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現実主義者はチートを拒絶する  作者: INGing
1章 死なない様に頑張る
6/7

勝ち取るとはこう言う事


「『あの、さっきからずっと思っていたんですが。言語を覚えるまで保護して、その後に自活して貰うってのはダメなんですか?』」


「『……あっ』」



 信じてたぜー!!クラウド君よぉーーー!!


 そう、最初は保護するしないの話だったのにいつの間にか殺す殺さないの話にすり替わっていた。

 もちろんそう誘導したのはオレだ、何故って?最終的にこの弛緩した空気に持ってきたかったからだよ!


 素直に「言語を覚えるまで保護して下さい」ってお願いしても王様はもちろん、少しの間ならと宰相も賛成してくれただろうよ。

 だが他の貴族は?と聞かれたらそれは分からない、なにせ誰もオレがどんな人間か知らないんだもん。

 きっと無理を押し通しても、反対派の人達は「しばらくと言いつつ、ずっと世話して貰うつもりなのでは?」とか心中で思ったままだろうさ。

 そんな針のむしろ状態で世話になるなんて、オレのストレスがマッハになる。


 もちろん言語は覚えるつもりだが、そんなケツを叩かれながらなんて真っ平ごめんだ。


 そのまま殺されてしまう可能性も僅かながらあったが、クラウド君を見たとき確信したね。

 ああ、この子が居れば最終的には軌道修正してくれるだろうと。

 後は権謀術数渦巻く世界で生きてきた貴族のやつら、オレなんかの小賢しい策が通用するか心配だったがその為の身の上話。

 しなくても問題ないのにわざわざしたのは、貴族達に「ああ、コイツは本当に死んでも構わないと思っている」と思わせるため。


 死にたく無いに決まってるだろ、ばーか!!


 他の転生者はどう思っているかは知らんが、オレはコイツ等が大っ嫌いだ。

 だってそうだろう?人類滅亡の危機だが何だか知らんが、そんなのお前らの世界の話だろって。

 異世界の人間を喚んで戦わせるとか、アホかと。


 自分の都合で喚びだす……しかもそれも不完全な魔術、危うく大量の()()を喚びだす所を女神様がケツ拭いたんだ。

 それに気付かず、面倒を見てやるだ自活しろだ一体何様だって話。


 オレが感謝するのは女神様だけ!!


 ……まぁ、その女神様の為にって言うなら少しは力を貸すのも吝かでは無いことも僅かながらにはあるかも知れないが?


 何はともあれ、クラウド君のおかげで交渉は上手い事いきそうだ。

 さっきまで沈痛な表情をしていた奴らも、軽く頭を抑え「何でそれに気づかなかった」みたいな表情している。


 うんうん。

 そうやってマトモな思考が出来ないよう、拙いながらも頑張って感情を煽ったからね。

 これは、オレの勝ちって事でいいかな?



「『……と、言う訳で良いかな?ケンイチ殿』」



 騎士からの拘束から開放され、再び王様の元へと跪く。

 通訳は変わらず黒髪ちゃんだ、あれからすぐに泣きやんだが羞恥のせいか顔は真っ赤だ。



「『そなたには未練など無いと言うが、やはり我々の心情としては生きていて欲しい』」



 その言葉に辺りを見渡すと、先程まで反対派だった貴族達もウンウンと頷いている。

 ……そこで激しく頷いてるお前、反対派の急先鋒じゃなかったか?まぁ、いいけど。



「『有り難き……お言葉、この卑賤な身には勿体のうございます……』」



 オレは感極まったような表情をし、敢えて言葉を詰まらせる様に話す。

 はなし終えた後、顔を伏せて肩を僅かに震わせた。

 周りからみたら、どう見ても泣いてる様にしか見えない。


 まぁ……泣いてませんけど、寧ろ舌出してますけど。


 角度的には誰からも見えないだろうし、これくらいは許して欲しい。

 これからしばらく大っ嫌いなコイツらにへーこらしながら生活しなきゃならないんだ。


 これにて交渉終了、先ずは最初に死なない環境を手に入れた。

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