表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/70

お願い

「きっついな」


 最下層までたどり着いた俺は乃々愛がいないことを確認して帰ることにした。


「……流石にボス部屋にはいないよな?」


 うん。

 駆け出しの冒険者でも知っている『ボスだけはソロで挑むな』。

 それを乃々愛が知らないはずがない。


「……ちょっとだけ覗いてみるか」


 乃々愛が入ったのなら既にボスと戦っているはず。

 開けてボスがいなかったら閉めよう。


「よし、行こう。いませんように、いませんように、いませんように」


 俺はそっと扉を開く。


「助けてぇっ、修!!」


 乃々愛!


「ッ?!『障壁』!!」


 あっぶねー。ぎりぎり間に合った。


 乃々愛の声がした方を見たら、乃々愛がとどめを刺されそうになってた。


 乃々愛は大丈夫なのか?


 ボスの背中に隠れて見えない乃々愛。俺は位置を変えて乃々愛の姿を見る。


「待たせたな、乃々愛」


 本当だよな。遅すぎた。


 乃々愛は壁に打ちつけられていて、両腕がへし折られていた。

 内出血もしているかも。


「ううん、ありがとう。後、ごめんね」


「『治癒』」


 『ごめんね』?俺の台詞だよ。こんなに仲間をボロボロにさせて。

 リーダー失格だな。


「はあ、お前オークキングか?まあ、どうでもいいか。俺たちの大事な騎士を傷つけた罪は重いぞ」


『ブフォ……ブフォおオオォォォ!』


 オークが俺めがけ駆けてくる。

 『障壁』が俺によるものだと気づいたのかも。そこそこ知能が高いらしいな。

 あと、地面に転がっている半ばで折れた剣は乃々愛のものか。

 ということは、皮膚が硬くなっているのかな。


「よっと」


 駆けたまま突進をくり出すオークを飛び越える。


 どうやって倒そうかな。

 魔法でやったら早いんだが……。


「『ノア』!見てろよ!」


 乃々愛の剣の技術はとうの昔に俺を超えている。

 本来なら乃々愛のレベルならこんなオークに負けるはずがない。

 乃々愛に足りないもの、それは……。


『ブフォオオオ――グッ』


「うるさい」


 性懲りも無く同じ手を使い駆けてくるオークの口に剣を突き刺す。

 外側は硬くても、内側は柔らかいだろう。

 だから口から突き刺して、突き破る。


「はっ」


『ガッ……』


 首を切断されたオークは力無く倒れ伏し、魔石を残して消え去る。


 剣士としては、汚いやり方なんだろう。

 剣士は常に相手と正々堂々と戦おうとする面倒な奴らだからな。乃々愛も含めて。

 でも、そんなやり方じゃいつか限界が来る。

 俺は乃々愛にそんなふうになってほしくない。

 どんな時でも負けない。そんな騎士になってほしい。


「修ー!!」


「うわっ?!」


 脱力してたところに乃々愛にタックルされた。

 乃々愛は俺と一緒に地面に倒れ込むが、俺を抱きしめたまま離さない。


「修、修、修ー!」


「おいバカ、名前を晒すな!」


 なんの為にコードネームなんて作ってると思ってんだよ。


 まあ、とにかく


「無事で良かったよ」



◇◆◇◆◇◆



「皆、本当に迷惑かけてごめんなさい!」


 乃々愛とホームに帰ったら、皆が既にいた。

 俺は目的は果たしたわけで眠たかったから寝ようかと思い部屋に行った。

 いや、今回のことが起こった原因は後々に聞くつもりだったんだ。本当に。

 そのつもりでベッドに入ろうとしたら、皆がぞろぞろと入ってきて、現在に至る。


 シュンッ

 ザクッ


「ひぃっ」


「は?」


 何か、ナイフが飛んで俺の部屋の壁に刺さったんだが。

 とりあえず美奈弁償な。


「ふざけないで」


 いつも、無表情のはずの美奈の顔が少し怒っている。


 いや、ふざているのはお前だからな?俺が怒りたいわ。

 あれ?乃々愛以外の皆も美奈と同じ顔してる。

 どういうこと?普通に謝っていたよね。ま、とりあえず俺も乗っておこう。


 眠い。


「ご、ごめんなさい。もう二度と迷惑かけないから!」


 ほら、乃々愛少し泣きそうだよ?可哀想じゃん。


 シュンッ

 ザクッ


 おい。


「違う。どうして、分からないの?仲間でしょ?迷惑かけたくない?ふざけんな、仲間なんだからもっと頼ってよ!勝手に死ぬなんてゆるさないから!」


 ……美奈が叫ぶところとか久しぶりに見たな。


「そうね。仲間なんだからもっと頼ってほしかったわ。それとも頼りなかった?」


「違う!そんなことない!」


「わ、私も頼って欲しかったです。何かできるってわけではないですけど」


「そんなことないよ、千代ちゃん!」


「私も皆さんに同意です」


「陽菜乃ちゃん……」


「乃々愛、仲間に迷惑をかけたくないって気持ちは分からなくはない。でもな、1人で抱えようとするな。喜びも苦しみも分け合ってこそのパーティーだろ?」


「……修」


 これは、心からの本心だ。

 決して流れで言ったわけではない。

 乃々愛は皆の言葉を聞き項垂れる。

 そして、決意したように顔を上げる。


「皆、助けて」


 か細い声が部屋で反響する。


「当然」


「そうね」


「初めからそうすれば良かったのです」


「が、頑張ります!」


 パーティーが一致団結した。


 俺は少し皆と温度の差を感じていた。


「任せろ」


 


 


 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