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9話 初めてのモンスター戦


仕方ないので、まずはデカくて赤いクマさんを鑑定してみる。


『レッドグリズリー』Lv16

HP︰346/346  MP︰24/24

攻撃力︰58  防御力30

魔力︰12 魔法抵抗12

魔力操作︰5 敏捷性47

運︰30


所持スキル

爪撃Lv3・体当たりLv3・索敵Lv2・嗅覚鋭敏Lv3・暗視Lv1



一方、俺のステータス


『リンドウヨウスケ』 Lv12

年齢︰19歳

常態︰普通

職業︰星の神獣士(候補)

HP︰265/265 MP︰216/197

攻撃力︰65  防御力︰68 

魔力︰60  魔法抵抗︰71

魔力操作︰58  敏捷性︰61

運︰20


所持スキル

星の鼓動・星の波動・星の加護(小)

鑑定Lv6


所持魔法

炎元素︰Lv1ファイヤーボール

雷魔法︰Lv1サンダースピア

星魔法︰Lv1オーラバースト・Lv2・コンセントレイト・Lv4スターブレイド


装備

天覆丸國続(てんふくまるくにつぐ)(龍吼)

星櫃の服 一式


称号︰星の力を持つもの(小) ・星の神獣士候補・転生者

契約対象︰星竜エストレガ(器契約)



「確かにステータスではHP以外は勝ってるみたいだけど……Lv高くない?」


20mほど先にいるクマがこっちに気付いてしまった。

明らかにこちらを警戒している。


と思いきや、早くもこちらを敵と判断したのか、ゆらりとした挙動から一転、一気にギア全開で走ってきた!??


うわうわ!!判断が速い!!

警戒してから3秒!?


エストもいるのによくこっちに来るなコイツ!!とか思って後ろを見たら、いつの間にかエスト達は後ろに居なかった。俺だけ残して空に飛んでやがる。


「ち、ちくしょー!ええぃ、やってやるさ!やればいんだろ!!」


半ばヤケクソで覚悟を決めた俺は、走ってくるレッドグリズリーに向かってサンダースピアを放つ。ぶっとい雷をイメージしたけど細い!

さすがにまだそこまでの魔力操作は無理か。


しかし、バリバリと命中するサンダースピア。

どうだ!?やったか!?


「ブ!ブォォォォ!」


ええぇぇ!?細かったとはいえ、全然効かないんだ!?

一瞬シビれたようには見えたが、構わずこちらに走ってくる。既に彼我の距離はおよそ3m。


走りながら爪を振りかざすレッドグリズリー。

怖っ!!!食らったらちぬ!!


エストとの、身体能力の底上げ練習を思い出して横に避ける!避けた!


当たらなければどうという事はない。

つまり当たればどうという事になるかもしれない。


渾身の突進&爪攻撃を避けられ、前につんのめるレッドグリズリー。俺はその背中に向けて今度はファイヤーボールを放った。


大きさは1mも無いが、小さくメラっと音を立てて飛んだ火球がクマの背中にブチ当たる。


これも全然効かないか!

名前からして炎元素への耐性があるのか!?


「ブォォォォ!」

さらに怒っているのか、予想より素早い動きで反転し、後ろ足で立って爪を振ってくる。


俺はしゃがんで回避してから、距離を取ろうとした。

しかしレッドグリズリーは、そのまま左右の爪を連続で振ってくる。


「うわ!!ちょ、速いな!!」

「ブォォォォ!!ブォォォォオオオ!!」


改めて距離が近づくと、より大きく見えるレッドグリズリーの巨体。さすがの迫力に一瞬怯む。長く鋭い爪に、思わず視線がいく。


「様子見? なんですかソレ美味しいんですか?」ってくらいの全力で短期決戦する気マンマンの敵。


連続で飛んで跳ねて転がって、なんとか避ける俺。

被弾はしてないけどやや押され気味なのが分かる。


「くそ!」

余裕が無くなってきている。


一度体勢を立て直すために、より脚に力を込めて思いっきり斜め前に飛んだ。レッドグリズリーの脇を通り抜けて、なんとか爪の射程距離から離れる。


すかさず俺は魔法を放つ。

雷も水も効かないなら今度は水だ!


