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R100

作者: 雪猫
掲載日:2026/09/21


今年のそれぞれの誕生日で共に100歳を迎える夫婦


100歳でありながら心も体も健康だった


しかし、夫は誕生日前に病気となり、入院することになった


誕生日を数週間後に控えるも、


病気の進行の速さで弱気になった夫は、


唯一の心残りを語った


「R100を…R100を見たかった」



R100、それは伝説だった


世間の一般的な基準の性的なR15やR18と違い、


R100は国家によって定められた基準だった


「100歳以上の人間しか見ることが出来ない」


100歳未満の人間達が好奇心で盗み見た所、


皆、ありとあらゆる体液という体液を噴出させて、死んだ


確認のために見た政府の高官や専門家も、同じように死んだ


まさにそれは性のネクロノミコンだった


なぜ「100歳以上」なのか


創り上げた時、創作者も100歳を超えており、


遺言で「100歳未満のものは見てはいけない」と告げた


実際、毎年数人居る100歳以上で見た人々は平気である


だが、内容を聞いた100歳未満の者達が死んだ事例があるため、


内容を語ることさえも禁じられている



夫は、ゆっくりと話した。


「真面目に生きてきた。


恋人も結婚も一人きり。浮気もしたことはない。


そこに後悔はない。


だが、R100の存在を知った時の興奮が、ときめきが、忘れられない。


性の世界なんてあらゆる媒体で出尽くしていて、


あとは新しいふりをして繰り返すだけだろうと思っていた


R15やR18を横目で見た時の心には、もう戻れないと思っていた


それなのに


100歳以上しか見ることの出来ない世界がまだあるだと…?


そこでは何がどうしてどうなっているんだ?


つながってるのか離れているのか止まってるのか動いてるのか回ってるのか


マニアックなのか新しいオーソドックスなのか


新しい幻想の世界なのか、


それとも、それこそが今まで隠されていた真実の世界なのか


あと少し生きれたら…


見ることが出来ずに死ぬなんて耐えられん…」


夫は、家族に励まされ、医者も奇跡と讃える程の快復を見せ、


あと数分で100歳という時を迎えた


「ありがたい…。神様仏様、ありがとう…」



事前の申請が通り、


R100は厳重な警備の中、重々しく運ばれてきた。


家族も締め出され、


金紙に彩られた暗褐色の金庫の、何重にも掛けられた鍵が


一つ一つ解かれていった。


警備の者達は後ろを向き、プロの、目が見えぬサポートの者が夫を支えた


夫はサポートに助けられ、R100を開いた




2日後、満足のためか夫の容態は悪化し、最期の時が近づいた


家族や友人に感謝を告げた


100歳未満の友人達は、堪らず、R100の感想を彼に尋ねた


長い沈黙の後、遠い目をして、夫は呟いた



「人間って、凄っ…」



それが夫の最後の言葉だった


満足そうな穏やかな死に顔だった


















ちなみに、


最後の言葉を少し離れて聞いていた


夫を愛し尊敬している妻は


普段にっこりと微笑んでいる目をうっすら開き


心底馬鹿にした目を夫に向けて


「男って…」と呟いた
























妻はその後、長く生き


R150を見て、大往生でこの世を去った






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