第31話 死闘
リドールは、グランヌスを構えた。
「その刀身、纏う黄金の炎……」
「……貴様、その剣をどうやって手に入れた?」
「さあな!!」
リドールはデルムに飛びかかり、グランヌスを振り抜いた。
デルムは腰に備えた大剣を抜き、グランヌスの初太刀を正面から受け止めた。
「グッ……!」
デルムが片膝をついた。
「うおぉぉー!!」
リドールは、今度は渾身の力で、横に薙ぎ払った。
デルムは、大剣の柄で受け直撃を避けたが、体ごと横に飛ばされた。
「……ムゥ!」
リドールは、肩で息をしながら、グランヌスを再び構え直した。
「体が悲鳴を上げておるようだな。貴様はその剣の正体を知っておるのか?」
「正体? これは叔父上から教わった、剣魔法で顕現させたものだ」
「顕現、とな。その魔法は、正確には召喚魔法だ」
「……召喚?」
「そうだ。そしてその剣は、古代五大神のひとり、闘神バハメトの愛剣グランヌスだ」
「闘神バハメト……」
「つまり、だ。人間に扱えるような代物ではない、ということだ。余はこうして捌いておるだけで、貴様の魂は、どんどんその剣に喰われていく」
「……そうか。でも、そんなことは承知の上だ!」
リドールは、グランヌスを振りかぶり、連撃に出た。
剣と剣が、激しい衝突音を響かせた。
――あと少し……あと少しもってくれ!
リドールは、一方的に攻め立てた。
しかし、なかなかデルムの防御を崩すことはできなかった。
「ぐはっっ!」
限界が先に来た。
リドールは口から吐血し、膝を折った。
「ばかめ、自滅しおって! だが、人間にしてはよくやったと褒めてやろう。これで終わりだ!!」
デルムが、大剣を振り下ろした。
「スピリットベイル《精霊の衣》!」
光の障壁がリドールを包んだ。
デルムの大剣は、光の障壁に弾かれた。
「私もいるって、忘れてない?」
マリアーナが、杖を構えて言った。
「……その杖……。精霊魔法、か。目障りなことを……」
その時だった。
詠唱準備を終えたラフィトが叫んだ。
「お二人とも、魔神デルムから離れてください!!」
リドールとマリアーナは、飛び退いて回避体制を取った。
デルムの周りに、無数の魔法陣が、檻のように配置された。
「くっ……龍神の末裔め、何か狙っておるとは思っておったが、これは……出れん!」
「龍神魔法……イーラ《龍神の怒り》!!」
魔法陣が、一斉にまばゆく煌めいた。無数の閃光の矢が、檻の中を駆け巡った。
「グ、グオオおおお!!!」
ラフィトは、右手を前に差し出すと、開いた手を強く握った。
その合図と共に、魔法陣の檻が縮小し、大爆発した。
周囲には、轟音が響き渡り、爆風が駆け抜けた。
大気が震えていた。
土煙が、上空高くまで昇っていた。
離れて地面に伏せていたリドールとマリアーナは、空気の振動が収まると、ようやく顔を上げ、付近を見渡した。
「……す、すごい……」
デルムのいた辺りの地面は、すり鉢状にえぐれ、焦土と化していた。
次回予告:第32話 神々の因縁
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