水元素よし!イメージよし!魔力よし!


「アクアボール!!」


魔力で作られた水の塊を三つ飛ばす。

ファイヤーボールより小さいが弾速が早く、しかも連続で発射できるのが強みのようだ。


ひとつは外れたが、ドバシャ!ドバシャ!と二つの水球が、レッドグリズリーの顔と胸に当たった。


「ブ、ブォォォォ!」


お、やっぱり雷や炎の魔法よりは効いてるのか?

嫌がって顔を背けるしぐさを見せたな。


弱点見付けたり!

アクアボールを連発してやる!!


ドバッ!ドバシャ!バシャ!

デカい図体を支えている足に連発した。

少しずつダメージは与えられている。


しかし、レッドグリズリーの動きが一瞬鈍ってはいてもコレでは火力が足りず、倒しきれないかもしれない。こちらのMPが尽きる方が早いかもしれない。


ならば。


アクアボールはやめだ。

執拗なグミ撃ちは敗北フラグである。



強い水のイメージを構築する。

水と言えば。

水の怖さの真骨頂と言えば、やはり水の圧で削り取る強さだろう。


そう、高圧洗浄機のイメージ!

距離を取りながら、強く魔力を練り上げる!

さっきよりも身体の奥から、大きく!



距離をとる俺を逃がすまいと、レッドグリズリーが猛突進してくる。そしてこちらに向かってまた爪を振り上げていた。しかも今度は両手。


「ブオオオオオオオオオオ!!!」


迫力満点だけど、流石に振りが大きいぜ!!

俺は脚に魔力を込めて思いっきり飛んだ。


先程の要領で。今度は真上に。突進と爪を合わせた敵の攻撃が、俺のいた場所で空振る。


「ここだ!!」


四つん這いのレッドグリズリーの上、空中3mから下に手の平を向ける。


手のひらの先に、薄い水色の小さい魔法陣が虚空に現れた。そこから細く鋭い光線のように水が放たれ、スゴい速度と圧力でレッドグリズリーの背中に命中する。


「ブオオオオオオオオオオオオッッ!!」


上からの攻撃で、うつ伏せのように倒れたレッドグリズリー。鑑定でHPの情報を見る。

残りHPは49。


かなり減ってはいるがまだ生きているのか!

流石にあの図体だけあってタフだ。


でも相当弱らせたんじゃないか?


と思いながらレッドグリズリーの背中にそのまま落下しながら蹴りを入れようとした。



それがいけなかった。

油断していのだろう。


「ブオゥッ!」」


素早く体勢を立て直し、空中のコチラを睨んだかと思うと、こちらの攻撃に合わせて爪を振るってくる。


「まずっ」


グシャッ


レッドグリズリーの爪が当たった。


落下していた方向を変えられて、地面に叩き落とされた。


「ガハッ」


衝撃で一瞬意識が飛んだ。口から血が吹き出す。

だが全身の痛みで現実に引き戻される。


「ぐっ」


身体いっぱいに斜めに走る爪の跡。

血が出ている。思いっきりやられた。


死んではいないけど、俺のHPは一撃で半分近くまで減っている。


もう1回喰らったら只では済まない。

やっぱ初モンスターでこれはキツいって!


「ブオオオ!ブオオォ!グオオオ!!」


そうこうしている間にも、トドメを刺そうと相変わらず突進してくるレッドグリズリー。いや、今までで1番速い!


