表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/72

10

 二、三日は全く身体が動かせなかったのだが、次第に身体の痛みも引いて起き上がれるようになった。それまでユーリス先生にご飯を食べさせて貰っていた。身動き取れないので、トイレもお世話になった。子供の身体とはいえ、だいぶ恥ずかしかった……。

 自分でご飯が食べられるようになってからは、先生から借りた本を読んで過ごした。先生の家にある本はどれも面白くて、ページが進んだ。たまにクラビスがやって来て、野性味溢れる料理を作ってくれた。野兎の肉を使ったシチューと、山菜のサラダが美味しかった。

 今やっている研究の話や、以前訪れた国の話しを聞かせてくれて凄く楽しかった。

 そして、私が怪我した事は彼らの耳にも入った。

「スカーレット、本当に大丈夫かい」

「かわいそうに……痛かっただろう」

 ローガンとオリバーは私を見て悲しそうな顔をする。御見舞に来てくれる友達がいるなんて、幸せだ。

「大丈夫だよ二人とも。もう、痛みはそんなに無いの。しばらく安静にしてれば元どおりの生活が出来るって先生も言ってくれてる」

「そうか、それなら良かった」

「僕達は授業がある日は必ず来るからね。また話そう」

 彼らは名残惜しげに帰って行った。本当に二人とも良い友だちだと思う。


 私の足は骨折していた。しかし腕は無事だったので、勉強はできる。

「そうですそうです、そこの数字をこちらにもって来て……」

 私は暇があれば勉強して、わからない事はユーリス先生とクラビスに質問した。二人とも、上の学校に行っただけあって頭が良い。家の手伝いも全くしなくて良いので、私の勉強はさらに捗った。たまにローガンと、オリバーがやって来て勉強会を開く事もあった。三年生の二人は、今年上の学校を目指して試験を受けるつもりらしい。私が試験に受かれば、一緒に学校に通えるかもしれない。私は更にやる気を燃やすのだった。


 日が短くなって、少しずつ寒くなって来ていた。ユーリス先生は、編み物をして私にセーターやマフラーを編んでくれた。編み物は先生の趣味らしい。手作りのセーターは凄く暖かかった。そしてある日、クラビスが大きな袋を持って帰って来た。

「おかえりなさいクラビスさん。どうしたんですか、その袋は?」

 先生が首を傾げる。

「コレはね。スカーレットちゃんにお土産だよ」

 そう行って袋の紐を解く。中から飛び出して来たのは、赤い猫のフランだった。

「フラン!」

 フランが私のベッドにのって来て、頭を擦り寄せる。撫でると、ゴロゴロと喉を鳴らす。

「よく暴れませんでしたね」

「フランは頭の良い子だよ。話しかけて説得したら、自分から大人しく袋に入ってくれたんだ」

「フラン、おまえ頭良いなぁ」

 私はフランに顔を擦り付けた。擦り付け過ぎて肉球で押し返された。

「クラビスさんありがとうございます」

「いやいや、フランもそろそろ外は辛いかと思ってね」

 そう言えばフランは砂漠地方の猫だった。

「こちらがフランメキャットですか。私は初めて見ます。赤い毛並みが綺麗ですね」

 褒められたのが嬉しかったのか、フランがにゃんと返事をした。


 一月経って、ようやく私の足は治った。治ったのだが、今度はリハビリである。およそ一月ベッドの上で過ごしていたので、私の足はフラフラだった。よいしょ、よいしょと毎日歩いて筋肉を取り戻す。勉強をしていない時は先生の助手をやったり、家事を手伝ったりした。ユーリス先生は学校の無い時は、病院に下ろす薬を作っているらしい。工房には沢山の機材が置かれており、依頼された薬のレシピを見ながら先生は一つ一つ丁寧に正確に作っていた。私の世界で言うところの薬剤師のようなものだろう。

 たまに母親が尋ねて来て、手料理を置いて行ってくれた。先生に迷惑かけるんじゃないよ、と繰り返し言われた。


 入学試験は近くまで迫っていた。

「では、三人は今年の試験を受けるんですね」

「はい、絶対に受かります」

 ローガンは家庭教師がいるので、基本的に家で勉強をしている。貴族として、進学するのは当然の義務らしい。

「僕も、進学した方が何かと有利だって聞くから行きますよ」

 オリバーは、商学を習いに上に行くらしい。道がはっきりしている二人が羨ましい。

「私はまだ、どんな方面に進みたいのかわからないんですけど。上に進みたいと思っています」

「コノートの学校に行けば、視野が広まると思うよ。変な奴沢山いるからね」

 クラビスがパイを片手に話す。

「三人ともご存知だと思いますが、コノート国に入るには、魔法の初級認定書が必要です」

 コノート国は大きな国なので、凶悪な犯罪が起きる事を懸念して、国の中に入るには魔法が制御出来る事が最低条件だった。(国で生まれた子供は、十才頃までに試験を受けるのが義務になっている)

「認定試験は春にあります。入学試験の後に、追い込みをしますよ」

 ユーリス先生はちょっとだけ怖い笑みを浮かべた。入学試験に受かっても、認定試験に落ちたら笑えないのである。




つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