試験開始
「よろしくね、柊木さん」
試験のペアとなった柊木さんに一応挨拶をする。
「話しかけないで、ゴミ。試験で私の足を引っ張ったら殺すから」
「あ、はい」
そんなボロクソ言わなくてもいいじゃん。
怖かったよ、殺すって言ったときの目。
◆◇◆◇◆◇
試験会場となるダンジョンはEランクのダンジョンだ。
合格するには、ボスの魔石を回収し提出すること。
「今からそれぞれにダンジョンの場所の地図とダンジョン内のマップを渡すからな」
そう言われて先生に二つの地図を渡される。
渡された地図を見る。
あれ?ここってEランクダンジョンだったけ。
確か、Cランクじゃ……。
「何、止まってるの。ゴミはまともに歩くこともできないの?」
立ち止まって考えていたら柊木さんに怒られた。
まあ、いっか。俺にとっては、EもCも変わらん。
「あいあい」
◆◇◆◇◆◇
前から道いっぱいのゴーレムが迫る。
「はあっ」
ゴーレムは力は強いが動きは遅い。
だから、攻撃される前に胸辺りにある核を破壊する。
そして、すぐにその場から引く。
ゴーレムはCランクダンジョンのモンスター。
しかも、ゴーレムだけでなく異様に近接攻撃に強い奴ばかり。
ここは、魔術師とか遠距離攻撃を持っているジョブが入るとこだろ。
やっぱりこれ、誰かが仕組んだな。
先生気づかなかったのかな?
目的は俺か、柊木さんか。
いや、二人同時に消したかったかもしれないな。
「柊木さん、大丈夫?」
ゴーレムを全て倒し終えて、その場に座り込んでいる柊木さんに手を差し出す。
「……」
しかし、柊木さんは俯いていて何かを呟いている。
「柊木さん?」
「何よ。もしかして嘲笑ってる?それもそうね。粋がっていたくせに自分の力が通用しないとなれば戦うことを止め、自分が見下していた奴に助けられる」
何故か、柊木さんが自嘲気味になっている。
「お、落ち着いて」
「落ち着けないわよ!?こんなに自分に才能がないことを思い知らされて!」
ヤバい。面倒だ。
話が前に進まない。
「怖いの?」
「……は?怖いに決まってるでしょ!Eランクダンジョンがこんなにレベルが高いとか知らなかった!私たちこのままじゃ、死んじゃ――」
「大丈夫、俺がいるからには誰も死なせない」
俺は安心させるように言う。
「あなたなんかに何ができるの?確かに私よりかは強いみたいだけど……」
あー、もうグダグダうるせぇ。
「黙ってついて来い!こっちには一日分の水と食料しかねぇんだ!とっとと合格して帰るぞ!補習なんかしたくねぇ!」
ヤベ、キレちゃった。
柊木さん、絶対怒ってるだろ。
俺は柊木さんの表情を伺う。
「は、はぃ」
あれ?全然怒ってない。
というか、顔が赤くなってて……なんで?
◆◇◆◇◆◇
「よし、ボス部屋到着」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
ノンストップで来たため、柊木さんが結構疲れてるな。
少し休憩を挟もう。
「ねぇ、佐木島」
「何?」
いつの間にか、ゴミから佐木島にランクアップした。嬉しくないな。だってマイナスからゼロになっただけだし。
「ここって本当にEランクなの?」
やっぱり気づくか。
まあ、当然か。
ここは、真実を話した方がいいかな。
まあ、考えるの面倒だから話しちゃえ。
「ここは、Cランクだよ。だから、柊木さんの実力がなかったわけでもないから落ち込まなくていいと思うよ」
「やっぱりね。ごめんね佐木島」
どうしてか、柊木さんが謝ってきた。
「たぶん私のせいなの」
柊木さんはそう言って語り始めた。
柊木さんは前から、剣の実力がなくて周りの人からうざがられていたらしい。
何でこんな奴がカーストトップにいるんだ、的な。面倒くさいな。
そして、最近同じカーストトップの好きな男子に告白されたらしい。
告白は断ったんだがそれから悪態をつかれるようになったらしい。
「なるほどね」
「本当にごめんね」
落ち込んだ様子の柊木さん。
正直俺は戸惑っていた。
マジでこいつ誰?
いや、ふざけて言っているわけではない。
だって、最初の頃と性格が180度変わってて。
「別に。まだ柊木さんのせいだって確定したわけでもないし、俺は死ななければそれでいい」
「……っ!ありがとう」
柊木さんが少し涙ぐんで言った。
「よし。そろそろ行こうか」
俺と柊木さんは立ち上がり扉を開ける。
中に入ると、全体的に暗く若干肌寒い。
あれ?普通ならボスが……。
「……ッ!ははっ、嘘だろ」
クソッ、イレギュラーかよ。
扉がひとりでに閉じる。
たぶんそれはボスを倒すまではもう開かない。
〈イレギュラー〉
モンスターが変異したり、大量発生したりすること。
極稀にボス部屋で発生することがある。
効果は、ボスのランクが1〜2段階上昇。