17話 炎と雷と
仕事が忙しく、執筆が遅れてしまいました。
投稿分のストックが欲しいなと思う今日この頃です。
でも、18話は出来るだけ早めにあげます!
「怪獣大戦争かな!?」
「飛竜か!?」
「あわわわわわ」
「あの体色で、あの翼とあの尾はもしかして。」
「うむ。サンダーワイバーンだな。 飛竜にしてはなかなかやる種だ!」
「サンダーワイバーン!? 雷飛竜!? なんでそんなのがここに!?」
「図鑑の知識ではありますが、好物の鳥類モンスターと、その卵を狙って来たのかもしれません!」
「モンスター博士さすがすぎる!」
黄土色っていうのか?
全体的に濃い黄色の竜鱗を持つ、大型の飛竜。
魔物のカッコイイ名前ランキング27位。
魔物のカッコイイ見た目ランキング14位。
適当に今作ったランキングだ。
こんな時じゃなければ俺もカッコよさに興奮していただろうが、今はそれどころじゃない。
と、とと、とりあえず鑑定だ!
『サンダーワイバーン』Lv51
状態︰普通
HP︰1094/1094 MP︰954/954
攻撃力︰520 防御力︰473
魔力︰688 魔法抵抗︰672
魔力操作︰306 敏捷性︰449
運︰53
HP︰1259/1259 MP︰1381/1381
攻撃力︰634 防御力︰622
魔力︰721 魔法抵抗︰709
魔力操作︰340 敏捷性︰467
所持スキル
サンダーブレス・サンダーウィング・サンダークロウ・サンダーテール・サンダーフラッシュ・雷鳴の咆哮・高速飛翔Lv6・気配遮断Lv4・覚醒
所持魔法
雷魔法︰Lv1サンダースピア・Lv2サンダーボール・Lv3雷のエンチャント・Lv4クイックネスボルト・Lv5スパークブレイド・Lv6サンダーバリア・Lv7レールガン・Lv8ライトニングボルト
風魔法︰Lv1ウィンドカッター・Lv2エアアーマー・Lv3風のエンチャント・Lv4ウィンドアッパー
土魔法︰Lv1アースアーマー・Lv2ロックブラスト
装備 無し
称号︰雷を操るもの・雷の飛竜・魔を喰らうもの
「51! エストに匹敵するレベルじゃん!」
「ヤバくないですか!? ヒクイドリだけでも大変なのに!」
「お主ら、下手に動くなよ。我がサンダーバリアで、奴の雷攻撃をある程度までは打ち消す。物理攻撃には気休めにしかならないが、様子を見つつ隙をついて攻撃するのだ。」
そういうと、エストは身体を巨大化させて、サンダーバリアを張った。
悠然と羽ばたくサンダーワイバーンの視線が、ヒクイドリからエストに移る。まずは俺たちから排除するために優先順位を変えたか?
バチバチと、サンダーワイバーンの身体をイナズマが奔る。メラメラと、ヒクイドリの口から炎が噴き漏れる。
思わぬ乱入者によって、逃げるという選択肢が無くなってしまった。
この魔物達が追ってこない保証は無い。いくらエストでも、俺たちを乗せて逃げ切れる保証はない。そもそも、どこに逃げる? 村や街に逃げれば最悪な事態もありえる。
考えている間にも、サンダーワイバーンが魔力を練っているのが分かる。何か攻撃がくる。
この世界に来て早々、やるしかないという状況ばかりだ。この先あと何回、腹を括ることになるのか。何度覚悟してもそれを超える危機が迫ってくるんだが?
サンダーワイバーンの喉の奥が光りスパークする。ブゥゥンという、エネルギーが臨界へと達していく音が聞こえた。
そして火花を巻き込むように、太い光線が放たれた。
視界いっぱいに光の洪水。
どうなったのか一瞬分からなくなる。
「呆けている暇はないぞ! ヒクイドリにも注意しろ!」
サンダーワイバーンのブレスは、エストのバリアによって霧散したのか。バリアの表面とブレスの軌跡に、バチバチと火花が散っている。
「みなさん、Lv8の雷魔法と風魔法、土魔法にも気を付けてください!」」
火の玉をサンダーワイバーンに撃つファナ。
「鑑定の情報助かる。 だが物理攻撃も間違いなく危険だ。まともに喰らえば只ではすまないだろう。」
スプラッシュレーザーをヒクイドリに撃つウォーデン。
「私はウォーターバリアをかけます! ヒクイドリの炎攻撃に、ある程度の効果がありますから!」
エストのバリアに重ねがけするアイシャ。
みんなの声が聞こえる。
みんなすごい。
この状況でも周りを見ている。
ちゃんと戦っている。
俺は守られるだけか?
