隠れコミュ障
私たちの正体がネットにバラされていた。
私と陽菜乃ちゃん以外は気づいてなさそうだけど。
気にすることはあまりないと思う。
誰も信じていないから。
だって、修くんがジョブ無しだとコメントされているから。
Aランクがジョブ無しだなんて誰も信じないだろう。とても不愉快だけど。
不安なのは、このことが原因で修くんが傷つけられないか。修くんのいじめが更に悪化されないか。
修くんへのいじめは学校で噂になっている。
でも、誰も止めようとしない。ジョブ無しだから。
私たちからしたら、修くんには反撃してほしいと思っている。
でも修くんはそれをしない。どうしてかは、分からないけど。聞いたら面倒だからと返ってきそう。
「ねえ、河瀬さん」
「えっ、な、何?」
いつも通り机に座っていたら、隣の席の女子に話しかけられた。
……いつもなら話しかけられないのに。
勘違いしないでよ。
コミュ障じゃないんだからね。ただ、急に話しかけられてびっくりして、呂律が回らなかっただけ。
「この写真って実際どうなの?」
そう言って、私にスマホの画面を見せてくる。
そこには私たちがAランクダンジョンから出てくるところだった。
これは、言っていいのかな?
いや、ダメよ。『夜』のルール『正体がバレてはいけない』というのがあるから。
ざわざわ……。
え?
何か急に騒がしくなったから周囲を見渡すと、私を中心として人が集まっていた。
「そ、そそそそれは遠征帰りの時に撮られた写真よ!」
自分がパニックになっているのが分かる。
認めるわよ!
私はコミュ障よ!仕方ないじゃない!長年一人でひっそりと暮らしてきて、『夜』の皆以外とコミュニケーションをあまり取ったことがないのよ!
えぇーと、私今何て言った?
「っち、嘘を貫き通すってわけね……。
河瀬さんはどうやってマスターと出会ったの?」
「えっと、ず、ずっと監禁されていたところを助けてくれたのよ。そして誘われて『夜』に入ったの」
私は今何て言ってるの?
「へぇ、河瀬さんって監禁されてたんだー」
「え、ええ。小さい頃から」
頭がぐるぐる回る。
「で、本当はどうなの?」
「え……?」
優しかったはずの声音が冷たくなったことで、頭が冷静になった。
顔を上げるとその女の子の表情に少し怒りが出ていた。
「自分が『夜』だなんて嘘ついて恥ずかしくないの?大体、ジョブ無しがマスターとかあり得ないんだけど」
あれ?この子こんなに高圧的だったっけ?怖い。
「あんなのがマスター?ふざけないで。ジョブ無し如きがAランク冒険者になんてなれるわけないでしょ。
ジョブ無しは何の才能もないクズなの」
嫌な笑いが耳に入る。
「『陽炎』」
気づけば発動していた。
教室の中に熱が籠もり、サウナ状態へと。
「あ、あんたっ!何してんのっ!」
隣の席の女子が私に怒鳴る。
「『氷結』ッ!」
「『氷結』ッ!」
魔術士の人たちが必死に氷属性の魔法を発動する。
が、効果はないようで焼け石に水。
「……修くんは誰よりも優しいの」
私は知っている。
修くんは面倒くさがりだけど、私たち仲間が危機に陥ったときは必ず助け出してくれることを。
「『氷結』」
静かに発動する氷属性の魔法は地面から凍り、その上に立つ者の足を凍らせる。
悲鳴が上がる。
熱いのに寒い。そんな地獄みたいな場所で。
「……修くんは誰よりも強い。だけど、心は違う。
きっと傷ついている。
修くんはたぶんこんなこと望んでいない。だけどやるわ。私も修くんを守るから」
その後、先生が駆けつけ、私は校長先生に退学届を貰った。
◆◇◆◇◆◇
どうしよう。
私、ルール破ってしまったわ。
パーティーを追放されるかも。
そうなったら、私……。
「しゅ、修くん……あの」
声が若干震えている。
修くんの顔が見れない。
「……何かこれ、前と同じ展開じゃね?
お前、もしかして退学届貰っただろ?」
え……?どうして……?
「その顔はビンゴだな。そして、お前は俺の正体をクラスメートにバラしてしまった!」
もう、既にバレていただなんて。
「……そうよ。本当にごめんな――」
「おいおい、謝ろうとするなよ。大丈夫だ。俺も退学届を貰った。そして、その上お前たちの正体もバラした」
「……うそ」
「本当だ」
「じゃあ、パーティー抜けなくていいの?」
「ん?何言ってんだ?
『夜』は入ったら二度と抜けられねぇって言っただろ?逃さねえよ」
修くんが悪い顔で言う。
内容の顔が合ってないのよ。
「それとも何だ?俺と一緒に抜けるか?」
満更でもなさそうな表情の修くん。
それに対する私の答えは、もちろん。
「嫌よ」
「ちぇっ」
悔しそうにする修くん。
何て返ってくるか分かってたくせに。
「このパーティーの皆で叶えたいことがあるのよ」
「それって、俺必要?」
「修くんがいないと始まらないわ」
修くんを除く皆の目標。
『修くんをSランク冒険者にする』
その道のりはまだまだ長い。




