第12話 銀髪の一族
「僕たち一族は、国祖様によってダムランドが建国されるよりもはるか昔から、この地に住む先住民でした」
◇◆◇◆
ラフィトによれば、今から400年ほど前、大陸から移民を引き連れて、オスベルという男がこの地にやってきた。
大陸では文明の発達に伴い、精霊信仰が急速に失われつつあった。
人々は精霊の加護によって魔法を行使していたため、大陸からは魔法もまた姿を消しつつあった。
オスベルはこのような事態を重く捉え、新天地にて精霊信仰を復興し、新たな魔法国家の建国を目指した。
志を同じくする民を従え、大陸を離れ、精霊の湖がある北の離島に移り住んだ。
新天地には、銀髪の先住民がいた。
彼らは、オスベルたち移民を快く受け入れた。
オスベルたちもまた、新天地での生活を指南してくれる彼らに、敬意を持って接した。
数年の後、新天地での生活は軌道に乗り始め、人口も安定的に増加してきた。
オスベルは、かねてからの願いであった、新国家の設立に着手した。
精霊信仰を基盤とした、魔法国家の建設だった。
国を興すにあたり、オスベルは銀髪の一族に敬意を払い、王族として迎え入れた。
そして、彼らの持つ不思議な力を借りて、国全体を巨大な結界で覆い、外界との接触を絶った。
初代の王となったオスベルは、自らを国祖と名乗り、国名をダムランドと定め、精霊の湖の東方の肥沃な土地に、王都ルグナールを建設した。
◇◆◇◆
「ここまでは、皆さんの知る建国史と、概ね同様ではないでしょうか?」
「そうだな。銀髪の一族のくだり以外は、だが」
「そうね」
ラフィトは、軽く頷くと続けた。
◇◆◇◆
建国後、しばらくは平穏な時が続いた。
しかし、世の常か、いつしか王族の中にはいくつかの派閥が生まれた。
中でも、精霊至上主義の強硬派たちは、不思議な力を持つ銀髪の一族を敵視するようになった。
そしてとうとう、銀髪の一族が国家の転覆を図っている、という罪状をでっち上げ、民衆にも流布した。
争いを好まない銀髪の一族は、自らオスベルに左遷を申し出た。
国祖オスベルは、政争の火種となりつつある銀髪の一族を、断腸の思いで辺境地帯へと追放した。
◇◆◇◆
「そんな…ひどすぎるよ!」
マリアーナは、思わず叫んだ。
そして、はっとしてリドールを見た。
「気を使わなくてもいい」
リドールは、顔をしかめて言った。
「王族の俺でも虫酸がはしる」
「でも、必然だったのかもしれません。実際のところ、僕たちの使う魔法は、明らかに異質ですから。畏怖と迫害は、紙一重のものです」
「それで…あの魔法って、一体何なの? ラフィトの姿も、普段と違ってたみたいだけど」
ラフィトは少し逡巡した後、意を決したように言った。
「ぼくの使用した魔法は、遥か太古、神代の魔法です」
「え!?」
「僕たち銀髪の一族は、古代神のひとりである龍神の末裔です」
その時、慌ただしくテントの天幕が開いた。
「リドール殿下、セシウス魔法師団長がお呼びです。至急、大本営までお越しください」
次回予告:第13話 防護結界
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