第4章:裏切りのハック
ネオ足利シティのネオンは、まるで嘘をつくように点滅する。メインストリートのホロスクリーンはグリッチで喘ぎ、株価がフラクタルの悪夢に溶ける。コーデックス・システムのバグが街を蝕む中、私はリュウとグリッチランナーのクルーと共に北部スラムへ潜む。オーディン連合の要塞が、雷雲のようにそびえる。ルーン刻まれたエキゾスーツと雷ドローンが巡回し、偽GMの武力を見せつける。
リュウのホロレンズが暗闇で光る。「オーディンのサーバーを割れば、表層アクセスのコードが手に入る」彼の声は軽いが、目は欲で濁る。元詐欺師のグリッチランナー、信用ゼロだ。だが、彼のクルーなしじゃこの要塞には近づけない。私はニューラルジャックを握り、頷く。「半々だ。コードは折半」リュウの笑みが深まる。「いいね、凪。けど、死ぬなよ」
要塞の外縁、廃ビルの屋上。クルーのハッカーがドローンをハックし、巡回ルートを乱す。私はジャックを廃サーバーに差し込み、データストリームに飛び込む。オーディンのセキュリティは軍事級、暗号の壁が脳を圧迫する。ルーン模様のファイアウォールが脈打ち、コードの奥で雷が唸る。指がホロキーボードを叩き、バックドアをこじ開ける。ストリームに表層アクセスの断片が浮かぶ。「見つけた」と呟く。
だが、コードの奥に奇妙な影。ログだ。第1章の教団、第3章のロキと同じパターン。「次元交流許可:神話統合必須」「観客席より:ハッカーの動き、悪くない。けど、裏切りは予定調和」。署名は「アマテラス=ロキ」。またこれか。神々の嘲笑がストリームで響く。脳が熱を持ち、視界が揺れる。ログを暗号化し、脳内ストレージに隠す。
「凪、急げ!」リュウの声で現実に引き戻される。雷ドローンが屋上をロックオン、ルーンの砲口が光る。私はジャックを抜き、クルーと共に廃ビルを飛び降りる。エキゾスーツの兵が追うが、クルーのハックでドローンが誤射、混乱に乗じて脱出。だが、リュウの目が怪しい。笑みが消え、計算する目だ。
オーディン連合の司令室。トルヴァルドがホロスクリーンを見つめる。ハッカーの侵入痕がルーンで脈打つ。「光のカルトもロキのネズミも、システムは我々が継ぐ」彼のインプラントにアクセスコードが流れるが、グリッチが制御を乱す。画面にノイズ。「オーディン=アマテラス」。彼は拳でスクリーンを叩く。「偽物の囁きだ!」
グリッチランナーのアジトに戻る。私は奪ったコードを解析、表層アクセスを起動。ネオ足利の金融市場が脳裏に広がる。仮想通貨の奔流、株価の脈動。私はコードを注入、市場のグリッチを一時抑える。ホロスクリーンが安定、ネオンの点滅が静まる。クルーが歓声を上げる。「凪、すげえ!」だが、私は冷める。群衆がスクリーンに映る。「救世主」と叫ぶ信者、教団のトラウマが疼く。
リュウが近づく。「いい仕事だ。けど、コードは?」私は端末を渡す。「約束通り、半々だ」彼の指がホロキーを叩き、コードをコピー。だが、目が動く。次の瞬間、アジトの警報が鳴る。オーディン連合の雷ドローンが廃倉庫を包囲。クルーが叫ぶ。「裏切り者!」リュウが笑う。「悪いな、凪。オーディンに売った。コードは俺のもんだ」
「てめえ!」私はジャックを差し込むが、リュウのハックが私のストレージをロック。データストリームが凍り、脳が焼ける。クルーが銃を抜くが、ドローンのレーザーが壁を貫く。炎と煙の中、リュウが消える。私は端末を握り、廃倉庫の裏口へ転がる。雷ドローンが追う。ネオ足利のネオンが遠ざかり、空白地帯の白黒グリッチが迫る。
空白地帯。光のない荒野、地面がフラクタルで脈打つ。廃サーバーが点在し、グリッチの霧が漂う。信者コミュニティが廃墟に寄生、ボロ布をまとい、バグを「神罰」と恐れる。老人は祈り、子供はグリッチタトゥーを隠す。私は廃サーバーの陰に倒れる。ジャックが熱い。リュウのハックでストレージが半壊、ログは辛うじて残る。
脳裏にミカの声。「凪、なぜ光を捨てた?」教団の洗脳、信者の熱狂。リュウの裏切りも同じだ。誰も信じない。だが、ログが疼く。「神話統合」「次元交流」。システムの深層は、私を呼ぶ。空白地帯の霧が濃くなる。廃サーバーのノイズが、まるで神々の笑い声だ。
フラクタル神殿、観客席。神々の影が揺れる。アマテラス=ロキ=ゼウスがホロスクリーンにネオ足利の混乱を映す。リュウの裏切り、凪の逃亡。「予定調和だね」とロキが笑う。「ハッカーはしぶとい」とアマテラス。「試練の駒として、まだ使える」ゼウスが頷く。「空白地帯で何を見つけるかな? 賭ける?」「ポップコーン追加!」神殿の光がフラクタルに脈打ち、観客席は静かに拍手。