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現実主義者はチートを拒絶する  作者: INGing
1章 死なない様に頑張る
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決死の交渉

 オレの今すぐ殺せ発言に、通訳してくれてた黒髪ちゃんから悲鳴のような声が上がる。

 後ろから聞こえて来る、転生者たちからも似たような声。


 相対している王様と言えば、声は出してないが目を見開いて驚愕の表情を浮かべている。



「『何をバカな事を……』」


「『何の力も持たない卑賤な身、ただ生きているだけでも迷惑を掛けてしまいましょう』」


「『迷惑等と……』」


「『衣服・食事・住居、私に掛かるそれらの費用。面倒見るとは、つまり民から頂いた税金でそれらを賄うという事です』」



 ここで宰相の眉がピクリと動く、彼が消極的反対なのはここらが原因だろう。

 王様の代わりに実務を行っている身としては、貴重な血税を何の役にも立たない人間の為に浪費したくないと。

 おおっぴらに反対しないのは、オレの命と金を天秤に掛けた時にやや金くらいの傾きだったからか。

 オレは分かってますよ?もし生きていたとしても貴方に迷惑かけませんよ?と、宰相にアピールする事で天秤に乗った金の量を減らしてやる。


 これで宰相はやや賛成に傾いてくれた、あとは。



「『それに先程の……』」



 と「生き返らせてやった」発言した貴族へと顔を向ける、オレの視線を受けてビクリとしたが気にせず笑顔を向ける。



「『あちらの閣下の仰る通り、私は一度死んだ身。こうして、一度生き返らせて頂いただけで満足でございます』」



 先程は他の貴族から「人の心は無いのか」とまで言われていたのだ、表情には出ていないが自分の意見を真っ向から否定されて憤慨しているだろう。

 なのでオレは逆に「貴方は正しい」と、真っ向から肯定してやる。


 人には否定されると反発したくなる心情がある、特に熱く議論を交わしていると更にムキになってしまうものだ。

 その逆にこうして落ち着いた時に肯定してやると「本当に自分は正しかったのか」と自問自答するようになる、特に自分でも酷い事を言ったと自覚しているならなおさらだ。


 当の本人から更に酷い「殺せ」発言プラスまさかの全肯定、今頃は内心で言い過ぎたかと自戒しているだろう……表情も何処か慌てているように見える。


 これで反対派の人間も消極的反対まで持ってこれた、次は……



「『そうは言っても、すぐに死んでしまっては何の意味も無いではないか』」


「『お言葉ですが、そうとも限りません。と言うのも……』」



 オレは前世での出来事を語る、具体的は両親が亡くなった後の苦労話をだ。


 不慮の事故で両親を亡くし、幼い弟の面倒を見ながら泥水を飲み草を食んで生きる生活。

 コチラの世界ではありふれた話かもしれないが、後ろで聞いていた転生者からチラホラと啜り泣く声が聞こえた。


 上手く感情移入してもらえたようだ、これでもうオレの事は殺せない。


 なぜなら、必ず転生者が反発するからだ。

 王様に限らず転生者に協力して貰えないとこの世界の()は困るだろう、ただでさえ異世界に助けを求める程に困窮しているのだから。


 まぁ……宰相の目も赤くなって、目の端に涙を浮かべているの想定外だが。

 以外と人情派なんだと、少し笑みを浮かべる。


 その後、順風満帆とは言えないまでも会社を起こしシンヤを保護したとこまで話す。



「『ぐすっ……そして私は思い出せたのです、事業を任す事の出来る優秀な……ぐすっ……弟がいて……ぐすっ……右腕が居て……ぐすっ……未練無く逝ける……わ、私は……幸せ者だと……ケンイチさぁぁん!!』」



 翻訳を任せていた黒髪ちゃんが、ついに感極まったのか急に抱きついてきた。


 おいおい、この子チョロ過ぎないか?


 わざと感情を煽るような話し方をしたとはいえ、ここまで移入しちゃうかね?

 絶対に詐欺とかに引っかかるタイプだわ、心配だなぁ。

 黒髪ちゃんが小柄なせいもあって、ついつい子供を宥める様に頭を軽くポンポンとしてしまう。


 オレの話を聞き終わった王様は目を瞑り、軽く上を向いて何かを堪えているようだ。

 もしくは今、心中でどうするべきか葛藤しているのかもしれない。


 そうなったらこっちのモノだ。



「『……本当に、それしか方法は無いのだろうか』」



 王様は、目を閉じたまま小さく呟く。



「『はい、私はここで死んでも悔いはありません。もちろん、恨みも……』」



 オレのキッパリとした言葉に、周囲にはどんよりとした空気が流れる。

 辺りを見渡すと、先程まで断固反対していた貴族も「何か無いのか」と思案していそうな顔だ。

 転生者の方も見てみると、一人を除いて沈痛な表情をしている。



「『あい、わかった。そなたの望みを叶えよう……って、ダメです王様!!』」



 ゆっくりと目を開いた王様は、その右手を挙げると騎士へと合図する。

 黒髪ちゃんは必死になって王様へ嘆願しているが、そうしている内に二人の騎士が両腕を抑え処刑場へと連れて行こうとする。



「『まって……待って下さい!!』」



 黒髪ちゃんが必死になって騎士を止めようとするが、王様の命令には逆らえない騎士には効果がない。

 ついぞ連行されていくオレを見送るしか出来なくなった黒髪ちゃん、その場に項垂れて泣きじゃくるしか出来ない。



 ……そこへ待ったを掛ける一人の男が居た。

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