第3話 公爵令嬢マリアーナ
ラフィトが自己紹介で登壇した時、マリアーナは、彼を瞬きひとつせずに見つめていた。
――銀の髪の毛に、銀の瞳……。
あの子が……。
魔法師団長も務めるセシウス公爵の令嬢マリアーナは、幼い頃から父に魔法指南を受けてきたサラブレッドだ。
きれいな栗色の髪に、赤い瞳を持った美少女で、リドール王子とは幼馴染であり、師を同じくする同門でもある。
◇◆◇◆
マリアーナの父セシウスは、国王ラウルスとは竹馬の友であり、良き相談役でもあった。
ラウルスは、近年の外界における魔族の侵攻を大変憂慮しており、結界の強化、維持について、幾度となくセシウスと議論を交わしていた。
「セシウス、これ以上の結界強化は、困難なのだな」
「その通りです。国祖様が結界を張られた際、古代魔法を操る一族の助けがあったと聞きます。しかし今や、古代魔法の土台に、これ以上現代魔法を重ね掛けすることは難しいかと」
ラウルスは、深いため息をついた。
古代魔法を操る銀髪の一族は、元は国祖と対をなす王族の一員であった。
結界の構築を最後に表舞台から姿を消し、数百年の歳月になる。
今や、銀髪の一族の存在について知るものはほとんどおらず、古代魔法もまた、失われた過去の遺物として、おとぎ話で語られる代物となっていた。
「セシウスよ、そなたにしか頼めぬ命がある」
「いかなることでも」
「何としても、銀髪の一族の生き残りを探してくれ。まだ血が絶えておらねば良いのだが……」
セシウスは、信頼のおける部下だけを用いて、隠密に捜索を進めた。
ラウルスによると、国祖の時代に袂をわかったもうひとつの王族の生き残りがいるとなれば、国を分断する火種となりかねない、とのことだ。
加えて、古代魔法には謎も多く、まさに劇薬とも言えた。
◇◆◇◆
かくして数年後、セシウスはようやくひとりの少年を、辺境の地で見つけることとなった。
銀髪銀眼の15になる少年で、名はラフィトといった。
「いかがいたしましょう、国王陛下」
「魔法学校へ編入させ、真偽を見極めよ」
「かしこまりました」
セシウスは、愛娘のマリアーナに事情を話した上、密命を与えた。
銀髪の編入生の動向を注視せよ、と。
「承知いたしました、お父様。その者が国に益をもたらす器か否か、私の目で見極めます」
次回予告:第4話 トライアド
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