そんなのはごめんだ。
みんなの足を引っ張ってばかりじゃいられない!
まずはヒクイドリも鑑定だ!
俺に出来ることをやれ!
『ヒクイドリ』Lv43
性別・オス
状態︰普通
HP︰739/739 MP︰681
攻撃力︰426 防御力︰413
魔力︰379 魔法抵抗︰351
運︰61
所持スキル
ファイヤーストーム・ファイヤースラッシュ・バーニングストライク・バーニングレイジ・炎鳥の守護・炎鳥の祝福
所持魔法 無し
装備 無し
称号︰炎を食むもの
「みんな、知ってたら聞き流してくれ。 ヒクイドリは所持魔法がない代わりに、スキルが強いと思う。 あと、オスがやや物理タイプ、メスがやや魔法タイプ寄りだ。 」
「助かるぞ。オスメスの違いは初耳だ。」
「私は全部初耳です!」
「ちなみに鶏冠が派手なのがオス、尾が長いのがメスらしいです!図鑑の知識は裏切りません!」
よっ、アイシャ博士!
サンダーワイバーンはブレス後の硬直か、まだ地面スレスレでホバリングしている。ヒクイドリも卵を守っているのか、まだ仕掛けて来ない。
「位置が悪い。一旦下がる!」
エストが叫ぶ。
サンダーワイバーンと、ヒクイドリの間に挟まれる形になっていた俺たちは、ひとまず両方を視界に収めるため、後ろに下がった。
すると、ヒクイドリが攻撃を開始した。
「ギュエエエッ!」
俺達にではなく、サンダーワイバーンに。
ヒクイドリ2匹が、両翼で羽ばたくように虚空を斬ると、斬撃のような燃える衝撃波が放たれた。
サンダーワイバーンは空中を舞い、避ける。
だが4つの衝撃波のうち、2つが敵を捉えた。
サンダーワイバーンの翼から黒煙がでて、飛行機雲のように尾を引く。
「グゥオオオオオッ!」
多少はダメージがあるのか、呻くサンダーワイバーン。
この機を逃すまいと、俺たちも攻勢にでた。
先制にエストのLv4毒魔法、ブラックファング。
黒い毒のトゲが虚空に現れ、交差するように牙を剥く。胴に直撃した。
ほぼ同時にファナはLv1炎魔法、ファイヤーボールの3連発。2mはあるだろう火球が、それぞれ別の角度に弧を描き、1発が脚に着弾。爆発して黒煙があがる。
ウォーデンとアイシャはLv5水魔法、ウォータースラッシュを放った。飛沫をたなびかせ、2つの水の斬撃がクロスして空を滑り、尻尾に当たる。
俺はLv1氷魔法、フリーズクラッシュだ。
エストの見よう見まねでやってみた。
大気中の、目には見えない氷元素を取り込み、練り上げて、撃つ。エストほどの威力は無いが、氷の礫の1つが翼に当たった。
「グオオオオオォォォォン!」
それぞれの攻撃が当たった。
サンダーワイバーンが少し怯んだように見えた。
「いいぞ!かなり効いてるんじゃないか!?」
「まだだ。このまま倒せるほど楽な相手じゃない」
バチバチと放電しながら、サンダーワイバーンはそのまま空中を急旋回して………突貫してくる!?
マズイ!
魔力を脚に込めて、全力で横っ飛び。
バチバチと音を鳴らしてエストのバリアを貫き、左右に避ける俺たちの間に、雷で軌跡を残していくサンダーワイバーン。
「ぐぅぅっ」
「ヨウスケ殿!大丈夫か!」
纏ったイカヅチが俺の身体に掠めてしまった。
直撃を避けてこれか!
