第27話 覇王剣グランヌス
「マリー、身体強化を頼む!」
「オーケー!」
リドールとラームの攻防は、互いに一歩も引かない乱打戦となった。
魔剣同士がぶつかる度に、轟音と空気の震えが周囲に拡がった。
――くっ! 何とかマリーの身体強化で持ち堪えているが、やはり魔剣に力をもっていかれる……。このまま長引くとまずい……!
「どうした? 剣撃が弱くなってきておるぞ!」
次第にリドールが押し込まれるようになっていった。
「リド!!」
「そろそろ幕引きだ!」
ラームは、魔剣アグニを天にかざすと、詠唱を始めた。
頭上には魔法陣が展開された。
「奥義……青龍炎!!」
魔法陣から放たれた青い炎の龍が、魔剣アグニを覆った。
ラームは、渾身の剣撃をリドールの頭に振り下ろした。
――まずい! これは躱せない!!
地面が震えるほどの爆音と、身を焦がすような熱波が周囲を包んだ。
◇◆◇◆
「……!? 何だとっ……!!」
ラームの前に、魔剣アグニを光る杖で受け止めているマリアーナがいた。
「……マ、マリー!!」
「……リ、リド……大…丈夫……?」
「お、お前……」
ラームが、驚愕の表情で言った。
「ば……ばかな! 我が奥義で砕けぬなど……。その杖は一体……?」
「リド、少し……休ませてね……」
マリアーナはそう言うと、リドールの方にもたれるように、倒れ込んだ。
「マ、マリー! しっかりしろ!!」
リドールは、マリアーナを抱きかかえて叫んだ。
「くっ……しぶといやつらめ! 今度こそ灰にしてくれる!」
ラームは、再び魔剣アグニを振り上げた。
「……おい、いい加減にしろよ……!」
――なんだ!? この気配は……。
ラームは、リドールの怒気をはらんだ声に気圧されて、思わず数歩退いた。
「お前は、誰を傷付けたのか、わかっているのか?」
リドールは、マリアーナをそっと横たえると、ラームの方に向き直った。
――叔父上、すみません……。禁を破ります。
リドールは、詠唱を始めた。
頭上には、二重の魔法陣が展開された。
「剣魔法奥義……顕現せよ、覇王剣グランヌス!!」
リドールは、魔法陣から黄金の炎を纏った大剣を抜き取った。
「……な、何だこの桁違いのエネルギーは!?」
「貴様だけは許さん! 剣魔法奥義、とくと味わえ!!」
「天炎斬!!!」
リドールは、覇王剣グランヌスを振り抜いた。黄金の炎が渦巻き、空間が歪んだ。
地鳴りの様な轟音が、周囲に響き渡った。
「ガァァァ……!」
炎の渦が収まると、ラームは跡形もなく消失していた。
◇◆◇◆
「マリー、しっかりしろ!」
リドールのヒーリング《治癒魔法》で、マリアーナは意識を取り戻した。
「……リド?」
「……よかった。気分は悪くないか?」
「う……ん、大丈夫みたい。ありがとう、リド。戦いは?」
「お前のおかげで、勝てたよ………」
そこまで言うと、リドールは崩れ落ちるように倒れた。
「リド!? リドー!!」
次回予告:第28話 魔王 VS ラフィト
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