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15話 エストさんのきつ〜いお仕置

盗賊団のメンバーを、本名と偽名どちらで呼ぶのか曖昧になっていたので、少し修正しました。

分かりづらくてすいません。


冒険者ギルドを出て約1時間。

俺たちはまだ街道を南下していた。


今は小高い丘の上で、改めて地図を見ている。


後ろを見ると、ブローニャの街は既に遠く、ぼんやりと外壁、建物の尖塔が見えるくらいの距離。


そして前方。

丘を下った先で、街道が二手に別れている。


東側に曲がるとパレルノ村へ続き、西側に曲がると森の中へと入っていくようだ。


「このまま道に沿って進んで、分かれ道を右に行けば大丈夫そうですね。」

ベイル(本名ギャレス)が道を指していった。


「そうだな。」



ここまでモンスターには2度遭遇している。


1回目は、依頼任務にもあったブローニャヴォルペーという、少し大きい灰色のキツネみたいなモンスターだ。


2匹で居たところに、偶然こちらと鉢合わせしてしまったようで、戸惑いながらもこちらに襲いかかって来た。


ブローニャヴォルペーの2匹同時の噛みつきを、ベイルが盾で防いでそのまま弾き飛ばし、怯んだところをネイノクス(本名アダート)が弓矢2本で2匹とも仕留めていた。


もう1回はバグズフラワー3匹。

クモのような多脚で、背中に大きな食虫植物を咲かせたモンスターだ。


正直かなりキモくてビビった。脚がクモだから動きも意外と速い。


遭遇するなり、溶解液らしき液体を飛ばしてきたが、ベイルが盾でそれを防ぎ、みんなの魔法で倒した。

一応俺もファイヤーボールを撃ったよ。


怪しまれない為にもだけど、せっかくだから俺も戦闘に参加しなきゃね。経験値ほしいし。


バグズフラワーからは、素材として脚と花びらが取れたので、一応スレッジハンマーと半分ずつに分けた。



そして今、丘を下った俺たちの目の前には。

ソーンリザードという、トゲが背中と手足に着いたカメレオンみたいなモンスターがいる。


「!!」

アイシャが目をかっぴらいて凝視している。

爬虫類好きが炸裂しているのか?

スレッジハンマーの面々がいるので、流石に興奮は表に出さないけど。


俺達だけだったらアイシャがどういう行動を取ったのか、ちょっと気になる。


『ソーンリザード』Lv17

状態︰普通

HP︰297/297  MP︰48/48

攻撃力︰44  防御力28

魔力︰37 魔法抵抗30

魔力操作︰19 敏捷性26

運︰25


所持スキル

ニードルスパイクLv3・索敵Lv1・暗視Lv1


所持魔法

土魔法︰Lv1アースアーマー・Lv2ロックブラスト



体長は3mくらい。

トゲが結構危なそう。

あとは魔法も注意だな。


警戒していると、今度はリナンド(本名タルル)が仕掛けた。斥候・陽動が得意な彼女らしく、注意を引きつけるのが上手かった。


トゲトゲのついた手の甲を、裏拳のように払うソーンリザードの攻撃を、上手く距離を取って避ける。


さらに50cmくらいの石を飛ばす土魔法、ロックブラストをソーンリザードが放つが、小回りの効くリナンドには当たらない。


しかも避けながら背後に回り誘導し、ソーンリザードが俺たちに背を向ける形になっていた。


すかさず残った全員で攻撃だ。


アイシャ、リザ(本名リズ)、俺が魔法で攻撃。

ウォーデンが背中のトゲを切り落とし、ベイルが足を剣で刺す。

ファナは腰を落とした掌底で打撃を加えている。

ネイノクスは矢の温存か、ナイフで背中を刺した。


一斉攻撃を受けてソーンリザードが倒れる。

一瞬ビクッと痙攣し、そのまま動かなくなった。


「すごいですね。これだけ人数がいると、そこそこのモンスターでもすぐ倒せますね。」

ほぼ呼吸に乱れがないベイルがいう。


「あぁ。貴殿らの実力もそうだが、思ったより全員の連携も取れていて、驚いている。」


「そうだねぇ。あんた達もなかなか強いね。」

色んな意味で怖いくらいに順調です~。


ウォーデンも言ってたけど、スレッジハンマーはステータス以上に強かった。冒険者ランクは伊達じゃないという事か。


ステータスには出ない素の経験が、動きに出てるんだろうな。



でも何かあるならそろそろか?

