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第21話 魔王ベルセウス

「ダムランドに放った先遣隊は、まだ報告を寄越さんのか?」



 魔王ベルセウスは、苛立ちを隠さずに言った。



「も、申し訳ございません。いまだ何も……」



 側近のひとりが、震える声で答えた。

 


 腹心ガオラスを隊長とした先遣隊が、ダムランドに向けて本陣を出たのは、1ヶ月以上も前のことであった。

 


――先日、ダムランドの方角から、妙な気配がしたな……。あれ依頼、ガオラスとの連絡も途絶えておる。やつめ、よもやしくじりおったか……!



 魔王ベルセウスは、側近に命じた。



「三鬼将をここに集めろ! 急げ!」

「はっ!」



 ◇◆◇◆



「魔王様、三鬼将、召集に応じまかりこしました」


 

 翌日、魔王の眼前には、世界各地に散っていた三大将軍、黒炎鬼バルト、白氷鬼ドムル、魔剣鬼ラーム、が跪いていた。


 

「よく来た、三鬼将よ」



 魔王ベルセウスは、王座に腰を降ろし言った。



「貴様ら三大将軍を、一同に集めざるを得ない問題が起こった」



「地上界の制圧が順調に進む中、北方の小国、魔法国家ダムランドに向かわせておったガオラスが、結界内への進入に目処が立ったとの連絡を最後に、突如消息を断った」



「……なんと!!」

「我ら三鬼将に次ぐ実力者であった、ガオラス殿が……」



「信じがたいことだが、事実だ。魔法国家とはいえ、所詮は人間の、と侮っておったわ」



「……して、魔王様、いかがなさいますか?」



「三鬼将よ、他の地域の制圧には、あとどれくらい必要だ?」



「1年あれば事足りるかと」 



「……遅いな。半年で何とかしろ。半年後、お前たち三鬼将を含め、全戦力でダムランドへ侵攻する」

「承知!!」



 ◇◆◇◆



 三鬼将がそれぞれの任地へと去った後、魔王ベルセウスは、ひとり思案に耽っていた。



――ダムランドの結界は、人間のものとは思えぬ強度であったが、もはや寿命が近いとの報告であった。全軍で押し切れば問題なかろう。問題は……。



――あの妙な気配は何であったのか……。



 その時、魔王ベルセウスの首に掛けてある宝玉が、妖しく光った。



『ベルセウスよ……』



『……魔神デルム様! いかがなさいました?』



『地上界の征服に、何か問題でも起こったか?』



『……いえ、ご心配には及びません! 些事にごさいますれば……』



『ベルセウスよ……分かっておろうな。余の復活まで、いましばらく時間を要す。それまでに、万事整えておけ。失態は許さん……』



『ぎ、御意のままに……』



 宝玉は、光を失っていた。



 魔王ベルセウスは、額の汗を拭って言った。



「ダムランドよ、半年後、わしがじきじきに叩き潰してくれよう!」

次回予告:第22話 開戦


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