蟻の魔物か蟻風の魔物か
あらすじ・題名を変更しました。
旧題「数こそ力なり!! おかしくなった世界の魔物使い」
季節的に初夏の涼しい季節だったのが幸いして生ものは火を入れる必要はあるが、概ね問題は無かった。
俺は部隊に呼ばれてはスキルで移動し、アイテムボックスに放り込んだ。
コンビニや食料倉庫などにお邪魔したが、一番実りがあったのは大型販売店だった。
食料以外にも衣類や薬、化粧品、アウトドア一式などなど幅広く置いてあった。
大型デパートも数店舗お邪魔した。
駅周辺だったのでかなりの食料や雑貨をゲットできた。
集めるのが楽しくなってしまい時間を使い過ぎたのは内緒だ。
さて、そろそろ行動を開始しよう。
作戦はすでに決まっている。
「セバス、そっちはどうだ?」
『おおよその行動範囲の確認は終了いたしました。やはり捕縛された場所は厳重に監視されています』
「分かった」
蟻の強さはゾンビ以上、ハイゾンビ以下であるとの予想をセバスはしている。
ゴブリンが武器を持てば戦いになり、素手だと負ける感じだ。
一般男性一人ならバットを持てば戦えるし、二人なら勝てるだろう。
素手では勝てないだろうな。
俺たちが突っ込めば蹂躙するのは訳ないのだが、そうなると捕まってる人がどうなるか分からない。
放置して巣に帰るなら嬉しいのだが、戦闘の合間に巣に持って行かれたり殺されたりする可能性はゼロとは言えない。
「魔物がいない場所に移動してくれ。捕縛された人たちが見える範囲が望ましいな」
『かしこまりました』
数分後セバスから連絡があり、アンデット隊はアイテムボックスにしまい、ゴブリンとデュラハンは出したままスキルで移動した。
移動してすぐにセバスを確認し、話を聞く。
「あの建物に居ます」
「野球スタジアムか。面倒な場所を選んだな」
行ったこともなければ建物の図面など知りもしない。
周りからじゃ中は見えないな。
それからセバスに蟻の分布や行動の範囲、習性など気が付いたことを話してもらった。
蟻は5~8匹で行動し、全方位を補うように行動しているようだ。
行動範囲は蟻塚と野球場を覆うように行動し、それぞれの場所には40~60の部隊が周囲を監視している。
その他にも50~80の部隊が外周を動き周っている。
敵と遭遇した場合の行動を知りたかったので、ゾンビを3体ほど蟻の部隊に突撃させた。
上空でセバスがその一部始終を見ていた。
その結果、蟻は部隊内では連携するが部隊同士での連携はしない。
ゾンビには使役者スキルで一時的にステータスを上げた状態で突撃させたのだ。
部隊の半分を倒した彼らだったが、やはり全滅さえるのは難しかった。
その際に他の蟻の部隊が姿を見せたが戦闘に加わることはせずに一定の距離を保ち、静観していた。
戦闘後は傷を確認したりと仲間を気遣う仕草を見せていた。
「何とも冷静な魔物でしょう」
セバスが彼らの行動を見た際の言葉だ。
セバスが言うには半壊した蟻の部隊は全滅しようが構わないのだそうだ。
少しでもダメージ与えるのが役割で後続の部隊が手負いの敵を倒せばいい。
静観し戦闘を見ることでどういう攻撃をするのか分析もしている。
仲間の命も自分の命もあまり重く見ていない。
あくまで敵を倒す為の合理的な行動をする魔物、それが彼らだ。
やはり彼らは蟻に似た魔物ではなく蟻が魔物になったと考えるべきだと俺は考えた。
「一部隊を仲間にする。これはスピード勝負だ」
「はっ!」
ゴブリンとデュラハン、セバスチャンで行動範囲ギリギリの蟻を仲間にする。
「主様。お伝えしたいことがあります」
「何だ?」
「戦闘に関してですが、日中では普通の人並みの力しか出せません」
「弱点か」
「はい」
バンパイヤなのに日中に動けているから問題ないと思っていたが、とんだデメリットだ。
だが、問題は無く蟻の部隊を捕縛できた。
今回はゴブリンメイジの土の魔法が役にたった。
地面をぬかるみにして動きを止め、万が一仲間を呼ばれないように口を塞いだ。
早業だった。
仲間にするのはスムーズだった。
急いで留守番のセバスの元に戻り、少しだけ蟻と話をしてから再び元の場所に戻して何事もなかったように仲間のフリをするよう命令をした。
それを日が暮れるまで続けた。
そして夜になり、朝日が顔を出す。
セバスに異常はないか確かめてもらったが異常はない。
同化しているようだ。
やはりそうか。
蟻という生き物の特性は変わっていないんだ。
蟻は目が見えない。
正確には明るいか暗いを認識する程度だったはず。
蟻がコミュニケーションを取るのは唾液や匂いだったはず。
うろ覚えだったが上手くいって良かった。
上手くいかなかったらセバスを野球場の中に忍び込ませて転移し、蟻を駆逐する作戦もあったが乱戦になりそうだし、人々に恐怖を植え付けてしまう。
そうなるのはダメだ。
優しさではなく、恐怖で使えなくなってしまう可能性があるからだ。
これで作戦は決まった。
奪還作戦は明日の朝だ!
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