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現実主義者はチートを拒絶する  作者: INGing
1章 死なない様に頑張る
4/7

交渉スタート

 いや、まぁ分かってはいた。


 言葉が分からないのに文字が読めるわけないよな、そのせいでこの石板が何の用途を持っているのかもサッパリなのは辛いが。



『…………、…………!』



 声を掛けられ、そちらに振り向くと顔を真っ青にした王様の姿が見えた。

 オレはその理由が分からず、首を傾げたあと転生者たちの方も振り返った。


 うん、みんな青褪めてるね。

 あれだけ赤髪に挑発されても表情一つ変えなかったクラウド君すら、その隣にいた赤髪すら口を開いて驚愕している。



『……!…………、…………!』


「『は、はい。では私が……』」



 王様が転生者に向けて声を掛けると、その中から黒髪黒目の小柄な少女が出てきた。



「『ケンイチさん、今から私が事情を説明いたします』」


「あれ、何でオレの名前知ってんの?知り合いだっけ?」



 こんな可愛らしい子、前世に知り合いにいたかなと思い出そうとするが……そう言えば容姿は変わってるかもしれないと思い出し、それ以上は考えるのを止めた。



「『いえ、私を含めて先程皆さんが触った石板は”ステータスボード”と言う魔道具でして……』」



 つまりは鑑定を持っていない者が自分のステータスを確認する為の物であり、ひいては他者のステータスも覗き見する事が可能になると言う物だそう。

 あー、それでオレの名前も知ったわけか。


 それってプライバシーの侵害じゃね?ってか、さらりと個人情報漏洩しまくってますね?

 と考えたが、そもそもそんな権利をこっちの世界が尊重してくれるとも思えない。

 それにオレは何の力も持ってないから、知られたところで名前くらい問題ない。


 だが、どうやら何も無いのが問題だったらしく。



「『私達はこちらに来る前、女神様にあって様々な恩恵を頂きました。それがケンイチさんには無いと言う事は……』」


「ああ、なるほど」



 恐らく、オレは女神様に会ってないのでは?それはつまり儀式の不手際があって、全く関係の無い人間を召喚してしまったのではないか?

 王様が青褪めてた理由はこれだろう、転生者達はどう思ったのかは知らない。



「『転生3種の神器ともいえるスキル、それも言語すら持っていない人間がこれからどう生きていけばいいのやら……』」



 ああ、それが理由か。


 確かに不慣れな世界で、言葉が分からないなんて何をどうすればいいか不安になるよな。

 オレは身一つで外国へと旅立った知り合いが居るのでそこまで不安にはならない、本人曰く「言葉が通じなくてジェスチャーだけでも何とかなるもんさ、それに切羽詰まれば言葉くらいすぐに覚えられる」と言っていた。

 別に今すぐ放り出されても、かなり苦労はするだろうが何とかやっていける自信はある。

 両親が亡くなったあと、雇って貰えるまで川の水と野草だけで生活した経験もあるしな。


 まぁ、今回はそこまでするつもりはないけど。



「ところで、今こっちの世界の人達は何を話してる?」



 オレが説明を受けてる間にも、王様やその近くにいる貴族らしい人たちはガヤガヤと何か話していた。



「『えーっと、ケンイチさんのこれからの処遇について……です』」



 尻すぼみな感じで教えてくれるけど、何か変な事でも話してるのかな?

 大変かもしれないけど、一言一句違わずに教えてくれと頼んだら「わ、わかりました」と了承してくれた。



『まさか、何の力も持たない者が召喚されるとは』


『つまりは英霊ではないと』


『そうなる。つまりは、儀式に何らかの不手際があったと』


『これは問題ですぞ、直ちに保護して我々で面倒を見ませんと』


『いや、英霊ではないといえ異世界で死んだ者。我々はそれを生き返らせてやっただけで、それを不手際と言うのは如何かと。自活させればいいのでは?』


『何をいう!戦う為のスキルも無く、およそ子供並みのステータスしかないのだぞ?』


『ですが、それが異世界では一般的なのでしょう?ならばどうにかするのでは?』


『貴様、人の心は無いのか?!』


『ありますとも。だからこそ、いい大人なのだから自活させては?と申しておる』



 喧々諤々。


 生き返ったのはお前らの魔術のおかげじゃ無くて、女神様の慈悲だよバーカ!と、言いたくなるのをグッと堪える。

 他の転生者達もそれは分かってる筈なのに何も言わない所を見ると、波風立てたく無いのだろう。

 赤髪ですらそうなのだ、オレだってそう思う。


 ざっと見た感じ王様は保護するに賛成派、宰相っぽい人は消極的反対派。

 あとの貴族は半々、と言ったところか。


 王様が反対派だったらどうしようもなかったが、これならどうにかなりそうだ。



「すまないが、これからオレが言う事を皆に伝えてくれないか?」


「『え?あ、はい……それは構いませんが』」



 黒髪ちゃんに了承を貰ったので、彼女の口を借りてこちらの世界の人と会話する。

 王様の前まで二人で向かい、恭しく頭を垂れることでこちらに注目させた。


 さぁ、交渉スタートだ。



「『お初にお目に掛かります、ケンイチと申します。挨拶が遅れてしまい、大変な失礼をいたしました』」


「『よい。言葉が分からなかったのだ、失礼だなんて思わんよ』」


「『有り難きお言葉、寛大なお心に感謝いたします。つきましては私の処遇におきましては……』」


「『うむ、それについては心配せずとも良い。そなたを喚んだのは我らの都合、生活の面倒はコチラで見る』」



 先程の議論ではまだ結論までいってなかったが、王様がこう言うなら宰相以下誰も反対は出来ない。

 先程まで反対派だった貴族も、異を唱える事は無い……が、それと心中どう思っているかは無関係だ。

 この場に居る者全てが、最低でも消極的賛成くらいまで持っていかないとこの先は無い。


 なので……



「『いえ、この場ですぐに首を刎ねて頂きたく存じます……って、ちょっとケンイチさん!』」


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