第4話 トライアド
魔法学校は、高等部から実技中心のカリキュラムが組まれている。
特に近年、魔族の襲来に備えて、トライアドと呼ばれる3人組での集団戦に力を入れて、訓練がなされている。
「それでは、これから実戦演習に向けて、トライアドを組んでもらいます。各自魔法特性やバランスを考え、3人組を作りなさい」
マリル女史はそう言うと、羊皮紙の契約書を教卓に置いた。
「トライアドは魔法契約のひとつです。組ができたら、リーダーを決め、各自がこの契約書にサインするように」
生徒たちは、それぞれ思い思いに声を掛け始めた。
多くの生徒たちは、ある程度事前に申し合わせていたらしく、次々と契約書にサインしていった。
「リド、私と組まない?」
マリアーナは、リドールの元に歩み寄りながら言った。
「リドはやめろ。もう子どもじゃないんだ」
「じゃあ、殿下? 皇太子様?」
「……リドでいい」
中等部の頃から神童とされていたふたりに、他の生徒たちは気後れするのか、なかなか声を掛けられずにいるようだった。
「リーダーは、リドに譲るね。実力的にも」
「マリー、お前だって他と組めば、どこでもリーダーになれるだろ。なんで俺と組む?」
「私、ちょっと別件で忙しいの。それにね、たぶんみんな、私たちとは組みたがらないんじゃないかな」
次々とトライアドができる中、あぶれる生徒たちもまた一定数出ていた。
「最後まで決まらなかった人たちは、魔法特性も勘案した抽選によって組決めします」
マリル女史は、クラス全体に告げた。
「あとひとりは抽選だな」
「ん? もう決めてるよ?」
マリアーナは、つかつかと教室の後ろの方へと歩いて行った。
「もうひとりのメンバー、銀髪くんでーす!」
「え!?」
「は!?」
ラフィトとリドールは、絵に描いたように同じ表情で、マリアーナを見つめた。
「だ、か、ら、私たち3人でトライアド組むの!」
「ちょっと待て、マリー! なんでよくわからん編入生と俺が……」
「だって、誰も他に声掛けて来ないじゃない」
「それはそうだが……」
「あなたも行き先ないんでしょう?」
マリアーナは、ラフィトに人懐っこい笑みを向けて言った。
「ぼ、ぼくは構いませんが、ご迷惑では?」
「大丈夫、大丈夫!」
マリアーナは、釈然としない顔のリドールなどお構いなしに続けた。
「決まりね! 私はマリアーナ、こっちの難しい顔してるのがリドール」
「よ、よろしくお願いします。ラフィトです」
リドールは、どうにでもなれと言わんばかりに首を振り、右手を軽く挙げて応えた。
次回予告:第5話 魔法実習
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お読みいただき、ありがとうございます!
もしよろしければ、この下にある評価欄にもご協力いただけると、とても励みになります!
ブックマークもいただけると、嬉しいです!
今後とも、よろしくお願いします!!