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21話 賑やかなパレルノ村

明けました。年越しに間に合いませんでした。


まだまだ始まったばかりの、拙い作品ですが、今年もよろしくお願いします。



ファイヤーバードが、オレンジ色の空へと飛び去っていったあと。俺たちは街道を引き返していた。


分かれ道を右に曲がればブローニャ方面だが、俺たちは真っ直ぐに進み、パレルノ村へと向かっていた。


「もう少しでパレルノ村ですよー。明日からお正月なので、丁度年越しのお祭りをしてるかもしれませんね。」


「え、正月?」


「はい。12月が終わって新年を迎えるための、ちょっとした行事があるんです。」


「正月文化がアースコルトにもあるのか!じゃあ、もしかして年越し蕎麦とかお餅食べたりするの?」


「オモチ? いえ、チュウイーライスをたべますよ。あとソバ?じゃなくてスバも一日に食べますね。」


「もちもちの米!そのまんまだ!でもスバは年越した後なんか。」

似てる文化があるとは思ってたけど、なんか理由はあるのか? まぁ誰に聞いても分からないだろうけど。


「チュウイーライスの煮汁が美味しいんですよねぇ。」

「はは。小さい頃のアイシャは正月になるとチュウイーライスの煮汁ばかり食べていたな。」


「ばかりってほどじゃないでしょう!兄さんこそアンコ汁のチュウイーライスばかり食べてたくせに。」


お餅を食べる2人絵になるなぁ。

にょーんと伸ばして食べてそう。


「チュウイーライスとやらはそんなに美味いのか。ならば我も食べなくてはな!」

「キュー!」


さっきから腹が減ったしか言わないエスト。

餅の話でさらに腹が減ったのか。

ファナの頭の上に乗っているポイちゃんも急に鳴き始める。もしかして食い意地張ってます勢が増えた?


でもヒナに餅は流石にどうなの。


「見えましたね。」

「お、本当だ。でもなんかやけに明るいな。」


「あ、やっぱりお祭りやってます!みなさん早く行きましょう!」

そう言いながら小走りになって先を行くファナ。

俺達も後をついていく。


「うおお!こりゃ本当に祭りだ!すげー!」


村の全景はまだ分からないが、ぽつぽつと立つ木と木の間にロープが括りつけてあり、そこに色鮮やかなランプが吊るされている。


赤、青、黄、緑、白。

ブローニャの街頭などとは違う、特殊なガラスを使っているのだろうか? ちょっとしたイルミネーションみたいで綺麗だ。


そして村の広場のような場所では、大きな井桁組みのキャンプファイヤーが、一番の明るさを放っている。その周りでは村人が踊ったり、楽しそうな笑い声も聞こえる。


「ほお!これはなかなか良い雰囲気だな。」

ウォーデンも地味にテンション上がってるし。


「よし!早速チュウイーライスか!それとも宿のオカミのメシか!?」

「あーこら、エストまで走るなよ!」


村の中央だろうか、キャンプファイヤーのある広場に着いた。すごい盛り上がってるなー。


「お、ファナちゃんじゃねーか!今日の主役のご登場だな!!」


「ちょっと、ザカルさん、飲みすぎなんじゃないですか?」

ファナが広場に来てソッコー村人のおじさんに絡まれてる。すごい仲良そうだ。


「何言ってんだ!ファナちゃんが来たら飲むしかねぇだろ!よしもっと酒を出せ!」


「ちょっとアンタ!ファナちゃんを困らせるんじゃないよ!ごめんねぇ、このバカの事は気にしないでいいから!アンタは飲み過ぎだよ本当に!」


「いえいえ!こっちも楽しくなりますから!」


「そうかい? そちらさん達はファナちゃんのお連れさんかい? ちっこい鳥さんも増えてるじゃないか。」


「はい。私がご迷惑かけちゃって、色々あって一緒にギルドの任務をしてました。」

「キュキュー!」


ポイちゃんは元気に片方の羽をあげて返事している。


「そうかい!普段は何も無い村だけど、ちょうど年越しパレルノ祭りの最中でね。来たばっかで騒がしいけど、許してやってくれるかい?」


「あ、全然お構いなく!自分も賑やかなの好きなので!」


「あん? なんだ兄ちゃん。待てよ…? おめぇまさかファナちゃんの彼氏か!?」


ブッ

急に何を言い出すんだこのオッサン!

