【07 勇気を出して】
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・【07 勇気を出して】
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さっき僕に悪態をついてきた男性は木陰で涼んでいた。
僕は早速勇気を持って話し掛けることにした。
「すみません、何で貴方はそんなに口が悪いんですか」
僕の声に気付き、僕のほうを向いてから、また一気にハートマークが淀んだ色になっていった。
さっきまで1人でいた時は、落ち着いた色をしていたのに。
男性は少しイラつきながら、
「ずっとナツツと一緒で仲良いでちゅねー、やっぱ狙ってんのかぁ?」
ナツツさんは口を尖らせながら、
「そういう言い方ばかり! そのうち犬や猫になってしまうぞ!」
すかさず僕はナツツさんへ、
「そうはならないですけどもっ」
とツッコんだが、男性はどんどんハートマークが濁っていった。
今、ナツツさんから変なことを言われて嫌になったのか、いや、僕は違うと思う。
もしかしたら、もしかしたらだ、
「貴方はもしかすると人を怒らせる気は全く無いんですよね?」
そう言った瞬間、男性のハートマークの色が黒ずむことを止めた。
赤と青と黒がマーブル模様になって渦巻いて見える。
僕は続ける。
「貴方はきっとこれが本当にナツツさんのような、ボケで、面白いと思って言っているんですよね。場を和ませようと」
男性のハートマークの色の割合が、徐々に赤色が増えていっている。
やっぱりそうだ、この男性に悪意なんて無かったんだ。
でもこういう言い方になる。
きっと、それは、
「そういう言い方しか知らないんですよね。そして怒ってしまった時の対処法が分からず、なおさら場を和ませようとキツイことを言ってしまう、と」
それに対してナツツさんが、
「そんなバカなことあるかぁーい! って! 私がツッコんでしまったよ!」
と言ったが、男性のハートマークの色を見れば一目瞭然だ。
男性のハートマークは落ち着いた橙色に変化した。
男性は後ろ頭をボリボリ掻きながら、こう言った。
「……そうだよ、俺はいつも和ませているつもりなんだが、何を言えばいいか正直よく分かんねぇんだ。というか周りが俺に対して怒ってんのもいつもの流れみたいで、俺はそういうことさせるキャラみたいな感じで良いように思っていたよ。でも、今、改めて俺に言いに来たことを考えるとまずかったみたいだな」
僕は1回頷いてから、そして深呼吸してから、こう言った。
「そうですね。やっぱり人に悪態をつくことはあんまり良くないですね。親しければまた違うのですが」
「いやでもさ、同じ村にいて一緒にいればもう友達みたいなもんじゃん? 同じ世界にいるんだから親しいだろ?」
それにナツツさんが首を横に振ってから、
「そんな横柄な親しいなんてないよ! 親しさは優しさ! 美味しさは水!」
僕はすかさず、
「確かに水は美味しさの根源ですけども、今言わなくていいですよっ」
とナツツさんへツッコむと、ナツツさんは嬉しそうに笑った。
それを見ていた男性が、
「そうか、そうやるとみんな笑顔になるのか。でも俺には難しそうだ。なあ、どうすればいいと思う?」
僕は少し腕を組んで考えてから、こう言ってみた。
「学校とか、教材があるといいですね。勉強するというか、誰かから教わるというか」
男性はうんうん頷きながら、
「確かに教えてくれるなら教えられたい。俺は全員と仲良くしたいんだよ」
ナツツさんも同調しながら、
「じゃあまずその学校というヤツを作ろう!」
学校を作るなんてことできるのかな、いややらなければ僕はきっと元の世界には戻れないだろう。
ならば、
「言葉の使い方とか、あと魔法を学ぶ時間も作れたらいいですね」
それに男性は唸ってから、
「それはいいなぁ! 俺は上手く魔法が使えないんだ! きっと何か使えるはずなんだ!」
「じゃあまずこの世界の大きな特性として、魔法があるので、まずは魔法を教える学校を作りましょうか」
ナツツさんは拳を強く握って、
「それいいな! じゃあ早速魔法を教えることが得意そうな人を探そう! 目隠しした状態で!」
「いやそこはもうハッキリ見える状態で探しましょうよ!」