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暴力は何も生まない

 高校生、いや全ての人間において最も憂鬱な日。

 すなわち月曜日。


 俺は、何故学校に行かなければならないのかという疑問を抱きながら登校していた。


 確かに高校に行くと決めたのは俺だ。


 だって、冒険者稼業が今以上に忙しくなったらって思うと。

 なら、もう高校に行くという選択肢しかないだろう。


 まあ、高校もちょっと……いや、かなり面倒だ。


 実は俺、いじめられているんです。


 校舎裏に呼び出されて殴られたりとかされて。


 何がきっかけだっけ。確か……。


 一ヶ月前くらいに家に帰ってたら前から人が来た。

 ソイツは、前をちゃんと見てなく、俺に気づかずにぶつかった。


 そしたら、ソイツ馬鹿なこと言い出したんだ。


『てめぇ、慰謝料払いあがれ!』


『ふざけんな』


 って言いたかったけど、面倒なことになりそうだったのでやめようと思ったときには既に言い終えていた。


『お前どこ高だ?』


 高校を聞かれた。


 これは、あれだ。聞いたあとに味方を多く連れてボコボコにするやつ。


『武田高校、一年だ』


 もちろん嘘だ。そこは、俺の通っている高校の近くの高校で、俺の通っている高校は前野高校だ。


 まあ、うちの高校は私服だからバレねぇだろ。


 俺はその時そう思っていた。


 その後、男に開放され家に帰った。


 そして、次の日登校したら靴箱でソイツとばったり鉢合わせてしまった。


『……』


『……』


 目が合った。


 お互いにほほえみ合う。


 あ、同じ高校だったのね。

 終わった。


 そして、現在にいたる。


 まさか、彼との出会いが俺の運命を変えることになろうとはな。


 本当にダルい。



◆◇◆◇◆◇



「おらぁっ!」


 腹に衝撃が来る。痛くはない。


「ごふっ」


 と、言っておく。


「おらぁっ!」


「うあぁ!」


 と、言っておく。


 まあ、一応冒険者だからそれなりに身体は鍛えてるんだよね。


 まあ、反撃してもいいんだがやらない。


 だって、ヤンキーはすぐに仕返ししようとするから、面倒だ。

 だったらこいつに殴られていたほうがマシだ。


 もちろん先生にも言わない。というか、言ったところでどうにもならないだろう。

 なんてったって俺は先生に嫌われているからな。


 理由は、俺がジョブ無しだからだろう。


 他の生徒とは避けられていて話せない。


 俺に味方はいなかった。


 まあ、仲間ならいるけどね。


 おい、調子乗ってると俺の仲間がてめぇをぶっ飛ばすからな。俺の仲間が。


「今日はここまでにしといてやる」


 お、脳内でイキってたらいつの間にか終わっていた。


 ソイツは、肩で息をしながら帰っていった。


 疲れるんだったら、やめればいいのに。



◆◇◆◇◆◇



「今から実技練習を行います」


 ダンジョンができてステータスも出てきた頃から学校では、実技の授業が義務となった。


 自分のジョブを活かす戦い方を学ぶのだ。


「今ここにいる皆は、剣士系統のジョブを持っていると思います」


 この授業の担当の教師がはきはきと言う。


「はい、先生〜。何かニートがいるんですけど〜」


 一人の生徒が俺を指さして言う。

 その言葉に周りの生徒は笑い出す。


「皆さん、笑ってはいけませんよ。心の中で笑いましょう」


 先生は笑いをこらえるように生徒を注意する。

 しかし、全然注意しているようには見えない。


 そんな彼らに俺は我慢ができなかった。


 お前らニートをバカにすんなよ。


「それでは、まず二人一組でペアを組んでもらい打ち合いして下さい」


 来たか。


 このペアを作れという陰キャの試練を。


 もしも、人数が奇数であれば先生と組むことになり、偶数であれば余った知らない人と組むことになる。


 最悪は避けられないか。


 だが、今日は生徒の人数は偶数だ。

 先生と組むという地獄にはならないだろう。


「ねぇ、ざこ島くん。よかったら僕と組まないかい?」


 クラスカーストトップに君臨する、イケメン君が誰かを誘っている。


 ったく、一人の俺に聞こえるように誘うなよ。


 てか、ざこ島って人いたんだ。


 はぁ、早く一人余らないかな。


「君に言ってるんだよね、ざこ島君」


 もう、返事してやれよざこ島。

 可哀想だろ。


「聞こえているんでしょ、ざこ島君」


 ぽん、と俺の肩に手がのる。

 思いっきり握られる。


 痛くないから無視するけど。


 てか、やっぱり俺のことだった。


「お願いします」


 断ったら後が面倒だしいっか。


「おいおい嘘だろ!ニートの奴、池田と組みやがった!」


「池田が冒険者ってこと知らねぇのか?」


 外野がうるさい。


 というか、イケメン君って池田って言うんだ。

 それに冒険者もしているだとか。


「池田君、ちなみにランクは?」


「僕の?まだまだだけど一応Eかな」


 イケメン君の言葉に一同がお〜となる。


 冒険者にはランクがあって、F〜A、そしてS、さらにSS。


 ランクを上げる為には一つ上のランクのダンジョンで試験を受けないといけない。


 高校生のうちでEはあまり珍しいって訳ではないが、この高校では、冒険者が少ないから凄く見えるのだろう。


 ちなみに冒険者の大半がCで止まるらしい。

 それ以上になれば、上位の実力者と呼ばれるようになる。

 Sランク冒険者は世界で三人存在するらしい。


 ん?俺のランク?


 俺は、Aランクだ。




  



 

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