そう思った矢先、リナンドとネイノクスが、アイコンタクトをして頷きあっているのを見てしまった。


鑑定スキルでこの状況が分かっていなかったら、違和感には感じないであろう、ちょっとした仕草だ。


案の定、次の戦闘で動きがあった。



別れ道の手前。危険度Cランクのコッカトリスが街道横の森から姿を現す。鱗の肌を持つ大きい鶏だ。


能力の数値はそこまで高くないが、やはり厄介なのは石化スキルらしい。弱い魔眼と吐息で、ジワジワと敵を石化させていくんだと。


ただ、すぐに全身が石化していくわけではないので、早めに倒せれば大した被害はなく、進行した石化も解ける。


それを知っているウォーデンが、飛び出して陽動も兼ねて先制攻撃を仕掛けた。リナンドもそれに続く。


俺、アイシャ、ファナ、リザは横から援護をするため、左右に少し回り込んでから魔法攻撃だ。


しかし。


コッカトリスの爪攻撃を避ける際に、リナンドがウォーデンの方にステップを踏み、ぶつかったのだ。多分わざとだよな。


ほぼ同時に、ネイノクスの撃っていた矢が、射線上で軽く体勢を崩しているウォーデンへ飛んでしまう。


「マズイ!」

矢を撃った本人、ネイノクスが叫ぶ。


だがウォーデンは何事もなかったように、忍者刀で矢を弾いた。そしてコッカトリスの裏に回り込み、2度3度と斬りつける。


コカトリスの反撃を、ウォーデンが後退して躱す。

入れ替わりで、アイシャのスプラッシュレーザーがコッカトリスの足の付け根に直撃した。


大ダメージと共にバランスを崩したところへ、

急接近したファナが溜めた拳を見舞う。


すっごい連携だな。

そこからは畳み掛けるように一斉攻撃。


HPと魔力は高いが、防御・魔法抵抗がやや低いコッカトリスは、反撃を試みるも倒れた。



「すまない! 射線はコッカトリスに通ってたんだが、まさか2人がぶつかっちまうなんて!いやぁウォーデンさんで良かったぜ。」


「ほんとだよ。でも1番悪いのはアタイさ。すまなかったね、動く方向を間違えちまって。」


リナンドとネイノクスが、すぐさま言い訳をする。白々し~。明らかに狙ってたのによく言うよねぇ!


