IN BLUE
「あお」の部屋に君は棲む
天井は白に近い淡い「あお」
レースのカーテンは透ける「あお」
壁紙は「あお」のグランデーション
絨毯は濃く深い「あお」
すべてが「あお」のバリエーション
「海の底にいるみたいでしょ?」
部屋の真ん中で僕を振り返り
小首をかしげて微笑む君
君自身の「あお」は
「青」ほど明るくなく
「蒼」ほど寂しくなく
「碧」ほどきらめいていない
けれどもすべてを統べる「海のあお」
「あお」に染まり
「あお」に溶け込む君
部屋の真ん中で膝を抱えて座り
ドアの外に立つ僕を見上げる
「わたし魚になるの」
うっとりと夢見るような表情を
ゆっくりと膝に伏せていく
そう
君は広い海の中自由に泳ぐ魚
「あお」に染まり
「あお」に溶け込み泳ぐ魚
だから君の隣に座り
僕も魚になろうと思った
「あなたは魚じゃないわ」
顔を上げて君は言う
「あなたは木
大地にしっかりと根を張り
大きく枝を伸ばした立ち木
そしてあなたのあおは空のあお」
僕は木「空のあお」に包まれた
でも決してそれに溶け込まない
空へと伸びる木
せめて鳥だったなら
君を追っても行けたろうに
海と陸
魚と木
いつもそばにはいられない
それでも時に泳ぎ疲れて
君が人間に戻っている間は
僕のもとへ休みにおいで
「海のあお」でも
「空のあお」でもない
僕自身の「あお」で抱いてあげよう