「くそ!バカのひとつ覚えみたいに猪突猛進して来やがって!!!いや熊突猛進か?どっちでもいい!来いよ!!」


冗談を言っている余裕はないのだけど。

「俺の冒険は始まったばかりだっての!いきなり死ぬワケにはいかないんだよ!!」


魔法はもういい。MPも残り少ない。

確実に次で倒さないと危ない。


ならばやるべき攻撃はひとつ。


俺は後ろに下がって、細く深く息を吸う。


空気を肺に送り、息を鋭く吐き出す。

神経を研ぎ澄ませる。


あちらも命の危険を感じ取っているのだろう。

トドメの全力とばかりに、過去一番のスピードで迫るレッドグリズリー。俺を爪の射程圏内に捉える直前、両手を後ろに思いっきり引いて全身で溜めを作っている。


ならばこちらも、相応の速さと力で相手するのみ。

アクアレーザーの時よりも、深く集中して溜めた魔力を全身に行き渡らせる。


そしてレッドグリズリーの爪が俺に当たる刹那。


自分でも驚くほどの速さで、レッドグリズリーの下に潜り込んでいた。急に距離が縮まり、角度によってはレッドグリズリーが、俺に覆い被さっている様に見えるだろうか。


「ブオォッ!」


最後の一撃を放つ。


左手を刀の鞘に。

左手の親指で鯉口を切り。

溜めた魔力を解放する。


そして。


全力の右手で刀身を振り抜く!!!


ヒュンという風きり音が聞こえ、柔らかいものを切り抜ける感触。日本刀の刀身がレッドグリズリーの胸を、一の字に深く斬り裂いていた。


「ブォ…」

「うわっ!」


斬られた体勢のままこちらにのしかかってきた!?おいおいまだ生きてるのか!?


全力で横に飛び退いて、のしかかりから逃れる。ズシン!と倒れ込み砂埃を巻き上げるレッドグリズリー。


「ん」


鑑定してみると、レッドグリズリーのHPは0になっていた。最後の居合切りで事切れていたようだ。


「ふぅー、脅かしやがって。」


なんとか倒せた。俺1人でこんなデカいモンスターも倒せるのか………。


ウォーデンとの時ほどじゃないが危なかった。もう一度でも油断をしていたら、何かミスをしていたら、死んでいたのはこちらかもしれない。


それを表すように身体がまだ少し震えている。

命のやりとりで興奮しているのだ。


「良くやったぞ!ヒヤヒヤしたがな!」

バサバサと降りてきて呑気な事を言っているエスト。


「良くやったな!じゃないって!!ヒヤヒヤしたのはこっちだよ!いきなりコレはハードル高すぎるから!もうちょい普通のモンスターで経験値溜めさせて!」


「まぁまぁ。なんとか倒せたではないか」


「そうですよ!初モンスター戦でレッドグリズリーを相手にこれだけ動けるのです。流石ですよ。エスト様は、ヨウスケ様が攻撃を受けた時に、大丈夫かと心配でソワソワしておりましたが。」


「アイシャ!余計なことを言うのはやめろ!心配などしておらん!」


「えぇ~。自分がやれって言っておきながら心配してたの? スパルタのツンデレか!」


「すぱるたのつんでれ!? 何を言っておる!お、お主を心配していたのではない!レッドグリズリーの心配をしていたのだ!」


「つまりヨウスケ様が勝つと信じていたという事ですね。」


見事アイシャに言いくるめられるエスト。アイシャ、最初の印象と違ってメンタルめっちゃ強いな。


なんて考えていたら、地面にへたり込む俺に向かって、アイシャが手をかざしてくる。


何をするのかと思ったが

「あ、ヒンヤリしてなんか気持ちいい。」


「回復魔法、アクアヒールです。じっとしてくださいね。」


水色の淡い光がアイシャの手から流れて俺の傷口を覆う。


「ふぉぉぉ」


傷口がなんかちょっとくすぐったい。傷口に水をかけて流す時のあの感じなんだけど、なぜかピリッとする痛みはなくて、ほどよい冷たさと魔力の温かさで、寧ろ痛みがひいていく。


すごいな治癒魔法って。こんな感じなのか。気持ちよくてリラックス効果もあるんだな。


「ありがとうアイシャ」


「いえ、この調子で頑張ってくださいね。ケガは私が治しますから♪」


「ははは…ケガは極力したくないけど、またお願いするよ。」


「フン!傷が治った所で、お主。Lvが上がっているぞ。ステータスを見てみろ。」


「え、まじか。」

自分を鑑定してみる。


『リンドウヨウスケ』 Lv14

年齢︰19歳

常態︰普通

職業︰星の神獣士(候補)

HP︰293/293 MP︰241/21

攻撃力︰78  防御力︰81 

魔力︰75  魔法抵抗︰79

魔力操作︰70  敏捷性︰71

運︰20


所持スキル

星の鼓動・星の波動・星の加護(小)