「あの状況で後ろからの矢を弾くなんてね。あんな芸当ができるウォーデンさんに感謝しなさいよ、ネイノクスもリナンドも。」


コッカトリスの足の爪かすめたらしく、腕から少し血が出ているリナンドの治療しながら、リザが2人を責める。


「いや、こちらのミスだ。なんにせよ全員無事ならそれでいい。大した被害もなかったしな。」


ウォーデンが大人すぎる。

多分、気付いているんだろうけど。


俺はネイノクスの撃った矢を鑑定してみる。


『パームウッドの毒矢』

《パームウッドの矢に、イエロースコーピオンの神経毒を塗りこんだもの》

威力︰18

毒効果︰小


やっぱりな……。当たっても死にはしないだろうけど、回復に薬やMPが必要になるし、間接的な戦力ダウンを狙ったんだろうな。やることがセコい。


証拠として、毒矢はこっそり回収しておいた。


「くだらんことをする。やはりお仕置が必要だな。」

ずっと傍観に徹していたエストがボソッと呟いた。


アイツら、終わったな。合唱。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


フレンドリーファイア未遂があってから20分。

素材を分けたついでに少し休憩した。

今はまた歩を進めている。


既に別れ道は超えて、森の中を通る街道に入った。

馬車が2台並べそうな、そこそこ広い街道。


おそらく何か罠があるならここだろう。


この森はそこまで大きくない。

このままもう30分もすればヒクイドリのいるであろう、峠に出てしまう。


「しかし、ドラゴンさんはなんもしないのかい?」

リナンドが、エストを少し煽るように言った。


「手を出すまでも無いんだろう。俺たちだけでも何とかなってるからね。ただヒクイドリはそうも行かないと思うけど。」

窘めるようにベイルがいう。


そう言うベイルは、なんでこんな盗賊団のリーダーやってんだ。あとどうせヒクイドリの巣の調査とかする気ないでしょ。


と、ここで急に隊列の先頭にいたベイルが、立ち止まる。


「おや? もしかしてこれは…。ちょっと気になるものを見つけたので、先に行っててください。」

俺たちに言っているのだろう。


そしてネイノクスとリザも後ろに下がっていく。

「どうしたの? 何か見つけた?」

「リーダーは目がいいからなー、今度はなんだ?」


うわぁ白々しい。まぁこれも鑑定したおかけで、怪しいって思うのかもしれないけどさ…。


「ちょっとアンタたち、何してんのよ」

リナンドが振り返った。


その時。


街道の左右から、小さい針? みたいなものが大量に、スレッジハンマー以外の俺たち目掛けて飛んできた。


「来たな!」

「!」


なんとか反応して避けた。

避けたはいいが。


さらにシュシュシュという音をたてて、避けた先にも針が飛んでくる!


しかも狙いが程よくバラけてるから、飛んだりしゃがんだりしてもダメそうだ。


「うわうわ!」

ファナの焦る声。


罠があるのは予想してたけど!

ちょっと針の数が多くない!?


さっきまでの「フフン、罠が来るのは気付いてるぜ」的な余裕が無い自分が情けない。


とにかく当たったらまずそうな針を避けるため、

街道を前に走るしかない。

左右から来るから下がれない、止まれば刺さる。


「まだ来る!?」


ウォーデン、アイシャ、ファナも避け続けるために前へと走らされている。


するとウォーデンとアイシャが何かを唱え始めた。


「「我は水の血を流すもの 清流の領域を以て 討ち消し 討ち払い 討ち流し 来たる威を鎮め給え 」」


あマズイ、針が刺さった!

足に刺さってる!


などと焦っていたら、急に身体が宙に浮く感覚がした。なぜか地面がない。


「「ゑ?」」


今度は落とし穴。

気づいた時には絶賛落下中。


「おわぁぁッ!」

「キャァァッ!」


そんなに深くは無いが、下に槍みたいなのが!

マジでヤバい? こんなんで死ぬ!?


いや魔法を撃ってなんとかしろ俺!

みんなは大丈夫か!?


そう思った瞬間。


「「ウォーターバリア!」」


それはアイシャとウォーデンのLv6水元素魔法。

二重の水の膜のような結界が、4人を丸ごと包む。


下に設置してあった安物の槍では貫けない。

槍の刃先が水の膜に当たるが、波紋が波打つだけ。


「うおおお!!」

「すごーい!!」


ブッワァァァ!!