いや、ちょっと待て、本当にまずい。
掠ったにしては大きいダメージもそうだが、それ以上に。
身体が痺れて思うように動けないのだ。
動こうとするたび、全身に痺れが走る。
サンダーワイバーンはまた空を旋回して、先程と同じ体勢。再び突っ込んで来そうだ。
焦る。
「マリンメディケイト!」
動ける!!
アイシャの水魔法か!
身体を水色の光が包み、痺れもダメージも癒されていく。
「ありがとう!助かった!!」
「また来るぞ!」
しっかりしろ俺!油断をしてる場合じゃないぞ。
今度こそ避ける!もっと速く!
再び超低空を飛んでくるサンダーワイバーン。
引き付けて、脚に力を溜めて、避ける。
「おわっ」
今度はすれ違いざまの放電も受けなかったが、横に跳び過ぎて驚く。
「今のはなんだ!身体が軽い?」
「私もです!」
ファナが、縄跳びのように右足左足と、交互にぴょんぴょんしている。
「雷魔法のクイックネスボルトだ。お主らの敏捷性にバフをかけた。これで少しは余裕が出るだろう。お主達が強くなれば、戦闘中その動きが常に出来る。その感覚を覚えておくのだぞ。」
「おおっ!こりゃすげー!サンキューエスト先生!!」
これなら回避するだけじゃなく、攻撃にも多少は意識を割けそうだ。
しかしサンダーワイバーンは旋回突撃をやめたのか、こちらを見据えて羽ばたいている。
何かまた大技が来るか? と身構えた。
だがその前に大技を放ったのはヒクイドリだった。
「キュエエエエエエエエエエエッッ!」
全身が赤く光ったかと思うと、ヒクイドリの翼、尾、鶏冠から激しい炎が噴き出す。
それは攻撃ではなく、予備動作。
別名ファイヤーバードと呼ばれる所以。
不死鳥と言われても、違和感が全くないほどの輝きを放ち、燃えている。距離があるのに熱の余波を感じるほどだ。
思わずみんながその動向に注目してしまう。
こちらに攻撃が向けられれば、危険だ。
サンダーワイバーンは警戒して距離を取り、空を舞い始めた。
ファイヤーバードは、おそらく限界まで溜めただろう、魔力とその炎を解き放った。
灼熱の火炎が、大きな渦を巻く。
飲み込まれれば、只では済まないのが分かる。
その火炎の渦が、ファイヤーバードの羽ばたきによって、凄まじい加速を得てサンダーワイバーンへと迫った。
然しものサンダーワイバーンでも、この大きさと速度の炎の渦は、避けられないだろうと思えた。
しかし、サンダーワイバーンは俺たちの予想を超える速さを見せる。ゆったりとした飛翔から、一瞬で超高速に加速したのだ。
「やつもクイックネスボルトを使ったか。」
ファイヤーバードの、渾身のファイヤーストームが外れてしまった。
と思った瞬間。
なんと、灼熱の渦が、方向を変えてサンダーワイバーンを追っていた。思わぬ追尾に回避が間に合わず、火炎の渦に呑み込まれるサンダーワイバーン。
炎の燃える音と、爆発音と、火花の散る音がして、ひときわ大きな黒煙が昇る。
やがて黒煙が消え、雷の膜に包まれたサンダーワイバーンの姿が見えた。
「今の攻撃でもピンピンしてるってマジ?」
「回避の無理を悟り、とっさにサンダーバリアを張ったのだ。」
「えぇ。あれだけの大技の方向を変えるファイヤーバードも恐ろしいですが。凄まじい戦いになってきましたね…。」
「でもファイヤーバード、私達には攻撃してきませんね。」
「うむ。おそらくやつから巣を護るつもりだろう。我らもサンダーワイバーンだけに集中しよう。」
「了解!」
最初は挟まれたかと思って絶望したけど、これならやりようはある。はずだ。
「では、そろそろ我も、空の戦いに混ぜて貰おうか。」
そういうと、エストは空へと舞い上がった。
サンダーワイバーンと。
ファイヤーバードと。
星竜。
戦いはここから佳境へと入っていく。