第9話 魔族の力
「ふたりとも、こいつは魔族だ! 気をつけろ!!」
目の前に現れた魔族は、リドールたちを値踏みするかのように見回すと言った。
「人間にしては、そこそこの魔力のようだな。ん? 後ろでうずくまっている銀髪の小僧……貴様は……」
「マリー、俺がやつの注意を引きつける。お前はラフィトを頼む」
「わかった。リドも無理しないでね」
「ああ、分かってる」
リドールは、アクセレイト《加速魔法》を発動し、魔族の死角に回り込んだ……はずだった。
「どこへ行くつもりだ?」
気がつくと、リドールは魔族に背後を取られていた。
――は、速い!!
魔族はリドールの後ろ首を掴むと、軽々と片手で岩壁に投げつけた。
「ぐはぁ!!」
「リド!」
「……来るな!」
リドールは、頭から血を流しながら、何とか立ち上がった。
――なんて強さだ……レベルが違い過ぎる!
リドールは、渾身の魔力でフレア《爆炎魔法》を放った。
魔族は、左手でバリア《防御魔法》を展開させると、空いた右手でウィンドミル《風刃魔法》を発動した。
――な……同時に2つの魔法陣だと!?
真空の刃がリドールを襲った。
――かわせないっ!
リドールは直撃をくらい、後ろへ弾け飛んだ。
「ほう。咄嗟に魔力で全身を覆い、即死を免れたか」
魔族は、リドールを見やって言った。
「なかなかの戦闘センスだ。しかし、その傷ではもはや自力では立ち上がれまい。そこで野垂れ死ぬがよい」
リドールは全身に裂傷を負い、身動きひとつ取れないようだった。
「リ…リドーっっ!!!」
マリアーナの叫び声に、ようやくヒーリング《治癒魔法》で意識を取り戻したラフィトは、うっすらと目を開けた。
まだぼやける視界に、横たわり微動だにしないリドールの姿が映った。
――リドールさん!! ま、またぼくはみんなの足手纏いに……。
「マ、マリアーナさん、ぼくのことは構いませんから、隙をみてあなただけでも逃げてください!」
マリアーナは、首を振り言った。
「そんなことできないよ。リドールだって、まだ助かるかもしれない」
「で、でも……」
マリアーナは、申し訳なさそうに目を伏せると、続けた。
「それにね、ラフィト。私、あなたに謝らなくちゃいけないんだ」
「えっ?」
「私、実はあなたのこと、見張ってたの」
「……」
「古代魔法を操る一族の生き残りなのかどうか、国に利となるか害となるか、見極めるためにトライアドに誘ったの」
マリアーナは、ラフィトをしっかりと正面から見つめて言った。
「でもあなたは、普通の男の子だった。優しくて、頑張り屋さんで、ちょっと不器用な、大切な私の仲間。こんなことに巻き込んで、本当にごめんなさい」
「そんな……ぼくの方こそ……」
「あいつと刺し違えてでも、仲間は守ってみせるから」
そう言うとマリアーナは、魔族の方へと歩み寄っていった。
次回予告:第10話 古代魔法
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