助かってホッとしていると、今度は急にすごい風の音がなり始めた。


「なんだ!? まだなんかあるのか!?」

「もういいですよワナは!!」


風の音がさらに強くなり、ウォーターバリア毎、

4人は高く飛ばされた。


穴に落ちたと思ったら、次は空へ。


飛ばされたまま、地上10mくらいから下を見ると、盗賊団がエストを縄で縛っていた。


しかもなんか、2人ほど増えている。

ん? あれは。


昨日アイシャにスリをしようとして、ウォーデンに止められた男か!やはり仲間だったか。


そしてもう1人はトラの獣人。

直前にスリをして逃げた男だ。


なるほどね。顔を見られた奴らは、ここで罠を準備していたのか。そしてネイノクス、いやアダートのあのバンダナはそういう事だろう。


偽のスリ役がトラ男で、グルのアダートがスリ被害を叫ぶことで、周りの注目を集め、仲間が本命のスリをする手法か。


汚いなさすが盗賊きたない。



しかしその汚い盗賊団が。

小さいエストを縄で縛っている。

あれで捕獲したつもりなのだろうか。


「シャハハハ!上手くいったぜぇ!!」

「さっきの見たか!?いい罠だったろ!? 」

「おうお前ら、上手いことやったな!」

「さて。売ってもいいし躾てもいいかしらね。」

「生意気なドラゴンだ。躾てから売るか。」

「ヒャハ!そいつはいいねぇ!アタイがやるよ!」


「お前たちは、本当にどうしようもないな。」


縄に縛られているはずのエストは余裕。

怒るというより呆れている。


「うるさい!また俺に向かって生意気な口を!」

急にベイルがブチ切れている。こわっ。


「命乞いの準備はできたか?」


「は? この有様で何言ってんのさ。この縄はね、それなりの値段もするモンスター用の特殊な縄なんだよ! 私達全員の捕縛術の効果もある。解けやしないよ!」


「くだらん。」

エストが光った。



ぶちぶちと縄が切れる音がする。


あっという間にエストは、15メートルほどの大きなドラゴンの姿になった。ブローニャの街へ向かって飛んだ時よりも、ふた回りもデカい。


「え?」「は?」「ひ?」「へ?」「え?」


「ポイズンドロップ」

エストが魔法名を呟くと、2mだいの毒の雫が3滴。盗賊団の頭上に現れる。


「な、なん、」


そして雫が落ちる。

バシャッと黒いペンキを被ったような見た目になる盗賊6人。


「ぐぁぁぁ!目が!目がぁぁ!」

「ぎぁぁぁ!が、熱いぃ!痛いぃ!!」


Lv1の魔法なので、本来はそこまで即効性はないみたいだけど、エストの魔力で増幅されてるのか?

数種類の毒の詰め合わせみたいな。こわ。


「気絶するなよ? まだまだこれからだぞ。」

「ヒィッ!」


「フリーズクラッシュ」

Lv1氷魔法。氷元素で凝固した水分が、何十もの氷の礫となって6人を襲う。当たった礫は砕け散り、砕けた礫がさらに隣の者に当たる。


「ぐぼぼぼぶぶぶ!!」

「がばばばばかが!!」



一方、俺たち4人は風もおさまり、地上に降りていた。



「ふー助かったー。」

「私、もしかして死ぬかもって思った。」


「なかなか良い罠でしたね。忍者の兄さん的にはどうですか?」


「まぁまぁだ。避ける方向を誘導したのは悪くない。だが針と同時に、上から丸太などを落とすと効果的だ。穴に落としてからも追加でな。」


「まぁまぁだな。じゃなくて!罠の寸評しないでいいから!余裕すぎるでしょ2人は。」


「ホントにそうですよー。でも、おかけで助かりましたからね。ありがとうございます。」


「確かに、それはそれとしてだ。助かったよ。

ダブルウォーターバリア、カッコイイな。」


「ふふ。バリアが無くても、皆さんご自分で何とかしていた気もしますけどね。怪しいのは全員気付いてましたし。」


「さすがにな。最初から警戒はしていた。」

「ですよね。ネイノクスさん、っていうかアダートさん。昨日の市場でスリの被害にあってた人ですよね?」


「だろうなぁ。エストの言う通り、努力の方向性がしょうもないよ。」



俺たち4人が呑気に話している間も、盗賊団の6人はエストのお仕置を受けている。


今度は風で30mの高さまで打ち上げられた。


俺たちを穴から出した風の強化版か。

ウィンドアッパーという魔法らしい。

まんま上昇気流か。


魔力で身体が強化されているから、耐えられはするだろうけど、それでもあれは怖いよなぁ。


最後は雷を喰らって、気絶していた。


逆鱗というほどでは無いのにこれだ。

エストを怒せるとこうなるということを、目の当たりにする俺たち4人だった。




「あれ? そう言えば俺、針刺さったよな。」


毒などは無く、ただのブラフだった。

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