第15話 それぞれの道
魔族の先遣隊の残党は、セシウス魔法師団長の的確な指揮の元、迅速に殲滅された。
討伐軍は任務を終え、一旦解散となった。
ラフィトは、結界の修復にあたるため、セシウスと共にしばらく戦地に留まることになった。
リドールとマリアーナは、ラウルスと共に、ひとまず王都ルグナールに戻ることにした。
魔法学校から派遣された他のトライアドも、皆無事に帰校の途についた、とのことであった。
◇◆◇◆
王都に着くとリドールは、マリアーナに言った。
「俺は、南部の山奥に住む叔父上に、剣魔法を指南してもらおうと思う」
「剣聖デンケル様、か。まあそうなるよね」
「ああ。腕前という点では、圧倒的だからな。ただ……」
剣聖デンケルは、国王ラウルスの実弟で、比肩する者なしと謳われた、剣の達人であった。
魔法においても、セシウス魔法師団長にすら並ぶ実力の持ち主で、デンケルの扱う剣魔法は、魔族でさえ一刀両断すると噂された。
ただ、国政や権力には全くの無関心なのか、若年早々に王都を離れ、僻地の山奥に篭って魔法研究に没頭している、変わり者でもあった。
幼い頃からリドールにとって、叔父はどこかしら近寄り難い、異質な存在であった。
「俺は明日、叔父上の元に発つ。マリー、お前はこれからどうするんだ?」
「うーん…私はね、王都で用事を済ませたら、一旦魔法学校に戻るつもり」
「魔法学校に?」
「少し考えていることがあるの」
「そうか。皆によろしく伝えておいてくれ」
「うん。半年後にまたね」
「ああ。お互い、がんばろう」
◇◆◇◆
リドールは翌日、剣聖デンケルの元へ向け、王都を出発した。
馬で丸2日南下し、その後、徒歩で1日かけて山道を登った。
ようやく見覚えのある山小屋が見えてきた頃には、夕日が山の稜線を赤く染めていた。
――5年振りになるのか……。
リドールは、滝のほとりに建つ小屋の入り口に着くと、息を整えて扉をノックしようとした。
すると、ギィという音とともに、扉がひとりでに開いた。
「よく来たな、リド坊」
◇◆◇◆
「叔父上、お久しぶりです」
中に入って、リドールは愕然とした。
そこには、痩せ細り生気を失ったデンケルが、ベッドに横たわっていた。
剣聖と謳われたかつての面影は、もうどこにもなかった。
「がっかりしただろう?」
デンケルは、体を起こし、静かな声で言った。
「これが剣聖のなれの果てだ」
次回予告:第16話 剣聖デンケル
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