第34話 決着
「ラ……フィト……? ねえ、リド、ラフィトはどこ?」
「…………」
「ねえ! リドってば!!」
マリアーナは、泣き声になっていた。
「……あれは……もう……俺たちのラフィトじゃ……ない」
リドールは、力任せに地面を拳で殴った。
「……そんな……うそ……」
「……ラフィトは……俺たちのラフィトは……自分の体に龍神を降臨させたんだ。……俺たちを守るために」
◇◆◇◆
「懐かしい匂いだ」
龍神アレスは、空を仰ぎ見た。
「地上から見る空も、幾千年振りか……。美しいものよな」
「のう、そうは思わんか、デルムよ?」
「……貴様の郷愁に付き合っておる暇はない。何をしに来た、アレス?」
「つれないな、デルム。数千年振りの再会ぞ?」
「……ぬかせ! 貴様は、我を討伐した張本人であろうが!! そのせいで我は、暗い穴蔵のような魔界で、どれだけ辛酸を舐めたと思っておる!?」
「それは悪かったのう。ただ元はと言えば、貴様と邪神めが、地上界を独占しようとするからではないか」
「ふん、なぜ脆弱な人間どもに、このような恵まれた場所を渡さねばならぬ? 我こそが地上界の主に相応しい」
「変わらんな、貴様も。人間は、そう捨てたものでもないぞ? まあよい。して、これからどうする? 大人しく魔界に帰るなら、今回のことは不問にしてやっても良いぞ?」
「我が、地上に再び顕現できる日を、どれだけ待ち望んだと思っておる? 二度と魔界へなど戻る気はないわ!」
「そうか。では致し方あるまい。力づくで退場してもらうことになるが?」
「……負けぬと自信があるようだな!」
「勝てるとでも思っているのか?」
◇◆◇◆
魔神と龍神の戦闘が始まった。
目の前で展開される神々の争いは、まさしく神代の戦の再現であった。
リドールとマリアーナは、次元の違う戦いを、ただ見つめることしかできなかった。
マリアーナが呟いた。
「こんなの、どっちが勝っても、ラフィトは戻って来ない……」
マリアーナは、意を決したようにリドールに何かを告げた。
リドールは、一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔になり、言った。
「お前はいつもブレないな、マリー。よし、やろう!!」
◇◆◇◆
戦況は、徐々に龍神に傾いているようだった。
「デルムよ、わしもあまり長く地上界におるわけにはいかんのでな。悪いが、再会の宴も幕引きだ」
そう言うとアレスは、腰の刀を抜いた。
デルムの顔色が変わった。
「……神刀メギア……!」
「貴様が完全復活しておったなら、もう少し楽しめたかもしれんがな」
「……魔界に帰るがよい!!」
アレスが刀を振り抜くと、デルムは構えた大剣を両断され、切られた胴体の傷口から、大量の魔素を霧上に噴出させた。
「ぐあぁぁぁ………! おのれアレスよ!! 貴様だけは、決して……」
デルムは、跡形もなく消えていった。
次回予告:第35話 最終話 大戦の終わりに
(明日8/22、17時頃に掲載予定です。)
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