第5章:空白の試練
空白地帯の霧は、まるで世界の終わりを飲み込むように漂う。白黒のグリッチが地面を脈打ち、廃サーバーの残骸が墓標のようだ。ネオ足利のネオンは遠く、コーデックス・システムのバグがここでは剥き出しだ。私は廃サーバーの陰に倒れ、ニューラルジャックが熱を持つ。リュウの裏切りが脳裏で燃える。「コードは俺のものだ」あの笑みが、教団のミカと同じ毒だ。
脳内ストレージが半壊、ログは辛うじて残る。「次元交流許可」「神話統合」「観客席より:裏切りは予定調和」。アマテラス=ロキの署名が嘲る。神々は私を駒と呼ぶ。くそくらえだ。誰も信じない。ミカも、リュウも、神々も。だが、ログは私を呼ぶ。システムの深層、真相がそこにある。
霧の中、足音が響く。私はナイフを握るが、力が入らない。影が近づく。少女だ。白髪、青い瞳、ボロ布のローブ。15歳くらい、グリッチタトゥーが腕に薄く刻まれる。「動くな」私は言うが、声が掠れる。彼女は手を挙げる。「敵じゃない。ソラだ。ここで死ぬ気?」彼女の声は静かだが、目が鋭い。
ソラは私を廃墟のシェルターに連れる。崩れたサーバーの隙間、信者コミュニティが寄生する。老人たちはバグを「神罰」と呪い、子供たちはグリッチの光に祈る。ソラは水と干パンを渡す。「ハッカーだろ? 教団の追従を逃れた。珍しい」彼女は私のジャックを一瞥。「私は転生者。システムの試練を知ってる」
ソラの記憶は断片的だ。転生ループの副作用。彼女は空白地帯で生まれ、システムのバグが囁いた。「フラクタル鍵の守護者」。彼女の脳内にコードが宿る。神話統合の鍵だ。だが、バグの反動で体が弱る。「神々の試練は次元交流の許可」と彼女は言う。「あなたは駒だ。でも、意志で変えられる」
「試練?」私は笑う。「神々の遊びだろ。システムのバグ、偽GMの抗争、全部茶番だ」ソラの瞳が揺れない。「なら、なぜログを追う? 真相が欲しいからだろ?」私は黙る。彼女の言葉が刺さる。ミカの洗脳、リュウの裏切り、誰も信じない自分。それでも、ログは私を引く。
ソラが端末を渡す。廃サーバーのログだ。「次元交流の条件:全神話の安定化」。アマテラス、オーディン、ロキのコードを統合せよ。意味不明だが、教団やロキのログと同じパターン。私はジャックを差し込む。データストリームが冷たい。ログの奥、フラクタルの影。「観客席より:ハッカーに仲間? 面白い展開だ」。神々の嘲笑が響く。
突然、地面が揺れる。グリッチ霧が濃くなり、廃サーバーが唸る。ソラが叫ぶ。「バグビースト!」赤黒い影が霧を裂く。ヤマタノオロチとフェンリルが融合した怪物、デジタル鱗と牙がフラクタルで脈打つ。私はジャックを握り、ホロキーボードでハック。ストリームに飛び込み、ビーストのコードを切り裂く。だが、反動で脳が焼ける。
ソラが私の腕を掴む。「一緒に!」彼女の脳内コードがストリームに流れる。フラクタル鍵の断片がビーストを縛る。私はカウンターコードを叩き、ビーストをループに閉じ込める。霧が薄れ、怪物が消える。ソラが倒れる。「バグの反動…」彼女の声が弱い。私は彼女を支える。初めて、誰かを信じたいと思った。
フラクタル神殿、観客席。神々の影が揺れる。アマテラス=ロキ=ゼウスがホロスクリーンに空白地帯を映す。凪とソラの共闘。「ハッカーに仲間か」とロキが笑う。「ソラは改革派の駒だ。試練が熱くなる」とアマテラス。「遊び人派が妨害する?」ゼウスが問う。「ビーストをもう一匹」とロキ。神殿の光がフラクタルに脈打ち、観客席は拍手する。