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歩き出して、すぐに確信した。
ここはオダリオンだ。間違いない。
なにしろ、店の看板にハッキリ書いてある。
「聖女様もびっくり★オダリオン損保の安心保障!」
オダリオン。
織田が開発中の仮想世界で、経済シミュレーションの舞台。
こんなヘンテコな名前、織田のアレ以外にあるわけがない!
「ゲームの物理エンジンを流用する」
――たしか織田はそう言っていた。だがむしろ、ゲームのファンタジー世界に、資本主義の要素を後付けでくっつけたように見える。道行く人々、石造りの建物――どこを見ても、ゲーム由来の要素が色濃く残っている。
開発途中なのか、ファンタジーと資本主義経済がそのまま融合し、調整が追いついていないようだ。街角に浮かぶ株価ボード、革鎧の獣人が「出来高が鈍ってるな」と呟く光景……。
「……織田のやつ、流用しすぎだろ」
ため息が漏れる。
とはいえ、ここが開発中の仮想世界“オダリオン”であることは、もはや疑いようがなかった。
どうしてこんな状況に?
疑問は山積みだが、焦ったところで答えは見えてこない。
むしろ、貴重な体験なのだから、戸惑ってるだけではもったいない。
(少しずつ、この世界を調べていこう)
ここは、奇妙な仮想世界――オダリオン。
俺の新しい現実が、ここから始まる。