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30代ニートだけど母親がピュレグミ買ってくれないからお菓子売り場で暴れた

作者: 文豪たかし

30歳。無職。

だいたい寝てる。あとはゲーム。

世間的には穀潰しってことになるのかな。

まぁニートでもなんでも好きに呼んでくれていい。

オレはオレの為の人生を歩んでいるのだ。

企業に雇われ、奴隷のように働き税金を収め、雀の涙ほどの収入を得る生活なんてごめんだ。

オレの収入源は風呂掃除や食器洗い(100円)だ。

と言っても、特に金が必要なこともないので滅多にやらないが。


※   ※   ※


その日は気まぐれで母親の買い物に着いていった。夕飯の買い物だ。

クソ田舎のクソデカイショッピングセンター。こいつのせいで駅前の商店街が潰れたらしいが、大した思い入れもなかったのでどうでもいい。

この街には子供のころからずっと住んでいるが、幼いころから見ていた景色が寂れていこうがなんとも思わん。若い奴は都会に出て行き、落ちこぼれの地元ラヴァー=いわゆるDQNみたいなのだけが残っていく。

母親の買い物が長くなりそうなのでオレはおもちゃ売り場をチェック。ゲームコーナー。こんな場末のショッピングセンターのラインナップにロクなもんはなかった。


※   ※   ※


「おい、まだかよ」

母親ままだ食品コーナーをチンタラ物色していた。

「肉食わせろよ。最近、魚多すぎなんだよ」

周りが奇異なものを見る目で見てくる。オレは睨み返す。

ようやく買い物が終わり、レジへ向かう途中、オレはお菓子コーナーに目をひかれた。

オレはサッとピュレグミを手に取り、母親の押していたカートのカゴに滑りこませた。

ピュレグミ、うめぇんだこれ。


※   ※  ※


「返してきなさい」

「あ、なんでだよ!!」

オレはキレていた。中学2年生の時、母親にジーパンを勝手に洗われた時以来、キレていた。

「お菓子は家にあるでしょ」

「あ?てめぇは菓子の違いもわからねえのかよ。家にあるのしょぼい徳用の菓子ばっかじゃねーか」

「いいから、返しなさい」

「あん?ああ、わかった。もう、わかったよ・・・オレ、ああ?」

オレは床に寝転び、全力で手足をばたつかせた。暴れた。暴れた。暴れた。

周りの子供たちが泣き出した。オレは構わず暴れた。

やがて母親が視界から消えた。なんだ、観念して買ってくれるのか?それなら最初から買えよ。

だが、母親が戻ってくることはなかった。オレは暴れ続けた。


※   ※   ※


オレはよ、ただ、ただ、純粋にお菓子が食いたかったんだ。

暴れるだろ?普通はよ。自分がほしいもの手に入れる為なら。何が何でも。

オレは警備室に居た。住所聞かれた。名前聞かれた。身分証?んなもん持ってねーよ。

電話番号を教えたら、警備員が家に電話した。オレを見捨てた母親が出たが、引き受け拒否したらしい。

「困ったねぇ・・・」

いい歳したオッサンの警備員二人が穀潰し一人を前にアタマを抱えているよ。

「いや、オレ自分で帰れるし」

「でもねぇ、ああいうことされて、即帰すわけにもいかんでしょ」

大袈裟に警備員が言う。

「どうします?警察・・・」

もう一人の警備員が口をはさんでくる。

「おいおい、待てよ。オレが何をしたって言うんだよ」


※   ※   ※


それからオレは警察で根掘り葉掘り聞かれて、警察官が母親に電話。母親が迎えに来るらしい。ふん、流石に相手が警察となったら来るのか。

警察署を出ると真っ暗。夜の11時を回っていた。

母親は何も言わず無言で歩いた。オレはその3メートルあとを歩いた。

コンビニの光。

「おい」

オレは母親の背中に言った。

「何」

母親が冷徹な声で言った。

「ピュレグミ買えよ。あとパイの実とシルベーヌも。お前がお菓子買ってくれないせいでオレは散々な思いをしたんだ今日」

「そう」

母親はオレを無視して歩きだした。

オレはとっさにコンビニに駆け込み、お菓子売り場で寝転び、暴れた。暴れまくった。

店員がやって来る。オレは構わず暴れ続けた。外を見ると母親が無言でオレのことを見ていた。

オレは母親がお菓子を買ってくれるまで暴れ続けると決めた。

「おい、コラ!てめえのせいだぞ!!全部買え!!ここのお菓子全部買って償え!!」

叫んだ。母親は何も言わず歩いて去った。

「うぅあああああ!!」

これが”30代ニートだけど母親がピュレグミ買ってくれないからお菓子売り場で暴れた”話の顛末だ。

その後のオレなどない。








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