ちょっとトイレ行って来る
家の一族は正月になると本家に集まり、飲めや歌えやでドンチャン騒ぎを行う。
昔、少子化が社会問題として認識し始められるより可也前だと、どの親族の家も大家族で本家に集まる人の数は50人を越える。
だからその人数に合わせてトイレの数もそれなりに多かった。
でも少子化が進み本家に集まる人の数が減るに合わせ、今の本家の惣領が仕事の関係で引っ越した先に建てた家でのトイレの数は、一般家庭と同じになる。
分家のオッチャンが普段だとおいそれと飲めない高級ウイスキーを、それこそ水を飲むようにジョッキでガブ飲みしていた。
オッチャンはジョッキをテーブルの上にドンと置き、「ちょっとトイレ行って来る」と言いながらフラフラとトイレの方へ歩み去る。
暫くして外から「ギャアァァァー!」悲鳴が響いて来た。
ドンチャン騒ぎに興じていた親族一同は、その悲鳴を聞き窓の外に目を向ける。
窓から見えたのは、放物線を描いたまま凍りついたお小水と、股間を押さえて悲鳴を上げているオッチャンの姿だった。
その姿を見ながら本家の総領が呟く。
「だから最初に注意したんだ、極寒の地の此処で冬に立ちションをしたら股間の物が凍るから、絶対に外でションベンするなと」