鑑定Lv6


所持魔法

炎元素︰Lv1ファイヤーボール

水魔法︰Lvアクアボール・Lv2スプラッシュレーザー

雷魔法︰Lv1サンダースピア

星魔法︰Lv1オーラバースト・Lv2・コンセントレイト・Lv4スターブレイド


装備

天覆丸國続(てんふくまるくにつぐ)(龍吼)

星櫃の服 一式


称号︰星の力を持つもの(小) ・星の神獣士候補・転生者

契約対象︰星竜エストレガ(器契約)


「おお! Lvが2も上がってる!!しかもスプラッシュレーザーが所持魔法に増えた!」


「うむ。あと戦闘内容でステータスの上がり幅なども変わるからな。」


「あ、そうなんだ? なるほどね。」


あまり何もせず、強い人の横で戦闘に参加する、所謂パワーレベリングみたいな事をやると、Lvだけは上がっても、肝心の各ステータスが同Lvと比べて徐々に低くなり差がつくらしい。逆に行動回数が多いとか、ギリギリの戦闘をするほど各ステータスの上がり幅がいいと。



「で、どうだ? これが戦いというものだ。命のやりとりを経て強くなるのだ。強くなったのをすぐに実感するほどの事はそうそうないが、着実に経験は積み上がるぞ。」


「なるほどね。怖いし、疲れるし、もっと余裕のある戦闘がいいけどワガママばかりは言ってられないか。」


「その通りだ。それに最初にしては素晴らしいコンセントレイトだったぞ。」


「コンセントレイト? それって星魔法の? 使ってないけど。エストがまだ早いって言ってたし。」


「うむ? 戦闘中のステータスから見ても、間違いなく発現していたぞ。星元素の流れもわずかに見えたしな。」


「マジ? 使った覚えないんだけど。」


「お主、まさかあれは無意識か!コンセントレイトで魔力、魔力操作、判断力が上がったあとの最後の一撃は見事だったのだが。末恐ろしいヤツだな。」


「ほんとうにな。俺との戦いでも多分そうだったと思うぞ。だから貴殿は強いと言っているのだ。」


何この流れ。また俺なんかやっちゃいました?とでも言えばいいの?


実際、必死だったから自分では分からない。

死への恐怖は弱さじゃないと思う。

死ぬのが怖いから抗えるんだと今なら分かる。


でも、この世界に来て、今はこれが俺の現実だ。

いちいち戦闘を怖がってちゃいけないというのも分かる。


どちらにせよ、生き残る為にはもっと強くならないといけないし、恐怖だけでは乗り越えられないこともあるだろう。


もっと経験を積み、立ち回りとか、刀と魔法も色々試していこう。


なんて覚悟を決めた、そのあと。


レッドグリズリーはウォーデンが主な素材の部分を解体してくれた。今は二人のアイテムボックスに空きがそんなに無いのと、長距離移動の為、荷物は少なめにしたいので爪、皮、肉を少しだけ剥ぎ取った。



最後にアイシャが、残った部位に簡易的な供養をすると言って、魔法の水で薄く包んでから川に流していた。


魔術的な意味はアンデットが多いなどの特殊な環境以外ではほぼ無いのだが、気持ち程度のことだからこそやりたいらしい。アイシャ曰く、やらない人が大半だし別にそれで問題はないそうだ。


で、モンスターから手に入る素材は、基本的にギルドに売るか自分達で直接利用するかの二択。

 

解体を学んで自分でやると、ギルドにお願いする費用が浮いたり、売買がしやすくなり収入が増えるみたい。


でも俺にはしばらく無理そう。

グロ耐性はある方だと思ってたし、なにより命を奪ったのは俺なのに、解体となると想像以上にキツいと思う……。やっぱ映画とかアニメとは違うな。


初めて倒したモンスターだし、折角素材が出るならムダにはしたくないので、ウォーデンにひたすら感謝した。


貴殿が倒したのだから素材は要らないと言われたが、半分こにすると半ば強引に約束した。



覚悟は決めたけど、これはこれ、それはそれ。

徐々に慣れ……るのか?


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