働いたら負けだと思ってる
およそ百年前。突如世界に現れた無数のダンジョン。
人間は、力を手に入れた。ジョブだ。
産まれた瞬間に決まるジョブを生かしてダンジョンに潜る。そして、モンスターを倒す。
倒したモンスターから出る魔石などを拾い、後に金にする。
そんな人たちを皆、冒険者と呼ぶ。
冒険者は、子供から大人までに夢を与える、職業である。
◆◇◆◇◆◇
ここは、ある一室。
そこには、青年が一人と、女性が四人いた。
五人は、冒険者でパーティーを組んでいる。
「リーダー!ダンジョン行こ!」
小さな少女が元気よく誘う。
身長は140センチあるかないかだが、こう見えても高校生である。
少女が誘う相手は、目が腐っている青年。
「ヤダよ、面倒」
速攻で断る青年。
彼は、目だけでなく根性も腐っているようだ。
「リーダー、私とデー……食事でも行かない?」
今度は、クールな少女が青年を誘う。
「あ〜、お腹空いたな。じゃあ、ハンバーガー買ってきてくれない?」
性格も腐っている。
「リーダー、遊ぼ?」
青年の後ろからボソボソと呟く少女。
「っ!おい、気配を消して後ろに立つなよ!」
青年は驚き、立ち上がる。
「大丈夫ですか、兄さん?ほら、こちらへ。誰もいないところへ行きましょう」
青年の妹らしき少女が青年の手を引く。
「待て。お前、前も同じこと言って一週間くらい俺を監禁したよな?今回もか?」
青年の問いに妹は、
「そうです。養ってあげます。兄さんは働かなくていいのです」
妹は、素直に認める。
「よし、分かった。いいだろう」
青年は妹と共に歩き出す。
もう、本当に救えない。
「「「り、リーダー!!」」」
結局三人が必死に止めて、監禁はなかったことになった。
青年一人に少女が四人。
全員がふざけた性格の持ち主ではあるが、実は世界的にトップクラスの実力を誇るパーティーだったりする。
「あ、お前ら、ギルドから依頼受けてなかったか?」
青年が思い出したように言う。
「あ!そういえばダンジョン攻略の依頼受けてたんだった!行かなきゃ!」
身長より少し小さいくらいの剣を腰に持ち、立ち上がる少女。
岡本乃々愛。ジョブ、剣士。
コードネーム、ノア。
「はぁ、騒がしいわね」
ため息混じりに、杖を取る少女。
河瀬凪沙。ジョブ、魔術士。
コードネーム、アイス。
「早く」
足音を立てずに歩き出す少女。
東雲美奈。ジョブ、暗殺者。
コードネーム、シロ。
「兄さんも、行きますか?」
兄に問いかける少女。
佐木島陽菜乃。ジョブ、回復術士。
コードネーム、ヒナ。
「俺か〜」
妹に問われゆっくりと椅子から立ちたがる。
佐木島修。ジョブ、不明。
コードネーム、マスター。
全員が高校生で謎の仮面をかぶった男女五人で構成されたパーティー。
世界的に有名で、本名、顔ともに明らかとなっていない実力派パーティー。
パーティー名は『夜』。
そんな、パーティーのリーダーを務める修は、
「俺は寝るわ。皆頑張ってね〜」
最低なクズ野郎であり、面倒をとことん嫌う男だった。