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遠征開始

「よし、じゃあ行くか」


 仮面をつけ武器を持ち、Aランクダンジョンへ足を踏み入れる。

 薄暗く、足音が奥まで反響する。


 入って数分後にすぐさまモンスターが襲いかかってくる。

 一体一体がCランクダンジョンのボス以上の実力を持っている。


「アイスは魔力温存で」


「ええ」


 黒い羊が角を突き出し走る。


「えいや!」


 細い腕から繰り出される剣撃は、羊には当たらず手前の地面に当たる。


 ドンッ


 たった一撃で地面は崩壊し、羊は足を止めざるを得なくなる。


 そして、羊の魔石に導かれるように飛んでくる矢によって10匹以上いた羊の群れは全滅した。


「シックス、イエーイ!」


「い、イエーイです!」


 乃々愛と千代がハイタッチする。


 千代が乃々愛から剣を教わっていたこともあり、2人の連携は完璧だった。

 少し美奈が複雑の表情をしている気がする。仮面ついてるから分からないけど。


武器召喚サモン『盾』。『挑発』『身体強化』『障壁』」


 また羊の群れが来た。

 今度は俺と美奈の番だ。


 俺が羊たちの注意を引き、背後から美奈が殺る。

 つまり、俺が囮ってわけだ。


 羊が俺の構える盾に次々と突進する。

 羊的にはそのままの勢いで俺を吹き飛ばすつもりだったんだろう。でも、全く動かない。

 少し羊が動揺しているように見えた。


 そんなところを背後から美奈が斬り殺している、はず。


 俺たちも時間をかけずに羊を全滅できた。


「マスター、イエーイ」


 平坦な声で両手の平を俺に向ける美奈。

 お前、本当に喜んでるの?


「はぁ、いえぇい」


 適当にハイタッチをした。


 お前らハイタッチしてるけどそこまでの強敵じゃないんだよな。どうでもいいけど。


 俺たちは休む間もなく歩き始めた。


 今日で半分くらい行っておきたい。


 だけど体力は温存しておく。ボスのために取っておくんだ。


「――『砲撃』」


 羊の群れのド真ん中にぶっ放す。

 直撃した羊は消滅。直撃を免れた羊も余波で吹き飛び壁に勢いよくぶつかり消滅する。


「マスター、魔力はあまり使わない方がいいのでは?」


 今の所全くと言っていいほど何もしていない陽菜乃。

 でも大丈夫。凪沙も何もしてねぇよ。クソ羨ましいな。


「いや、なんかさ面倒だったからついな」


「『ついな』じゃありませんよ。自分で言ってたではないてますか。『各自、体力と魔力は温存して行こう』と」


 いや、確かに言ったけどさ。


「そうだな。じゃあ今からは温存してい――」


「えいやー!」


「「は?」」


 俺と陽菜乃の声が重なる。


 乃々愛の声だな。俺たちは声のした方に顔を向ける。


 無数の羊に囲まれながら剣を振る乃々愛。


「お前、単騎で攻めてんじゃねぇよ!!」


「え!?マスターが魔法使っていたから、いいと思ったのに!」


 ジト目で俺を見る陽菜乃。


 うん。俺のせいだね。ごめんなさい。


「マスターの行動は他のメンバーに影響力があるってことを忘れないで下さい。特にノアはそれが目立つので」


「はい」


 どうして俺はダンジョンに来てまで怒られているのだろうか。

 そんな疑問を抱いた。



◇◆◇◆◇◆



「今日はここまでだ。今から休憩取って明日にボス部屋前まで行くぞ」


 ダンジョンの一角で立ち止まる。

 壁側に1つの簡易テントをたてる。


 ここが特別安全というわけではない。

 ダンジョン内において安全な場所などボス部屋の前の1つしかない。


 ここにしたのは、見通しが良くモンスターを早く発見できるからだ。

 今日は、この危険なところで休まないといけない。もちろん見張りはつけるが。


「まずは飯だが、見張りは俺がしておこう。お前らはここで食っとけ」


 『次元収納』からおにぎりなどの惣菜を取り出し渡す。


「……ん?おい、早く受け取れよ」


 しかし、誰も俺の持った惣菜を受け取ろうとしない。


「今日、マスターは見張りしなくていいわ」


「……は?」


 一瞬、凪沙が何て言ったか理解できなかった。


 どうしてそんなことを。

 面倒くさがりの俺でも流石にダンジョン内では、きちんとする。命がかかっているからだ。


 見張りを俺が抜けるということは、非戦闘系ジョブの陽菜乃は無理だから、乃々愛と凪沙と美奈と千代の4人で回すということ。


 いや、それよりも俺を抜かす意味が分からない。


「何で?」


「マスターがずば抜けて魔力消費が激しいからよ」


 ああね。

 俺を外す理由が大体分かった。 


 俺はジョブ無しだが、色々なジョブがBランク冒険者並みに使える。

 だけど、ここはAランクダンジョン。

 Bランク冒険者の実力では死ぬ。

 だから俺は毎回の戦闘で『身体強化』や『障壁』などの付与術士の魔法を自分にかけている。

 これが俺の魔力消費が激しい理由。


 つまり……


「俺に気をつかってんのか?俺はお前たちの足手まといなのか?」


 まあ、普通に考えてジョブ無しがAランクダンジョン(こんなところ)にいる方がおかしい。

 俺は大した戦力になっていなかったのかもしれない。


「そんなわけないじゃない」


 凪沙が何言ってんの?みたいな顔で言う。


「そうだよ!マスターいないとボス倒せないよ!」


「マスターは必要」


「ま、マスターがいると安心するかな」


 これは……同情?


「マスター、あまりふざけたことを言っていると監禁しますよ?忘れたんですか?皆が揃ってこその『夜』ですよ」


 同情なんかじゃない。

 こいつらは、本気で俺を必要としている。

 ジョブ無しなんかの俺を。


「それに、マスターが足手まとい?そんなわけないじゃないですか。マスターはいつかSランク冒険者になる人ですよ?」


 陽菜乃がニヤニヤとウザい表情をしながら俺を見てくる。


「あーもう!俺だって緊張してたんだよ!さっきの発言は忘れろ!」


「『俺はお前たちの足――」


「だああぁぁぁ!アイス、お前喧嘩売ってるだろ?!」


 無駄なところで記憶力を発揮する凪沙。


「ふふっ、ごめんなさい」


 お茶目に謝る凪沙。

 こいつ全然反省してねぇだろ。


「ま、とにかく俺はありがたく休ませてもらうわ。

 そして、ヒナ。俺はSランク冒険者にはならねぇよ!」


 陽菜乃に指をさしてそう告げる。


「分かってますよ。マスターはそういう人だってことは。でも安心して下さい。私たちがSランク冒険者にします」


 陽菜乃は自信ありげに胸を張る。

 乃々愛たちも自信に満ちた表情をしている。 

 ああ、私たちってそういうことね。


「勝手にしろ。俺は飯食って寝るからな。見張りよろしく」


 皆に背を向け簡易テントに入る。

 後ろから何か笑い声が聞こえたけど気の所為だろう。


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