて来てくれて」
私はオリバーを見て礼を言う。
「いや、その、僕にとっても大事な事だったから……友達を助ける為に力は惜しまないよ」
隣に座っていたオリバーが安心したように笑みを浮かべる。
「ところでオリバーって、リヴィアの事どう思っているのかな」
真剣な話から一変して私は、以前から気になっていた別の話題を振ってみた。せっかく珍しく二人でいるのだ、こういう内密な話しをしても良いだろう。
「うえっ!?」
オリバーが物凄くうろたえた。
「リ、リヴィアはその、貴族らしくて、とっても綺麗な人だと、思っているよ!!」
お、わりと素直に答えてくれた。
「好き?」
端的に聞くと彼の顔が下から上に一瞬で真っ赤になった。
「ス、スカーレット。と、突然なんでそんな事聞くんだよ」
だって気になっていたのだ。リヴィアとオリバーは楽しそうに話している姿をよく見る。
「デートしてみたら」
「うへぇ!?」
顔が真っ赤になったオリバーがかわいそうになって来た。ここらで止めておくか。
「ごめんごめん。でも、オリバーがもしもその気なら私は手伝うからね。好きな友人二人が恋人にるなんて、凄く幸せな事だから」
オリバーの顔の赤みが徐々に引いて行く。
「……今の言葉、信じてるからね」
お、やっぱり好きなんだ。
「うん、おっけー」
いつか彼が前に進む時に、私はできる限り力を貸そう。
無知で世間知らずな私が、危ないところに行かないように助言してくれた友人達の存在に私は感謝した。
次の日、早急に特級魔法使いについて断った。先生は『残念』と口にしながらも笑みを浮かべた。彼女も、やるべきではないと思っていたのかもしれない。そして、私とローガンとオリバーに認定魔法使いの上級試験の訓練をしてくれた。
「オリバー、筋が良いわ。そのまま、輪をくぐらせて」
部屋の中を葉っぱが一枚、オリバーの手に合わせて動いている。小さいものを最小の魔力で動かすのは、実は凄く労力がいる。上級認定試験では、こういう細かい魔力操作を見られるそうだ。
魔法術の講義が終わって、私達は寮に帰る。けれど、真っ直ぐ帰るわけもなく通りのお店を覗きながら帰るのだった。
「世界…珍獣…図鑑。面白そうだなコレ」
ホコリの被った本屋さんで、ローガンが本を手に取る。
「これ、クラビスの本だよ」
隣に並んで背表紙を覗き込むと確かにクラビスの名前が書かれていた。彼は沢山、本を書いているらしく、本屋に行くと、何冊も彼の著作の本を見つけた。
「先生達、元気かなぁ」
オリバーが懐かしそうに呟く。
スカーレットは大人になったら、どんな生き方をしてるんだろうか。前世の私は一六才で死んで大人にはなれなかった。だから、私は一六才になった時にスカーレットと一緒にその先の人生を生きるのだ。その先の未知が怖くもあり、楽しみでもあった。
クレープを食べながら私達は寮に帰った。
つづく




