いがいが
乾いたアスファルトに落ちる、緑色のいがいが。
もちろん、そこは車が通るよ。
そんな呟き一つで、ハンドルを曲げる。
幅20センチにぐしゃっと潰されるいがいが。
まずは、棘がひしゃげて。
外側の、白い部分がぱっくりと口を開けて。
みしっと音を立てて、殻にひびが入って。
ゆっくりと、そのひびが広がっていって。
やる気の無さそうな、中身が、ぐしゃっと飛び散って。
最後に、ぺったんんこになったのに。
少しだけ、やる気を出したみたいな風で、空気を吸い込んで。
おしまい。
いがいがしたって、ゴムの塊一つに、目に見える傷もつけられやしない。
時折、通り過ぎた運転手が、何かの気まぐれか、車を停めて。
ドアを開けて。
まだ残っているいがいがを、拾って帰る。
ギュッと拾い上げた時だけ、指先に刺さって。
手の平で転がしたら、意外と軟らかくて。
昨日拾ってきたいがいがは、玄関で茶色くなっている。
その分、僕の喉もいがいがする。
良いことばっかりなんて、無い。
栗ご飯が食べたいなぁ。
ありがとうございました。