だから働きすぎなんだって
「ふはぁあ〜」
美奈と登校中、間抜けなあくびが出る。
最近、ダンジョンの時間を増やしたせいで眠い。眠たい。
「最近、眠そう」
「うん、昨日本を読んでて寝不足なんだ!」
慣れなきゃ。まだ全然貯まってない。
私が、私がやるんだ。
「……」
美奈が疑わし気な視線を向けていたことに私は気づかなかった。
◆◇◆◇◆◇
眠すぎて全授業で全力睡眠をしてしまい、怒られてしまいました。
今は、千代ちゃんの育成中。
千代ちゃんはすっかりと実力を上げていき、今はBランクダンジョンのモンスターを相手している。
素人目から見ても分かる、洗練された動き。
今の千代ちゃんならBランクに確実になれる。
「――『ノア』ッ、危ない!!」
「え?きゃっ!」
ぼおっと立っていたら横からモンスターが爪を立ててきた。
剣をまともに構えてなかった私はモンスターの爪を右腕に喰らってしまう。
モンスターがそのまま覆いかぶさり――
「はっ」
モンスターが消滅する。
尻もちをつく私の隣にモンスターを葬ったと思われる一本の矢。
後ろを振り返れば悠然と弓を構えた千代ちゃんが。
「あ、ありがとう『シックス』」
「あ、いえ、でも腕を!」
千代ちゃんとは、上手く行っていないわけではないんだけど、まだ距離を埋めれないでいる。
原因は千代ちゃんが私たちのことを大きく見すぎているからなんだけど。気づいてないのかな、自分も私たち側に近づきつつあるなんて。
「大丈夫ですか!『回復』」
すぐに私の方へ駆け寄って、治してくれる陽菜乃ちゃん。
「ありがとう、ごめんね」
情けなかった。
「珍しいわね、『ノア』がミスするなんて」
「『ノア』大丈夫か?」
本当にダメだな。
パーティーの騎士?孤児園の皆を護る?修の夢を一緒に追う?
何一つできていない。
それどころか、皆に心配をかけてしまっている。
「……ごめんなさい、本当にごめんなさい」
情けない。
自分の無力さに腹が立つ。
「気にすんなよ、誰にだってミスの1つや2つはある。今はまだミスが許される状況だ。だから、気にするなよ」
修の言っていることは分かる。
ここはBランクダンジョン。1つのミスが死に直結するような脆いパーティーではない。
そういうことだろう。
でも、違う。今は違う。
今の私は戦力として数えれない。
「……ごめんなさい」
「……今日は帰ろう」
帰っている中、私は動けずに惨めさに震えていた。
◇◆◇◆◇◆
深夜にて。
ホームについても私の気分が回復することはなかった。
今日はダンジョンに行くべきだろうか。
ダンジョンに潜る時間を増やしてから、身体が悲鳴を上げている。身体だけじゃない。心も。
行くべきではないのだろう。
そんなことは分かってる。今日も疲労が溜まっていたせいでミスをした。
もしかしたら、自分だけじゃなくて仲間の命も危なかったかもしれない。
「……でもしょうがないじゃん」
私には家族がいる。
中学生や小学生、中には3歳の子もいるのだ。
10人以上いる子どもたちの面倒を見るだけでも大変なのに、これ以上お母さんに大変な思いをさせたくない。
だから、私がしなきゃいけないの。
止まっている暇なんてないんだ。
――ピシ
なんの音だろう?
まあ、いいか。
――ピシピシ
早くダンジョンに潜らなきゃ。
――パキ
私が皆を救うんだ。