どこにそんな要素を見出しのか。

酔っ払いすぎだろ。


「何言ってるんですか!ち、違います!まだ会ったばかりですよ!」


ファナがぎゃーぎゃーと全力で否定している。ギネスに載るのでは、ってくらいに早すぎるカップル勘違いイベントだが、慌てて否定するのはお約束で。


「なんでい違うのか。若いのに勿体ねぇったらねぇぜ。ひっく。」


「全く。この方はヨウスケさん。こちらはウォーデンさん。こちらはアイシャさんです。あとこのドラゴンちゃんがエスト。この子は仲間になったポイちゃんです。」


お辞儀をする面々。

エストとポイちゃんは、置いてあるデカい一升瓶の酒の臭いを嗅いで、しかめっ面をしている。


「どうも。楽しそうですね。私達もご一緒して宜しいですか?」


「もちろんだよ!ファナちゃんのおかげで今年も無事に祭りが出来たからね!好きなだけ食べて飲んでくれ!」


そう言って、ファナとおばさんがどこかに連れ立って行った。


にしても、やはりコミュ力が高いアイシャ。

というかそんなに里から出てなかったはずのアイシャもだし、女性陣がコミュ力が高いんだよな…。


「お、ねーちゃんも美人さんだな!そっちのにーちゃんの彼女か!?」

「兄です。」

「ゴホンッ…。」


「お、おう、そうかい、そいつは良いな!兄妹仲良きことは美しきかな!」


「バカタレ!失礼な勘違いしといてなに適当言ってんだい!すいませんもう本当に!代わりと言っちゃなんだけど、これ好きなだけ食べてちょうだい!」


ファナとおばさんが、食べ物と飲み物を持ってきてくれた。肉の串焼きやスープ、焼き野菜などが大きな皿にこんもりと乗っている。


「申し訳ない。せっかくなので、いただくとするか。」

「えぇ。正月のお祭りですから。一期一会を大切にしましょう。」


そういは言いつつ、軽食ばかりだった中で動いていたので、みんな腹が減っていたのだろう。

遠慮もそこそこに食べ始めた。


ポイちゃんは、ファナが小さく切って掌に乗せた小さな肉の塊を、つついて食べている。ニコニコだ。


「そう言えば、ファナのおかげとか言ってたけど、何かあったんだ?」


「そうよー? 半年くらい前にファナちゃんがこの街に来てから、色々と助かってるのよ。」


「そうだぜ。この村には俺たち男手はあるけど、冒険者はすぐ村から出てっちまうからな。畑が魔物に襲われても、すぐファナちゃんが退治してくれたんだ。他にも色々な。」


「へぇー!食い逃げガールの印象とは真逆だな、すごいじゃんファナ。」


「食い逃げ?」

「い、今その話しはいいじゃないですか!」


「食い逃げをしようホ、この村への手助けが消える訳ではファい。素晴らしいことファぞ。」

もちゃもちゃと肉を食べながら言うエスト。


「あー、そういう事かい。ファナちゃんは優しさと同じくらい、食い意地も人一倍、いや三倍あるからねぇ。」

察しがいいおばさんは嫌いじゃない。


「うぅ…。でもワタシ、そんなにこの村の為に役に立った覚えはないですよ。のんびり冒険してただけで」


「何言ってんのさ。そんな謙遜はホワイトボアですら食べやしないよ!いいからファナちゃんはもっと食べな!」


その言葉を合図に、周りいた村人達も集まってさらにワイワイガヤガヤしてきた。



お。この焼肉の串もいいけど肉巻きがマジで美味いな。餅っぽい米に、肉と野菜が巻かれている。いやでも、しし唐みたいな野菜も美味い。ネギまも世界共通で美味い。


「うおおお!食べろ食べろ!飲め飲め!」


うげ。食べ物に感心していたら、横から急にヒゲ面のオッサンが絡んだきた。しかも一升瓶を片手に。


「えっちょっと!そんなに要らないですよ!!」

並々とお酒らしきものを注がれる。


この世界でもアルハラかよ!

クソ!まぁ、飲むんだけどさ!


「うおおおー!いい飲みっぷりだ!おいこの兄ちゃんイける口だぞ!もっと酒だ!もっと注げ!」


勘弁してー!!

このノリもたないって!


