プロローグ
はじめまして。名前は適当に変わるので○○ですとか言えないのが辛い。
ライトノベル一冊分の分量を適宜投稿する予定です。
8/31投稿開始、一話5000文字程度。
混雑が目立つ暮れの駅。
今日という日を終えようとする人々たちが行きかう中にその少女はいた。
彼女は、ただまっすぐに立っていた。
風が駅に流れ込み、彼女の髪をなびかせたが、彼女は動じることなくただ立ち続けていた。
「あぁ、逃げられないのか」
少女の表情は穏やかでありながら、微かな緊張が目元に浮かぶ。
周囲の騒がしさとは対照的に、彼女は整然としており、一切の不安を感じさせない佇まい。
「うん、仕方ないね」
少女は一人、納得だけが込めて呟いた。
その声は小さく、駅のざわめきに埋もれてしまいそうなほど。
ぐい、と、背中に強い感触が襲う。
その年相応の小柄な身体が、線路に押し込められた。
惨劇を目撃した人間の錯乱した金切り声。
災厄を前にした人の慌ただしく乱れる音。
事の運びの満足感に漏れ出す喜悦と逃げる足音。
最後に轟いたのは鼓膜を突き破るような大きなブレーキ音。
少女の体躯はあらぬ方向に身体を捻じ曲げられながら飛んでいく。
墜落、数度バウンド。バラストに点々と血の跡が刻まれる。
その一部始終を、少女ははっきりと、「感じて」いた。
大質量に全身を横殴り途方もない衝撃。
ゴムまりのように吹き飛ばされる浮遊感。
身体を擦りながらようやく止まった感触も。
意識を手放す苦痛に身を犯されて尚、その全てを彼女は『感じて』いた。
現代に存在する怪異の話を基に作品を作りました。
なので後書きでは参考にした怪異などを書けたらと思います。
ただ書き忘れることもあるのであしからず。