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033_まる助、再びウォーダに会う>>

 朝食を終えたまる助は、湯気の立つカップを手に取りながら、静かに思考を巡らせた。


(下手な連中に食われる前に、対策する――)


 カインの警告は的外れではない。注目されると、利用しようとする者、排除しようとする者は必ず現れる。


 まる助はカップを置き、立ち上がった。オルデス商会へ行き、再びウォーダに会う。


「カインさん、オルデス商会へはどう行けばいいですか?」


 支度を整えながら聞くと、カインは迷いなく答えた。


「正面の大通りを1200メートル直進。広場の手前で左に折れろ。そこから2100メートル進むと看板が並んだ通りに出る。そこで右に曲がって、850メートル歩けば正面に見えてくる。道は広いが、人通りが多い。周囲にも気を配れ」


(さすがベテラン冒険者、的確すぎる……)



 カインの家を出ると、冷たい朝の空気が頬をなでた。


 大通りに出て進むと、華やかな看板が並び、商人や職人たちが行き交っている。焼きたてのパンや香辛料の香りが漂い、街の喧騒が肌に伝わる。


 次第に石造りの立派な建物が増え、行き交う人々の身なりも洗練されていく。やがて、ひときわ堂々とした建物が現れた。オルデス商会――まる助の目的地だ。


(やっぱり大きい……)


 目前にそびえる建物は堂々としており、出入りする人々は、上質な服を纏っている。まる助は自分の質素な身なりが浮いているのを感じた。


 中へ入ると、天井の高いホールが広がり、大理石の床に足音が響く。まる助は受付へ急いだ。


「すみません。急ぎの用件で、ウォーダに会いたいのですが」


  受付の女性は書類をめくりながら、まる助を上から下まで一瞥した。質素な服装に、怪訝そうな表情を浮かべる。


「当商会の会長、ウォーダですか? お会いするのは難しいですが……」


「大事な話です。まる助が来たと伝えれば、優先していただけると思います」


「……少々お待ちください」


 女性は怪訝な様子で視線を向けた。怪しい男が会長を名指ししてきたと思ったのだろう。しかし、彼女はふと何かを思い出したように資料を確認し、目を見開いた。


「大変失礼いたしました。『まる助様が来られた際は最優先で対応するように』との指示を受けております。念のため、IDの下2桁だけ確認させていただけますか?」


「わかりました」


 まる助はタブレットは出さず、記憶を呼び起こし、IDの下2桁を口頭で伝えた。受付の女性は慎重に聞き取り、手元の書類と照らし合わせると、頷いた。


「確認が取れました。至急、調整いたしますので、少々お待ちください」


 受付の口調が一変し、まる助は拍子抜けしながらも、「お願いします」と頭を下げた。ほどなくしてスタッフが現れ、「こちらへどうぞ」とまる助を奥の部屋へ案内する。


 通されたのは、落ち着いた雰囲気の応接室。シンプルながらも上質な調度品が並び、開けられた窓からは商会の中庭が見える。椅子に腰を下ろし、しばらく待っていると、重厚な扉が静かに開いた。


 入ってきたのはウォーダ。背筋を伸ばし、まる助をまっすぐ見つめている。


「おはよう。昨日は疲れた様子だったが、もう大丈夫か?」


「ああ。一晩寝たら、完全に元気になった」


「よかった。それで、“急ぎ”というのは?」


 まる助は軽く息を整え、昨日の会話を思い出しながら切り出す。


「昨日ちらっと話に出た“パラメータの調整”をしたくなってさ」


「パラメータの調整か……」


 ウォーダは少し目を細めた。

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