仏頂面のウォーデンも流石にたじたじ。

既に顔が少し赤い。


アイシャも口元を手で隠しつつ、やんわりと抵抗しているが、結局おっさんにお酌されてる。


ファナはいつのまにか数人と踊ってた。

ノリノリだ。もしかして酔ってる? 早くね?

なんか楽器弾いてる人がいて、民族音楽も流れてるし。



でも本当にみんな楽しそうだ。

けどそれも無理はないか。


よく話を聞くと、パレルノ村はここ数年、周辺の魔物が少しずつ増えて、畑が荒らされる回数も増えていたそうだ。さらに地脈の影響でそもそもの作物が不作だったらしいのに。


でも、ある日ファナがフラッときて、魔物を追い払ってくれたと。そして地脈にお祈りしてくれたらしい。


地脈に元素などもあるアースコルトだから分からないけど、ファナとしては本当にただのお祈りだったから、効果はさすがにないだろうと。だが偶然なのか何なのか、畑の作物も少し元気になった。そしてファナ自身が村の護りになり、荒らしに来る魔物も数を減らしたと。


一時は豊穣の女神みたいな扱いを受けたらしい。

あながち大袈裟とは言いきれないよなぁ。


何かある度にギルドに連絡して、冒険者が来て、脅威が無くなるまでに、金も手間も時間もかかるだろうしな。


ファナとしても、駆け出し冒険者が1人で出来ることには限界があるから、ブローニャと行き来して小さい任務で小遣いを稼ぎつつ、パレルノ村で世話になっていたそうだ。



頭のてっぺんから赤く、毛先に行くほどピンクになっている髪を、肩まであるサイドポニーテールにしている。その逆サイドには短い編み込みがある。


服装は、裏地がピンクの白いショートケープを羽織り、その下は茶色のインナー。白いショートパンツに黒いタイツ。


食い意地の張った、小さな村の豊穣の女神が、楽しそうに、人に囲まれて踊っている。


酒のつまみとしてはなかなか。


「良い村だな。盗賊にサンダーワイバーンに、色々あったが。こうして賑わいをながめるのも悪くない。」

顔の赤いウォーデンが、避難してきて呟いた。


「ふふ。騒がしいのは平和な証拠ですね。こんなに正月の祭りが盛り上がってるの、私は見た事ありません。」

アイシャは変わらないなぁ。巫女様は、酒への耐性も強かった。お酌されるのもするのも上手い。


「おい!近寄るな酒臭い!こんなのもの飲んで何が楽しいのだ」

お、エストが酒飲みに絡まれてる。


「ひっく。いいじゃねーか。ドラゴンは人間より長生きなんらろう? だったら酒も強いらろ!」


謎の理論で攻める村人。


「ぐぬぬ!我にこんなものを飲ませるとは!お主、どうなっても知らぬぞ!!」


あ、飲むんだ。神竜が酒を飲んだ。

大丈夫なのか?


「おおおお!いい飲みっぷりだ!さすが神竜様だぜ!そう来なくっちゃな!」


「うええ不味い!もう1杯!」

青汁か。


「こんな小さいドラゴンが神竜さまだって? そいつは最高だな!ブハハ!」


「カワイイ~!わたしのペットになる? 」


「ちっちゃい!? かわいいらと!? われ、しんじゅう、ほっしのひんりゅうぞ!?」


あーあー。やっぱダメじゃん。

弱いって次元じゃないよ。


この辺で助けに行かないとヤバそうだ。


と思って、広場の端で水を飲ませたが、エストは潰れてしまった。


お腹いっぱいになって眠くなったのか、顔がとろーんとしているポイちゃんが、寝転んだエストにもたれかかっている。


神獣である星の神竜も、アルコールには勝てないということが分かった。毒よりも強いアルコールとは。百薬の長とは一体。


と、腹を出して仰向けに寝転がっているエストに、毛布を掛けていると、横から村人に引っ張られる。


「おいにーちゃん!あんたも踊りを見せてやれ!踊れない男はファナちゃんを守る漢にはなれん!」


まだその勘違い続いてたの!?

しかもどういう理屈だ。

やはり村と言えば独特な風習なのか?


踊りらしい踊りなんて、ソーラン節と花笠音頭とランニングマンしか出てこないって!




そんなこんなで。

そんなこんなが一体何なのか、最早分からないが、夜は更けて行った。



正直に言います。ポイちゃんのことを忘れてました!

なのでちょっと修正しました。

ポイちゃんごめん。

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