028_ちょっと待て、展開が早すぎる>>
無理。もう限界。展開が早すぎる。頭が爆発しそうだ。
商会との交渉、織田……いや、ウォーダ登場、恒星間移動、時間加速、会長、12.8兆、管理者メニュー、感恩帰恩の謎、シルバー、欠落した記憶、世界が変わる――あり得ないほど濃密すぎる。
想定外に次ぐ想定外。どんなに膨大な情報を事前学習したAIだって、ここまで一挙に押し寄せられると対処できない。
(とりあえず、目先はどう動く……?)
思考の奔流に呑まれかけながら、脳内で必死にブレーキをかける。全部を一度に考えようとしてもパンクするだけだ。
まずは、今日寝るまでに何をするか――思考をそれだけに絞ろう。
最初は織田……今、目の前のウォーダとの交渉。会長就任まで、最低1ヶ月は猶予が欲しい。この1ヶ月でBPOを準備し、商会内部の情報も把握する。そうじゃないと、いきなり大商会の長なんて引き受けられるはずがない。
次はベルザ、エリナ、モラン課長が待つ部屋へ戻る。でも、何て話そう?
「実は僕、筆頭株主になっちゃいました」なんて口が裂けても言えない。
だから「全面的に協力が得られることになった」とだけ報告しておこう。これでも充分、みんなを驚かせるだろう。
それから、みんなと別れたら一人で食堂へ向かう。ゆっくり飯を食べよう。今にもぶっ倒れそうなくらい空腹だ。食べたら寝よう。だけど、不安で寝られる気がしない……
(……そうだ。走ろう)
平沢もそうだった。頭を空っぽにするには、体がクタクタになるまで走るのが効く。汗をかいて、息が苦しくなるくらい追い込めば、余計なことを考える余裕がなくなる。酒でごまかす手もあるが、当面は断酒しよう。理性を失って変なことを口走るわけにもいかない。
部屋に帰ったら、眠るまで目を閉じ続けよう。強制的に何も考えない、何もしない。どうせ今夜は混乱の渦でろくに眠れないだろうけど、それでも横になって目を閉じるだけで違う。
(明日の朝までは、何も考えない)
深呼吸をする。少し落ち着いてきた。先のことは分からないけど、とりあえず――今日寝るまでに、自分ができることだけをやっていこう。混乱や不安はあっても、一歩ずつ動くしかないんだ――
「……おい、まる助。聞いてるのか?」
ウォーダの声で、しばしの逃避から現実に復帰した。